結論として、この実験は「生命の誕生」を再現したわけではありません。 高温環境下で、生命の「材料」となりうる単純な分子が自然にできることを示した、というのが正確な評価です。
熱水噴出孔仮説を支持する研究は、日本国内だけに留まりません。NASAのジェット推進研究所(JPL)をはじめ、世界中の研究チームが異なる角度から検証を進めています。
これらの成果は、熱水噴出孔が初期の化学進化の舞台として有力であることを示しています。しかし、「材料ができる」ことと「生命が誕生する」ことの間には、埋めがたい大きなギャップが存在します。現代科学がまだ解決できていないのは、以下のようなプロセスです。
言い換えれば、レンガが自然にできることを示しても、複雑な設計図を持ち、自己修復し、増殖する「家」が自然に建つことを証明したことにはならないのです。ヘキサグリシンの生成は、生命の起源という巨大なジグソーパズルにおける、始まりの一片に過ぎません 。
熱水噴出孔での生命誕生は、依然として最も有力な仮説の一つですが、その全貌を解き明かす研究はまだ道半ばです。