これは、教育者が最も注意すべき点です。ゲームをただ導入すれば、子どもの深い感情的な悩みが自動的に解決されるわけではない、ということを示しています。また、先のマカオでの研究でも、社会的コミュニケーションは増えたものの、「大人に促されずに自発的にゲームに参加する行動」自体は、介入の前後でほとんど変化しなかったという結果が出ています 。
この知見は、ボードゲームが「環境」として有効である一方で、「魔法の杖」ではないことを示しています。ゲームという場を真に効果的な学びに変えるためには、大人による明確な意図と継続的な支援が不可欠なのです。例えば、順番を示す視覚カード、負けた時の代替となる言葉かけ、そして適切な行動ができた時の称賛といった、構造化されたサポートとセットで設計することが求められます。
近年、子どもや青少年の感情調節を支援するツールとして、デジタルゲームに関する研究も進んでいます。これらの研究の系統的レビューでは、デジタルゲームが子どものネガティブな感情体験を軽減するのに役立つという、一貫性のあるエビデンスが確認されています 。また、教育目的で設計された「シリアスゲーム」を使い、感情調節の方略を訓練しようとする試みの効果検証も進んでいます
。
これらの研究は、アナログのボードゲームとは媒体が異なりますが、その設計思想から学べる点は多くあります。デジタルゲームが持つ「即時フィードバック」「段階的な課題」「明確な達成感」といった要素は、ボードゲームに応用することで、より効果的な感情調節の練習ツールとなり得るのです。
これらの研究知見を踏まえると、ボードゲーム介入を成功させるための重要なポイントが見えてきます。
以下は、本記事で引用し、DOI が確認できている主要な実証研究です。
Lok, K. I., Chiang, H.-M., Lin, Y.-H., & Jiang, C. (2022). Trying a board game intervention on children with autism spectrum disorder in Macau: How do they react? International Journal of Developmental Disabilities, 70(3), 416–424. https://doi.org/10.1080/20473869.2022.2095861
Serious games to support emotional regulation strategies in educational intervention programs with children and adolescents: Systematic review and meta-analysis. (2025). Heliyon, 11(4), e42712. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2025.e42712
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