Hy‑MT2は、用途や計算資源に応じて使い分けられるよう、3つのサイズで構成されています。
最大モデルである 30B‑A3B は、Mixture‑of‑Experts(MoE)アーキテクチャを採用しています。これは推論時に複数の「専門ネットワーク」の一部だけを有効化する仕組みで、巨大モデルに近い性能を保ちながら計算コストを抑える設計です。
また、3つのモデルすべてが 多言語の翻訳指示(instructions)を理解できるよう最適化されています。たとえば、翻訳スタイル指定、用語指定、フォーマット指定などを指示として与えることが可能です。
Hy‑MT2は 33言語の双方向翻訳をサポートしています。
さらに、中国国内で使用される 5つの少数民族言語や方言との翻訳も可能で、中国語を中心とした多言語環境での利用を強く意識した設計になっています。
公開情報では33言語すべての詳細リストはまとめて掲載されていないケースもありますが、中国語と主要な世界言語を中心にした多言語翻訳が主な対象です。
Hy‑MT2の大きな特徴の一つが、モバイル端末で動く翻訳モデルです。
最小モデル Hy‑MT2‑1.8B は、Tencent独自の AngelSlim 1.25ビット量子化によって極端に圧縮され、ストレージ容量は 約440MB にまで縮小されています。
これにより、次のような利用が可能になります。
Tencentによると、この量子化モデルは前世代の Hy‑MT1.5 と比べて 約1.5倍の推論速度を実現しています。
Tencentが公開した技術レポートでは、Hy‑MT2は複数の翻訳ベンチマークで高い性能を示しています。
主な評価結果として報告されているのは次の通りです。
ただし、これらの多くはTencentのレポートや発表資料に基づくものであり、独立した第三者による評価はまだ限定的とされています。
Hy‑MT2はTencentの既存翻訳モデル Hy‑MT1.5 をベースに、大きく改良されています。
主な改善点は以下の通りです。
翻訳指示の理解能力の向上
翻訳スタイル変更、用語指定、構造化翻訳などの指示をより正確に解釈できます。
専門分野翻訳の改善
金融、教育などの専門分野での翻訳品質が強化されています。
実運用データによる学習強化
大規模な多言語データと蒸留・強化学習などの手法を組み合わせ、実際の翻訳シナリオでの品質を改善しています。
デプロイの柔軟性
クラウド用の大規模MoEモデルからモバイル向け軽量モデルまで、幅広い環境に対応しています。
Hy‑MT2は完全にオープンソースとして公開されており、開発者は以下のプラットフォームから利用できます。
これらのモデルは ARMや一般的なサーバーCPU/GPU環境など、さまざまなハードウェアで動作するよう設計されています。
特に 1.8Bモデルは、エッジデバイスやスマートフォンでのローカル推論を主な用途として想定されています。
Tencentは一般ユーザー向けにも、Hy‑MT2を利用したサービスを公開しています。
最初に登場したのは、WeChatのミニプログラム 「腾讯Hy翻译(Tencent Hy Translation)」 です。
主な機能は次の通りです。
さらに iOSおよびAndroidの専用アプリも開発中で、端末上でのローカル推論が可能になる予定です。
Hy‑MT2は、最近のAI翻訳のトレンドを象徴するモデルです。
巨大な汎用AIではなく、次の特徴を持つ 翻訳特化AIとして設計されています。
もし今後、第三者による評価でも同様の結果が確認されれば、Hy‑MT2は モバイル翻訳やオープン翻訳モデル分野で有力な選択肢になる可能性があります。