一方で、分かっていることには限界があります。国際性医学会(ISSM)は、女性の睡眠中のオーガズムは十分に広く研究されていないと説明しています。 2018年にNIHのPMCに掲載された症例報告も、57歳女性の「困るほどの睡眠関連オーガズム」を扱った個別例であり、頻度や一般的な仕組みを決めるものではありません。
つまり、文献は「起こり得る」ことを支持しますが、どのくらいの人に、どのような仕組みで起こるのかは、まだ慎重に見る必要があります。
睡眠中のオーガズムを、1つの原因だけで説明することはできません。考えられる要素としては、性的な夢、睡眠中の脳の性的興奮、体がリラックスしている状態、骨盤周辺の血流増加、膣潤滑、姿勢や衣類・寝具による刺激などが挙げられます。
ISSMは、女性でも性的な夢によって膣潤滑や夜間オーガズムが起こることがあり、それは思春期にも成人期にも起こり得ると説明しています。 Flo Healthも、睡眠中のオーガズムを骨盤周辺の血流増加、リラックス、心理的な性的興奮と結びつけ、性別にかかわらず起こり得る現象として紹介しています。
睡眠実験室での観察を紹介した医療系記事では、睡眠中にオーガズムに達した女性で、膣血流、心拍数、呼吸数が上昇した例が取り上げられています。また、レム睡眠期には性器の充血反応が起こり得るとも説明されています。 ただし、こうした観察は「すべての睡眠中オーガズムが同じ原因で起きる」と証明するものではありません。衣類や寝具、体勢による刺激が関わる可能性も、完全には除外できません。
性的な夢がきっかけになることはありますが、「必ず性的な夢を覚えているはず」とは言えません。夢の記憶は目覚めた時点であいまいになりやすく、性的な夢が膣潤滑やオーガズムにつながる可能性があるとしても、毎回はっきりした夢の記憶が残るとは限りません。
また、女性は男性に比べて、睡眠中の性的反応があったかどうかを確認しにくい場合があります。いわゆる wet dream は男性の射精と結びつけて語られがちですが、女性では外から見える痕跡が残りにくいことがあるためです。 そのため、性的な夢を覚えていないからといって睡眠中の性的興奮がなかったとは限らず、逆に性的な夢を見たからといって必ずオーガズムに達したとも限りません。
女性の睡眠中のオーガズムについては、「37%」「約4割」といった数字を見かけることがあります。ただし、これらは現代のすべての女性にそのまま当てはめられる精密な割合とは考えない方がよいでしょう。
よく引用される初期データでは、1953年にキンゼイが、調査した女性の約4割に1回以上の夜間オーガズムまたは夜間の性的放出の経験があるとした、と紹介されています。 また、メディア記事では「45歳までに約37%の女性が睡眠中のオーガズムを経験する」といった形で取り上げられています。
これらの数字は、女性の睡眠中のオーガズムが「あり得ない話」ではないことを示す材料にはなります。しかし、データが古いこと、二次的な紹介を含むこと、そもそも女性の睡眠中のオーガズムが十分に研究されていないことを考えると、現在の正確な頻度として扱うのは慎重であるべきです。
睡眠中のオーガズムがたまに起きるだけで、眠りを大きく妨げず、強い不安や生活上の困りごとにつながっていないなら、ただちに病気と考える必要はありません。性医学系の情報では、女性の wet dream や睡眠中のオーガズムは起こり得る現象であり、通常の範囲として説明されています。
2018年の症例報告で重要なのは、「睡眠中にオーガズムが起きたこと」自体が異常だったという点ではありません。その女性の場合、睡眠関連オーガズムが困るほどになっており、さらに入眠時のピクつきや、頭内爆発音症候群に似た症状も伴っていたため、睡眠の問題として評価されました。
次のような場合は、かかりつけ医、睡眠医療、性医学の専門家に相談する目安になります。
NIHに収載された症例報告では、困りごとになった睡眠関連オーガズムが、入眠時のピクつきや頭内爆発音症候群に似た症状と一緒にみられました。 こうした場合は、性の問題だけでなく、睡眠全体の問題として相談すると整理しやすくなります。
受診前には、発生頻度、目が覚めるかどうか、起きた後の気分、夢の記憶の有無、ほかの睡眠症状、最近の睡眠リズムの変化をメモしておくと役立ちます。専門家が、それが一時的な睡眠中の性的反応なのか、治療や対応が必要な睡眠の困りごとなのかを考える手がかりになります。
女性も寝ている間にオーガズムを経験することがあります。この現象は研究、性医学情報、症例報告で確認されています。 ただし、研究はまだ限られており、37%や約4割といった数字は慎重に読む必要があります。
大切なのは、それが「起きたかどうか」だけではなく、頻繁でつらいか、睡眠を壊しているか、ほかの睡眠症状を伴うかです。
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