カジミール理事が9月利上げを主張する最大の根拠は、エネルギー価格上昇に伴う第2ラウンド効果の脅威です。同氏は、この効果が既に顕在化しつつあり、ECBが行動を起こさなければ持続すると警告しています。具体的には、エネルギーコストの上昇が賃金や幅広い物価に波及しており、仮に米国とイランの和平合意が成立しても、追加利上げなしにインフレ率を2%に戻すことはできないと主張しています。また、ECBは「インフレが目標を長期にわたって上回るリスクがある場合、躊躇なく行動する」と述べています。
この姿勢は、同僚であるコッハー理事会メンバー(2026年7月24日発言)の「第2ラウンド効果の確固たる証拠はまだ見ていない」が、「見通しが悪化すれば行動する」とする、よりハト派的なスタンスと明確に一線を画すものです。この見解の相違は、9月9-10日の理事会を前に、ECB理事会内の分裂が深まっていることを示しています。
ECBは2026年7月22-23日の会合で、預金ファシリティ金利を2.25%で据え置くことを全会一致で決定しましたが、その背景には内部で活発な議論があったとされています。ラガルドECB総裁は会見で、一部の総裁がさらなる利上げの是非を「自問した」と述べ、声明文では ECBが「エネルギー価格上昇の影響を注視している」と明記し、今後数ヶ月の追加引き締めの余地を残しました。カジミール理事のタカ派的な月曜日の発言は、この姿勢と完全に合致します。つまり、ドアは開かれたままであり、同氏は今、9月利上げに向けて公に働きかけているのです。
ECBの2026年の金利経路は、2025年の緩和サイクルからの明確な逆転を示しています。2025年に断続的な利下げを行った後、ECBは2026年6月に利上げを実施し、7月に据え置きました。市場はこの7月の据え置きを「ピークではなく一時停止」と広く解釈し、年末までに9月会合を皮切りに約2回の追加利上げを織り込んでいます。
カジミール理事の主張は、ECBスタッフによる最新の公式見通し(2026年6月ベースライン)によって明確に裏付けられています。
ECBのマクロ予測ページは、原油価格が先物市場に沿って下落すれば、インフレ率は2028年までに2%目標に戻るものの、中東戦争の影響で「見通しは極めて不確実」と指摘しています。
この見方を支持するものとして、ECBの専門予測調査(SPF:2026年第2四半期)では、2026年の総合HICPインフレ予想が2.7%へと大幅に上方修正され、長期予想は2.0%で据え置かれました。この結果は、市場が織り込む追加利上げを補強するものです。
その修正規模は顕著です。わずか6ヶ月前の2025年12月のユーロシステムスタッフ予測では、総合インフレ率は2026年と2027年の平均でわずか1.9%と予想されていたのです。中東戦争によるエネルギー価格ショックが、その見通しを完全に覆しました。
カジミール理事は現在、9月利上げを主張する主導的なタカ派の論者ですが、理事会内には対抗する圧力も存在します。
2026年7月会合の時点で、市場はすでに追加引き締めを織り込んでいました。ロイター通信は7月の決定について、「中東紛争の拡大が再びエネルギー価格を押し上げているため、ECBは今後数ヶ月の追加引き締めの余地を残した」と報じています。金融市場は、年末までに9月9-10日の次回ECB理事会を皮切りに、約2回の追加利上げを織り込んでいました。
結論: カジミール理事はタカ派を主導し、エネルギー価格の第2ラウンド効果を未然に防ぐために9月の利上げが必要だと主張しています。7月の据え置きは「ピークではなく一時停止」と広く解釈されており、2026年6月の予測でインフレ率が2026年後半に3%超でピークを迎えることが示されているなど、ECBの公式データはさらなる引き締めを支持しています。9月の理事会は、ECB理事会内でハト派とタカ派のどちらが優勢かが試される重要な場となるでしょう。
ただし、中東紛争とそのエネルギー価格への影響をめぐる不確実性が極めて高いことから、9月のECBの実際の決定は、8月のインフレ統計や9月に発表予定のユーロシステムスタッフ予測など、今後6週間の入手データに大きく依存することになります。