この休止は、制裁や軍事行動をめぐる激しい応酬の末に実現した。米軍は7月中旬以降、イランの沿岸部やインフラを集中的に攻撃。フーシ派が紅海でサウジタンカーを攻撃しブレント原油が100ドルを突破した直後の出来事だった。ホワイトハウスは「外交的解決を望む」と表明する一方、米国の弾薬在庫懸念や全面戦争回避の思惑も背景にあったとされる。
下落は原油・天然ガスとも広範かつ急激だった。
ブレント原油は7月27日(月)の早朝取引で7%超下落。一時90ドルを割り込んだものの、その後やや戻して91.44ドル(前週末比5.5%安)で取引された。 直近のピークはフーシ派攻撃直後の101.06ドル(7月24日)。戦争開始以来の最高値である126.41ドル(4月30日)からはなお大きく下回る。
WTIも急落。5%超下げて89.31ドル(同3.1%安)となった。 フーシ派攻撃前の高値91.08ドルからは明確な下落だ。
欧州天然ガス(TTF先物) は7.7%下落して取引を開始。ホルムズ海峡を通るサプライチェーンへの懸念がひとまず和らいだことで、売りが優勢となった。
この規模の下落は過去の停戦合意時にも見られた。2026年4月の2週間停戦ではブレントが15.5%、WTIが16.5%急落している。 5月にも取引合意観測でブレントが9.4%安となる場面があった。
今回の売りに先立つ価格上昇は、紅海での武力衝突激化によるものだ。7月22~23日、イランが支援するフーシ派勢力がサウジアラビア船籍の原油タンカー2隻(Encelia号とLayla号)を紅海で攻撃した。 フーシ派は、サウジ港湾封鎖を宣言した上での攻撃と主張。これにより中東戦争に「第二戦線」が開かれ、すでに閉鎖状態にあったホルムズ海峡に加え、バブ・エル・マンデブ海峡も危険にさらされることとなった。
ブレント原油はこの攻撃を受け、7月23日に7%急騰して100.69ドルで引け。5月以来の100ドル超えとなった。 WTIも5%超上昇し91.08ドル。 7月24日にはブレントが101.06ドルまで上昇した。
ホワイトハウス広報部長のスティーブン・チョン氏はフォックスニュースに対し「イランに関してはあらゆる選択肢がテーブルにある」と発言。トランプ大統領が引き続き外交的解決を優先する一方、ホルムズ海峡での敵対行為や同盟国への攻撃が継続した場合には「あらゆる選択肢を検討する用意がある」と警告した。
仲介役のカタールは、米イラン間の協議が前進したと発表。非公表の米政府関係者はAFPに対し「両者は今は攻撃を停止し、船舶は自由に航行できる」と述べた。
今回の相互攻撃停止は「脆弱」との見方が強い。核開発問題、ホルムズ海峡の実質的閉鎖、そしてイランの地域支配戦略といった根本的な構造問題は解決していない。
戦争研究所(ISW)の報告書は「現在の米軍の空爆強度と性質は、イラン政権の戦略目標——とりわけホルムズ海峡における長期的支配維持——を大きく変えるには不十分」と指摘。休戦中も米軍はイラン港湾・船舶への海上封鎖を継続している。
また、トランプ大統領は2026年4月に2週間停戦に合意したものの後に撤回、7月8日には停戦は「終わった」と宣言した経緯がある。 この経緯は、今回の休止の持続可能性に疑問を投げかけている。
| 指標 | 直近ピーク | 休止後 | 下落率 |
|---|---|---|---|
| ブレント原油 | 101.06ドル(7月24日) | 約91.44ドル | 約5.5~7%+ |
| WTI | 91.08ドル(フーシ派攻撃時) | 約89.31ドル | 約3.1~5%+ |
| 欧州TTF天然ガス | 休止前水準 | 7.7%下落(寄り付き) | 約7.7% |
| ブレント戦時最高値 | 126.41ドル(4月30日) | — | — |
注記:4月30日の戦時最高値126.41ドルは依然として紛争中の最高値。 7月の売りで心理的節目100ドルを下回ったが、紛争前の70ドル台(2026年初頭)と比較すればなお高水準にある。
当面の焦点は、この相互攻撃停止が本格的な停戦合意につながるかどうかだ。ホワイトハウスは外交的解決を優先する姿勢を示す一方、「あらゆる選択肢」に含まれる大規模攻撃の可能性も排除していない。
欧州天然ガスも予断を許さない。ホルムズ海峡封鎖リスクは和らいだが、欧州のガス貯蔵率は前年比で低い54.2%にとどまり、供給途絶への脆弱性が続いている。
市場は今、カタールでの技術協議の行方、フーシ派による新たな紅海攻撃の有無、そして休止が本当に持続するのかを注視している。あるアナリストが表現したように、局面は「明確な二者択一。合意が成立すれば価格は下落するが、合意がなければまだピークは訪れていないかもしれない」という状況だ。