ECBの「タカ派的据え置き」は既に織り込み済みだった
7月23日のECB理事会は、市場の大方の予想通り、預金ファシリティ金利を2.25% 、主要リファイナンス金利を2.40% 、限界貸出金利を2.65% に据え置きました 。ラガルド総裁は理事会メンバーの一部が利上げを主張したことを認めましたが、市場は総じて「サプライズ不足」と受け止め、ユーロを押し上げる持続的な材料にはなりませんでした 。「材料出尽くし」の様相が強かったのです 。
ユーロ圏PMIの急伸——効果はわずか30分
S&P Globalが発表した7月のフラッシュユーロ圏総合PMIは51.9と、4カ月ぶりに景気拡大圏に復帰しました 。発表直後、ユーロは約0.12%上昇し1.1386近辺まで買われました が、その上昇はすぐに相殺されました。というのも、同じPMI報告書が「高インフレと中東紛争の再燃が先行きに影を落とす」と警告しており、楽観ムードを抑制したためです 。
ドルの安全資産としての求心力が全てを圧倒
週末にかけてEUR/USDは1.1380の節目を割り込み、INGが数日前に短期ターゲットとして示していた水準に到達しました 。週末の終値は1.1377近辺でした 。
1. 中東紛争激化 → ドル買いの安全逃避
米国はイランおよびイエメンのフーシ派に対して新たな空爆を実施。フーシ派は紅海で石油タンカーを標的に攻撃しました 。投資家は流動性と安全資産を求めてドルを買い、ドルは月間で最高の週間パフォーマンスを記録しました 。アナリストからは「ECBのタカ派的据え置きでさえ、こうした地政学的リスクの前では持続的なユーロ高を生み出すのは難しい」との指摘が出ました 。
2. 原油価格が100ドルを突破
ブレント原油は5月以来となる100ドルの大台を突破し、一時100.14ドルまで上昇しました 。ゴールドマン・サックスは、ホルムズ海峡の混乱が続けば第4四半期にブレントが120ドルを超えるリスクを警告しました 。原油高はインフレ懸念をあおり、米国債利回りを押し上げ、FRBの利上げ観測を強めます。これらは全てドル買い材料です 。
3. 米国サービス業PMIが53.6に急伸
一方、米国のサービス業PMIは53.6と明確な拡大圏に留まり、ユーロ圏に対する米国経済の成長優位を一段と明確にしました 。米国製造業PMIはやや鈍化したものの総合指数は堅調で、ドルの地盤を支えました 。
短期:INGは1.1380をターゲット——そして的中
INGのクリス・ターナー氏は7月20日、ブレントが90ドル超ならEUR/USDは通常1.14を下回る水準だが、エネルギー価格と短期ユーロスワップレートの相関性が通常より強まっているため一定のサポートがあると指摘。それでも同氏は1.14を下回り1.1380を試すと予想していました 。その通りの展開となり、1.1380ブレイクはダブルトップパターンのネックラインを突破したことを確認。測定ターゲットとして1.1210が次の焦点です 。
年末:INGは依然として1.17〜1.18を見込む
フランチェスコ・ペソーレ氏率いるINGのFXチームは、FRBの利下げと下半期のドル安進行を前提に、EUR/USDが年末に1.18近辺まで回復するとの予想を維持しています 。29の機関投資家の年末レート中央値は1.17です 。ただしINGも、このシナリオは中東の軍事衝突の沈静化、原油価格の下落、そしてハト派的なFRBへの政策転換の3条件に依存すると認めており、これらはいずれも確実視できません 。
次なる最大のイベントは連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC、7月28-29日)です。市場は金利据え置きを想定していますが、注目はドット・チャートとフォワードガイダンスです 。急騰する原油価格はFRBに対してタカ派的なメッセージを強要するリスクを高めており、利上げの可能性を否定しない姿勢はさらなるドル買いを招くでしょう 。FOMCを前に不透明感が強く、EUR/USDはレンジ相場が続いています。弱気派は1.1400割れからの下落で1.1300を視野に、次のサポートは2026年の安値1.1325です 。上値の抵抗は1.1480に位置しており、買い手がこの水準を奪還しない限り、下値を試す流れが優勢です 。
| 要因 | ドルへの方向性と影響 |
|---|---|
| 中東紛争の激化 | 強気(安全逃避のドル買い) |
| 原油100ドル超え | 強気(インフレ懸念、利上げ観測、高利回り) |
| 米サービス業PMI 53.6 | 強気(米成長優位) |
| ECBタカ派据え置き(織り込み済み) | 中立(ユーロの触媒不足) |
| ユーロ圏PMI 51.9 の急伸 | 一時的なユーロ高(すぐに失速) |
| FOMC(7/28-29)のタカ派リスク | 強気(ドル買いのポジショニング) |
総括: EUR/USDは、ユーロ圏の好材料と、中東紛争、原油100ドル超え、米PMI好調、タカ派的FRB観測という強力なドル買い材料の板挟み状態にあります。INGの短期目標到達は的中しましたが、中期的なユーロ高シナリオ(年末1.17〜1.18)は中東の緊張緩和、原油安、そしてFRBのハト派転換という不確実な条件に左右されます。それまでは、下値リスクに警戒が必要です。
(補足)PMIとは? Purchasing Managers' Index(購買担当者景気指数)の略。企業の購買・供給責任者への調査をもとに算出され、50が拡大と縮小の分岐点。市場の先行指標として注目されます。