今フェスティバルで最も話題を集めている作品は、コンペ部門には入っていない。アレックス・ギブニー監督のドキュメンタリー『Musk』は、ヴェネチア・オープン(コンペ外)部門で上映され、その上映時間は232分(約4時間)に及ぶ。この作品はイーロン・マスクの「何年もかけて作り上げた」肖像と評され、リド島でのプレミア上映後、2026年10月16日に米国公開が予定されている。配給はBleecker Streetが担当する。
製作・配給パートナーにはHBOドキュメンタリーフィルムズとユニバーサル・ピクチャーズ・コンテンツ・グループが名を連ねており、Bleecker Streetと協力して公開される。10月という公開時期は、アワードシーズン(賞レース)を明確に意識したもの。Bleecker Streetはこれを「同社史上最大の賞レースラインアップ」の目玉と位置付け、マイク・リー監督の『テンダー・ラビング・ケア』やアントン・コービン監督の『ア・タレント・フォー・マーダー』と並べてプロモーションしている。Page Sixもこのオスカーシーズンを狙った戦略的なタイミングを報じている。
作品の位置づけ:『Musk』は、今年のフェスティバルで異例とも言えるほど充実したコンペ外ドキュメンタリー部門の一翼を担う。フェスティバル全体のテーマとして、メディア王たちを標的にしていると言える。ボイル監督の『インク』がマードックの新聞帝国を追及する一方、ギブニー監督の『Musk』はデジタル時代のテクノロジー長者を鋭く分析する。
コンペ部門には最低でも21作品のワールドプレミアが並ぶ。複数の情報源で確認された主なタイトルは以下の通り。
| 作品名 | 監督 | 主な詳細(出演者、ジャンル、備考) |
|---|---|---|
| 『インク』(開幕作品) | ダニー・ボイル | ルパート・マードックの伝記。ガイ・ピアース、ジャック・オコンネル、クレア・フォイ出演。ボイル監督初のヴェネチア出品。 |
| 『ワイルド・ホース・ナイン』 | マーティン・マクドナー | CIAを舞台にしたダークコメディ。ジョン・マルコビッチ、サム・ロックウェル出演。 |
| 『バッキング・ファスタード』 | ヴェルナー・ヘルツォーク | ルーニー・マーラとケイト・マーラ(姉妹初共演)にオーランド・ブルームが加わる。 |
| 『ルック・バック』 | 是枝裕和 | 漫画家を夢見る少女2人の成長物語。2026年2作目の長編劇映画。 |
| 『ポッシブル・ラブ』 | イ・チャンドン | 『バーニング』(2018年)以来の待望の新作。クシシュトフ・キェシロフスキ作品に触発されたとされる。 |
| 『バンカー』 | フロリアン・ゼレール | 終末スリラー。ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが夫婦役で出演。 |
| 『プライムタイム』 | ランス・オッペンハイム | ロバート・パティンソンが主演・製作。番組『To Catch a Predator』と司会者クリス・ハンセンに着想。 |
| 『カンパニー』 | ケイシー・アフレック | 監督2作目。ニック・ノルティ、ベン・メンデルソーン、スクート・マクネイリー出演。 |
| 『ア・ビット・オブ・ライト』 | アリ・アスガリ | ゴールデン・ライオンを争う。 |
| 『今夜、それが起こる』 | ナンニ・モレッティ | 37年ぶりのゴールデン・ライオン争い。原題はイタリア語で『Succederà questa notte』。 |
| 『ダウ』 | イリヤ・フルジャノフスキー | 長年制作が進められてきた実験的プロジェクト。 |
| 『ザ・エコー・チェンバー』 | アンドレア・パッラオーロ | イタリアのコンペ出品作。 |
| 『イル・フオーコ・ケ・ティ・ポルティ・デントロ』 | エドアルド・デ・アンジェリス | ヴァネッサ・スカレラ主演。イタリアのコンペ出品。 |
| 『レストラネア』 | パオロ・ストリッポーリ | イタリアのコンペ出品。 |
| 『アン・ボン・プティ・ソルダ』 | ステファヌ・ブリゼ | ヴァンサン・ランドンとアルバ・ロルヴァケル出演。 |
今年のドキュメンタリー部門は異例の充実ぶり。フェスティバルは新たに「ヴェネチア・オープン・ノンフィクション」部門を新設し、これらの作品をハイライトしている。
コンペ外 ドキュメンタリー作品:
コンペ外 フィクション作品: