さらに衝撃的なのは、追跡した資本の**29.5%が、LP自身が設定した価格レンジの範囲外に置かれたまま、まったく手数料を稼げていない「完全遊休状態」だったことだ。これは、典型的な週で見ると約5億4200万ドル(約880億円)**もの資金が死蔵されている計算になる。
Dune Analyticsは、1inchの委託を受け、以下の条件で集中流動性の実態を詳細に分析した。
調査結果は、集中流動性モデルが抱える構造的な問題を3つの数字で浮き彫りにした。
調査対象となった集中流動性資本の平均85%が、非効率的な状態にあった。これは、設定した価格レンジから外れている場合に加え、レンジ内にあっても取引量が少ないプールにある場合も含む広義の「低活用」を指す。
低活用状態のLPは、理論上得られたはずの取引手数料を逃している。Duneはその総額を年間約1.5億ドル(約244億円)と試算した。これは、価格レンジ内で稼働していた資本が同期間に達成した約35%の手数料APR(年率)を基に計算されたもので、遊休資本には明確な「機会費用」が伴うことを示している。一部の報道では、より広範な推計として年間1.75億~1.95億ドルに上る可能性も指摘されている。
最も重大な問題は、全資本の**29.5%が価格レンジ外に置かれたまま、一切の手数料を生んでいない「完全遊休」状態にあることだ。これは毎週約5.42億ドル(約880億円)**もの資金がただ眠っていることを意味する。
調査では、この深刻な非効率を生む主な要因として、以下の3つが特定された。
集中流動性は、特定の価格帯に流動性を集中させることで資本効率を高める設計だが、その裏返しとして市場価格が設定レンジから外れると瞬時に機能を停止する。2026年上半期の不安定な相場変動が、この問題を悪化させた。
自動リバランス(自動再調整)を行うボットなどの自動集中流動性管理ツールを使用したLPは、個人のウォレットアカウントで手動管理するLPよりもはるかに高いパフォーマンスを示した。個人LPは「設定して放置(Set and Forget)」になりがちで、価格変動への対応が遅れやすい。
遊休資本のうち、実に36.7%は90日以上にわたって一度もポジションが調整されておらず、LP自身が流動性提供を忘れているか、管理を放棄している可能性が高いことを示唆している。
この調査結果は、2026年のDeFiセクター全体が経験した深刻な収縮の中で発表され、その残念な実態をさらに際立たせた。
Duneの調査は、この「DeFi冬の時代」の光景をより鮮明にした。すなわち、DeFiに残っている資金でさえ、その大部分が本来の役割(取引の促進と手数料の獲得)を果たせておらず、表面的なTVLの数字が実効的な市場の深さや流動性を過大評価していることを示した。年間1.5億ドル以上もの手数料機会損失は、LPにとって直接的な収益コストであり、資本流出のさらなる加速要因となり得る。
この調査は、集中流動性が理論上の資本効率を約束する一方で、新たな運用リスクを導入したことを明確にした。集中流動性プールでLPとして活動するには、次のいずれかが不可欠となる。
「設定して放置」の姿勢は、年間数百億円もの機会損失に直結する。DeFiエコシステム全体としても、TVLという単一の指標に頼るのではなく、その流動性がどの程度「実際に機能しているか」を評価する新たな指標や視点が求められている。