創業者はマーティン・ティスネ、CEOはアヤ・ブデイル氏(元Mozilla AI戦略責任者、littleBits創業者。2026年1月就任)。Current AIは、OpenAIやGoogle、Anthropicなどの独占的なシステムに対抗する、無料で開かれたコミュニティ運営の「WWW(World Wide Web)のようなAI」を目指して、文字通りレースを繰り広げています 。
Current AIの根底にある哲学は、現在のAI業界の主流に正面から挑戦するものです。同団体は「AIシステムの大半は少数の民間企業に支配され、各国政府はAI主権を危惧し、何百万ものユーザーは一つの政策変更や地政学的な変化に脆弱な立場に置かれている」と指摘します 。
Current AIが掲げる解決策は、オープンでパブリックな技術基盤を構築し、それを株主ではなくコミュニティに説明責任を負わせること。3つの核心的な原則は以下の通りです:
CEOのブデイル氏はTechCrunchに対し、「彼らは投資家ではなく資金提供者だ。お金は出資や支配権と引き換えではなく、助成金として提供される」と強調しています 。
Current AIの立ち上げを支えるのは、総額約400億円の初期投資です。内訳はフランス政府からの約100億円のシード資金に加え、フォード財団、マッカーサー財団、Google DeepMind、Salesforce、パトリック・J・マクガバン財団、そしてAI Collaborative(eBay創業者ピエール・オミダイヤーの慈善活動の一部)からの確約で構成されています 。
しかし、その野心はさらに大きく、同団体は**今後5年間で2,500億円(25億ドル)**の調達を目指しています 。すでにフィンランド、フランス、ドイツ、チリ、インド、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、スロベニア、スイスという10カ国が支援を表明しています 。
Current AIは立ち上げから18ヶ月足らずで、構想から実際の展開へと移行。複数のソースで確認された主要プロジェクトをご紹介します。
2026年7月、ジュネーブで開催されたAI for Good Summitで公開。Hugging Face、Mozilla、MITメディアラボなど10の組織からなるコンソーシアムがわずか7週間で構築した、モジュラー型のオープンソースプラットフォーム。独立した開発者が言語モデルや安全プロトコル、計算リソースを追加できるように設計されています 。
Current AIは、東京に本拠を置くSakana AI(創業者のRen Ito氏はCurrent AIの「チャンピオン」に名を連ねる)と提携し、日本の言語的・文化的背景に特化したオープンソースのAIフレームワークを共同開発。この成果は、グローバル・サウスのコミュニティにも応用可能とされています 。
2026年2月のインドAIサミットで、Current AIはインド政府のAI言語部門Bhashiniと提携し、**Suno Sutra(「聴く記録」の意)**を発表。22のインド言語に対応し、インターネット接続を一切必要としないポケットサイズの完全オフライン端末で、ハードウェア設計はすべてオープンソース化されています 。
2026年6月、Current AIは3.2億円(320万ドル)の助成金を4つの地域団体に配分しました :
| 助成先 | 所在地 | 焦点 |
|---|---|---|
| Masakhane | ケニア | 医療・農業向け多言語AIデータセット |
| Lebanese Institute for Worldmaking | レバノン | アラブ文化遺産のコミュニティ主導デジタル化 |
| Portal sem Porteiras | ブラジル・アマゾン | 先住民族コミュニティ向けオフラインAIツール |
| African Internet Rights Alliance | 大陸横断 | AIアカウンタビリティ監査 |
2026年7月、Current AIはOpen Source AI Gap Map v0.1を公開。24,626以上のオープンソースAIプロジェクトを調査し、ギャップを特定して公共の利益に資する開発を調整することを目的としています。データはMITライセンスで公開されています 。
Current AIは単なる非営利団体ではありません。公共の利益に資するAIが大規模に実現可能かどうかを試すテストケースです。政府、民間、財団が関わる「官民パートナーシップ」というそのモデルは、企業統制のAIでも国家運営のAIでもない、第三の道を意図的に模索しています 。
Current AIの急速な進展は、オープンでローカライズされ、コミュニティの同意を得たAIへの代替案への需要が確かに存在することを示しています。2.5億ドルという資金調達目標を達成し、独占的なシステムに匹敵するインパクトを生み出せるかどうかは未知数ですが、その基盤は明らかに築かれつつあります。主要な主張のほとんどは、Current AIの公式資料と、2026年7月19日付のTechCrunchの詳細な調査記事によって裏付けられています 。
要するに:Current AIは、AIがすべての人に奉仕する最善の方法は、すべての人がAIを構築し、所有し、説明責任を果たせるようにすることだと賭けているのです。