下落要因は、設備投資の急増、海外工場による粗利益率圧迫、2nmプロセス立ち上げコスト、市場の織り込み済み、そしてAI・半導体株全体の売り浴びせが複合的に作用したものです。
TSMCは2026年の設備投資(CAPEX)見通しを従来の520~560億ドルから600~640億ドルへ、約15%増額しました。市場はこの支出増を、資本効率の悪化懸念として受け止めました。またアリゾナ工場への追加投資1,000億ドルにより、米国での総投資額は2,650億ドルに達します。このCAPEX増額が株価下落の直接の引き金となりました。
TSMCは新たな海外工場(特にアリゾナの大規模拡張)の立ち上げに伴い、当面は収益性が一時的に低下する可能性があると指摘しました。CFOのウェンデル・ホアン氏はQ3の粗利益率ガイダンスを55.5~57.5%と、Q2の58.6%から低下する見通しを示し、その要因として為替変動と海外工場の立ち上げに伴う希薄化を挙げました。海外工場による希薄化は初期で年2~3%、その後3~4%に拡大するとの見通しです。
TSMCは2nmプロセスノードの急速な立ち上げが粗利益率の重荷になると警告しました。このニュースを受け、TSMCの台北株式は180台湾ドル(7.29%)下落し、終値2,290台湾ドル、時価総額は60兆台湾ドルを割り込みました。
市場は既にAI関連の好調な四半期を株価に織り込み済みでした。実際の業績が市場予想を上回るサプライズではなく、予想レンジ内だったため、短期的な上昇余地はなく、利確売りが加速しました。あるアナリストは「株価が52週高値付近で『パーフェクトプライシング』されている場合、『過去最高益+支出増』は自動的に買いシグナルにはならない」と指摘しています。
TSMCの下落は、AI・半導体株全体の急落と連動しました。台湾加権指数(Taiex)は過去最大の下落幅2,953.71ポイント(率にして6.47%)を記録し、TSMCの下落が主導しました。関税問題や中国AIモデルのブレークスルーへの懸念、割高感もセクター全体の重荷となりました。
TSMCのQ2過去最高益は、急増する設備投資計画、海外展開による粗利益率の希薄化、そして市場に織り込み済みだった好材料によってかき消されました。米国上場株は時間外取引で約3~4%下落し、台北市場では7.29%急落しました。これは投資家が短期的な収益性と巨額投資の長期的なリターンに対して強い不安を抱いたことを示しています。