これらの基金取り崩しにより、国際価格の高騰が小売価格に転嫁される度合いが直接的に緩和されました。基金がなければ、ディーゼルと重油の値上がりはさらに大きかったでしょう 。これは、2026年半ばの危機的状況において、政府が基金への積み増しよりも取り崩し能力を優先するという戦略を継続したことを示しています
。
この背景にあるのは、ホルムズ海峡を巡る米・イラン紛争の激化です。7月7日、イラン軍がホルムズ海峡付近で複数の商業タンカーを攻撃しました。これにはカタール所有のLNGタンカーとサウジアラビア船籍の大型タンカーが含まれます 。7月8日、トランプ大統領は停戦合意は「終わった」と宣言し、新たな攻撃を開始。これによりブレント原油は5.2%急騰し、1バレル78.02ドルとなりました
。7月13日までに、さらなる軍事行動を受けブレント原油は79.26ドルに達しました
。7月16日には84.23ドルとやや落ち着いたものの、1カ月ぶりの高値圏で推移しました
。ベトナム政府当局は、今回の国内価格調整の要因として、「米・イラン緊張の激化、ホルムズ海峡寸断への懸念、そしてロシア・ウクライナ紛争」を正式に挙げています
。
ベトナムの新たな給油所価格はASEAN諸国の中で中位から下位に位置し、補助金のない大半の近隣諸国を大幅に下回りました。
| 国 | ガソリン(約USD/リットル) | 順位 |
|---|---|---|
| ブルネイ | 約0.40ドル(高額補助金) | ASEAN最安 |
| インドネシア | 約0.56ドル(補助金対象のPertalite) | 2番目に安い |
| マレーシア | 約0.44ドル(補助金対象のRON95) | 3番目に安い |
| ベトナム | 約0.76ドル(E5)~0.79ドル(E10) | 中位 |
| タイ | 約1.15~1.23ドル | ベトナムより高い |
| フィリピン | 約0.93ドル | ベトナムより高い |
| カンボジア | 約1.15ドル | ベトナムより高い |
| シンガポール | 約2.50~2.84ドル | 最も高価 |
TradingEconomics(2026年6月データ)によると、ベトナムの平均ガソリン価格は1リットルあたり0.88ドルでした 。タイ情報源による2026年3月~4月のASEAN価格比較でも、ベトナムはタイ、フィリピン、カンボジア、シンガポールより安く、インドネシア、マレーシア、ブルネイより高いという順位で一貫しています
。7月16日の新価格(約0.76~0.89ドル/リットル)は、この地域で引き続き適正な価格帯にあり、高額補助金を実施するブルネイ、インドネシア、マレーシアのみがより安い状況です
。
燃料価格安定基金(BOG基金):2026年3月以降、繰り返し活用されました。3月初旬には、2月末のホルムズ海峡封鎖後の価格高騰を抑えるため、政府は基金から1リットルあたり4,000~5,000VNDレベルを取り崩しました 。3月には、ガソリンに1リットルあたり4,000VND、ディーゼルに5,000VNDを拠出していました
。
国家予算からの8兆VNDの前倒し拠出:3月下旬、政府は2025年の中央予算剰余金から8兆VND(3億300万ドル)をBOG基金に前倒し拠出し、基金に潤沢な準備金を与えました 。第1四半期末までに、基金はすでに5兆4,185億VND(2億600万ドル)を支出し、残高はわずか1,959億VNDとなっていました
。この前倒し拠出は、基金が2026年半ばまで取り崩しを継続する上で極めて重要でした
。
税制の柔軟性:7月1日、政府はガソリンに対する特別消費税を復活させ(E10 RON95で+1,430VND/リットル、E5 RON92で+1,290VND/リットル)、ディーゼルと重油は据え置くという選択的な税制管理を行いました 。
基金拠出の停止:2026年半ばを通じて、両省はほとんどの燃料種に対する基金への拠出を停止し、積み増しよりも取り崩し能力を優先しました 。この方針は、2026年4月に前倒し拠出と返済メカニズムを正式化した通達19/2026/TT-BCTにまで遡ります
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過去の値下げラウンド:6月下旬から7月上旬にかけて、ベトナムは燃料価格を4回連続で引き下げており、7月16日の値上げがパニックを引き起こすことなく受け入れられる、消費者および政治的な余地を生み出していました 。6月下旬から7月9日にかけて、E5 RON92は1リットルあたり約20,126VND(6月18日)から19,190VND(7月9日)へ、ディーゼルは23,534VNDから21,740VNDへと下落してから、反転上昇しました
。
これらの措置により、ベトナムは2026年7月のホルムズショックを、緊急の補助金や配給制に頼ることなく吸収するための財政的・政策的余力を総合的に確保していました。
重要なポイント:ベトナムは、ディーゼルに的を絞った安定基金の取り崩しと事前の基金積み増しにより、17%ものディーゼル卸売価格の高騰と地政学的な不確実性が続く中でも、小売価格をASEANの適正水準に維持し、2026年7月のホルムズショックを吸収しました。