清華大学国際安全保障·戦略センターの分析によれば、WAICOの設計は既存の多国間AI機関にはない3つの特徴を兼ね備えています:いかなる主権国家にも開かれた加盟、加盟時の価値観や体制の審査を課さないこと、そして開発と国際的な能力格差の解消に焦点を当てたアジェンダです。これは、価値観を共有する民主主義国に参加を限定するG7広島AIプロセスや米国の**「パックス・シリカ」(Pax Silica)**構想とは明確に対照的です
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WAICOは、米国主導のAIガバナンスに対する中国の直接的な制度的対抗策と広く見られています。
中国はWAICOを「グローバルサウス」のニーズに応えるものと位置づけています。AIガバナンスは、西側の枠組みが重視する安全性や人権問題だけでなく、開発、能力構築、デジタルデバイドの解消を優先すべきだと主張し、米国主導のAI外交から排除されていると感じる発展途上国を引き付けようとしています。
現時点では主要な西側経済国は参加していません。WAICOの定款は開かれた加盟を謳っており、理論上はどの国でも後から署名することは可能ですが、短期的には極めて困難と見られています。米国、EU、G7諸国はWAICOを、自国の規制モデルや安全保障上の利益と衝突する可能性のある中国主導のAI基準設定のための乗り物と見なしているからです。今後の焦点は、韓国、シンガポール、トルコ、サウジアラビアといった「中堅同盟国」がいつか参加するかどうかであり、それが実現すればWAICOの正当性は大きく高まるでしょう。
日本はG7広島AIプロセスの中核メンバーとして、民主的価値観に基づくAIガバナンスを推進してきました。WAICOの登場は、日本が主導する「信頼性のあるAI」の国際的な定義や基準に対抗する枠組みが誕生したことを意味します。今後の日本の選択としては、(1) 現状のG7・米国主導の枠組みへの関与をさらに強化する、(2) 中長期的にWAICOとの対話チャンネルを模索する、といった戦略が考えられますが、直近の参加は日本の同盟関係や価値観との整合性から見て現実的ではありません。
WAICOは設立されたばかりですが、AIという最重要技術をめぐる「新冷戦」的な対立構造を一段と鮮明にした国際政治の節目と言えるでしょう。