対照的に、中国ブランドの輸入は成長を続けた。中国OEMは現在、中国から欧州に輸出されるBEV全体の**過半数(54%)**を占め、関税前の35%から上昇している。2026年5月、欧州31カ国における中国自動車メーカー5社(SAIC、BYD、吉利(Geely)、奇瑞(Chery)、理想汽車(Li Auto))の合計販売台数は138,410台に達し、市場シェア12.0%で日本ブランドを初めて上回った
。
関税制度は中国ブランド間に明確な勝者と敗者を生み出した。
| ブランド | EU追加関税率(標準10%に上乗せ) | 結果(2023年~2025年) |
|---|---|---|
| SAIC(MG) | 35.3%(合計約45.3%) | BEV輸入がほぼ半減 |
| BYD | 17%(合計約27%) | BEV輸入が倍以上に増加 |
| 吉利(Geely) | 18.8%(合計約28.8%) | 成長を継続 |
欧米メーカーは価格据え置きではなく、生産拠点の移転という選択をした。テスラはベルリン工場でEU市場向け生産に切り替え、ボルボ(EX30)とBMWも主要モデルを中国から欧州の工場に移した。この移転が、中国製EVシェア全体を押し下げる原動力となった。
T&Eは、もしEUが2030年/2035年の自動車CO2排出目標を弱体化させれば(欧州議会議員サリーニ氏の提案による)、中国ブランドのEV市場シェアは2035年までに**30%**に上昇する可能性があると警告している。これは現在の欧州委員会提案の下での15%と比較される。このことは、関税だけでは不十分であり、排出ガス規制を併せて実施する必要性を示唆している。
中国自動車メーカーは、以下の4つの明確な戦略で対応している。
中国ブランドは2023年9月以降、トルコ、ハンガリー、スペインなどで10カ所の生産施設計画を発表している。BYDはハンガリーに40億ユーロを投じる工場を建設中で、2028年までに欧州向けEVを全て現地生産する目標を掲げる
。さらに、ステランティスと協議し、欧州で稼働率の低い工場の買収も検討している
。SAIC(MG)も、35.3%の関税を回避するため現地生産の準備を進めている
。
PHEVは当初、追加関税の対象外で、標準の10%の輸入関税のみが課されていた。中国ブランドのEUのPHEV市場シェアは2024年の**3%から2026年には13%**に急上昇した。EUへのPHEV輸入全体に占める中国製の割合は37%から60%に増加した
。BYDのSeal UプラグインハイブリッドSUVは、2025年に欧州の同カテゴリーでベストセラーモデルとなった
。EUは現在、中国製PHEVに対する関税も準備している
。
中国ブランドのBEVは、関税が課されているにもかかわらず、EU製の同等車よりも平均して21%安い。一部モデルは関税導入後にさらに値下げされた。BYD Seal Uは9%、MG4は7%の値下げである
。中国ブランドはコストを消費者に転嫁するのではなく、市場シェアを維持するために関税を吸収した。
BYDは、関税や規制政策への影響力を得るため、欧州自動車工業会(ACEA)への加盟を申請している。これが認められれば、BYDはEUの排出基準、充電インフラ、関税枠組みが議論される場に直接参加できることになる。
T&Eは、関税が事実上かかっていない中国製バッテリーの輸入が、2020年の約40億ドルから2025年には約300億ドルへと7倍に増加したことを指摘している。欧州メーカーのバッテリー生産はEU全体の4分の1にも満たない。T&Eは、中国製バッテリーに20%の関税を課すことを提唱しており、これによりEU製BEVの価格はわずか2.8%しか上昇しないと試算している
。
EUの関税は、意図した主要な目標、すなわち欧米自動車メーカーに欧州でのEV生産の現地化を促すことには成功した。テスラ、ボルボ、BMWは現在、中国から輸入するのではなく、欧州で主要モデルを生産している。
しかし、関税は中国ブランドの進出を止めることはできなかった。BYDは低い関税率を活用して輸出を維持し、欧州での生産基盤を構築している。SAICはより大きな打撃を受けており、現地化を急いでいる。中国OEMは現在、輸入チャネルで支配的となり、中国からEUへのBEVフローの54%を占めている。関税は誰が、何を、どこで作るかを再編したが、欧州EV市場における中国ブランドへの構造的なシフトを食い止めることはできなかった。