| 距離 | 約17,000~18,000光年(星団までの距離) |
| 伴星(可視星) | 主系列ターンオフ星(水素核融合を終えようとしている段階の星) |
これまでの探索手法(視線速度やX線・電波放射の検出)では限界がありました。今回のブレークスルーは アストロメトリー、すなわち星の空での位置と微小な動きを長期間にわたって極限まで精密に測定する技術にありました 。
研究チームは、oMEGACat プロジェクトのハッブルアーカイブデータ(20年以上)に加え、JWSTの新規観測データで測定をさらに精密化。この合計23年の観測基盤があって初めて、可視伴星の軌道 wobble(ふらつき)から、目に見えない重い伴星=ブラックホールの存在を特定できました。連星周期が約100年と長いため、この長期ベースラインが近星点付近の強い信号を捉えるのに不可欠でした 。
オメガ星団には約1000万個の星が存在し、力学モデルは 約1万個の恒星質量ブラックホール の存在を予測していました。しかし、長年にわたるさまざまな観測手法で発見に至らず、理論と観測の間に深刻な不一致が生じていました 。
oMEGACat BH-2 の発見は、この「見えない集団」が実際に存在することを初めて直接証明しました。ただし、その質量は 約4.5太陽質量 と予想よりはるかに小さいものでした。オメガ星団のような低金属量環境の星では、通常20~40太陽質量のブラックホールができると予測されています。この乖離は、ブラックホールの形成過程や密集星団内での保持メカニズムに新たな謎を投げかけています 。
オメガ星団の中心には、恒星質量ブラックホールよりもはるかに重い 中間質量ブラックホール (IMBH) が存在する可能性が長年議論されてきました。2024年には、ハッブルのデータから中心部で異常に高速で動く7つの星が確認され、最低でも約8200太陽質量、さらに最近の研究では最大約4万太陽質量に達するIMBHの証拠が報告されています 。
一部の研究者は、中心部の見かけの重さは、IMBH 一個ではなく多数の恒星質量ブラックホールの密集で説明できる可能性を指摘していました。今回のoMEGACat BH-2 の発見は、恒星質量ブラックホールが確かに大量に存在することを示す一方で、中心の高速星を説明するにはやはり 単一の巨大なIMBH が必要であることも同時に示唆しています。つまり、「恒星質量ブラックホールの集団」と「中心の中間質量ブラックホール」は 対立する仮説ではなく、両方が共存する ことが今回の研究で強く示唆されました 。
この発見により、オメガ星団は「恒星質量ブラックホールの大集団」と「単一の中間質量ブラックホール」が階層的に存在する、極めて複雑な天体である可能性が浮かび上がっています。