ハンデルスバンクは、自社のキャッシュフローモデルに基づき、ノキア株が現在の株価水準(約€10.42)において、€12に近い「適正価格」に近づいていると判断。残された上値余地が限定的になったことから、「買い」から「ホールド」への格下げに至ったと説明しています。
つまり、これは業績ファンダメンタルズの悪化を示すシグナルではなく、株価がすでに適正範囲にまで上昇したという「景気判断」の変更です。実際、ハンデルスバンクは2025年半ばに目標株価を€5.50に引き下げつつも「買い」を継続するなど、厳しい時期でも強気を貫いてきた経緯があります。
ノキア株は、AI関連需要を追い風に2026年4月には16年ぶりの高値を記録しました。同年1-3月期の調整後営業利益は前年同期比54%増の€2億8100万に達し、市場予想(€2億5000万)を上回る好決算を発表しました。
以下が主要金融機関のスタンス一覧です。
NY証券取引所に上場するADR銘柄については、18人のアナリストによる12ヶ月のコンセンサス目標株価は**$12.57**(約€11.70)。これは現在の株価から約3%の downside を示唆しています。特筆すべきはそのレンジの広さで、最安値が**$5.00**、最高値が**$21.00**と、株価評価において市場の意見がこれほど割れるのは異例です。
2026年5月にはCFRA、Argus、JPMorgan、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行、Arete、Nordeaの7社が相次いでノキア株の格上げや目標株価の引き上げを発表しました。しかし同時に、株価上昇を受けて慎重姿勢に転じる動きも目立ちます。
SEB Equitiesは2026年3月下旬に「株価はすでに光学ネットワーク部門の好調を織り込み済み」として「買い」から「ホールド」に引き下げ。Wall Street Zenも5月に「完全に適正評価された」として「ホールド」に格下げしました
。2026年6月初旬には、投資家の利益確定売りが膨らみ、ノキア株は急落。「割高/上値余地限定的」と見るアナリストのスタンスが売りを加速させたと分析されています
。
このアナリスト間の分裂は、次の2つの陣営に整理できます。
強気派——JPMorgan(€18)やモルガン・スタンレー(€14)が主導。彼らはノキアを「従来型の通信機器メーカー」ではなく、「構造的なAIインフラプレーヤー」と位置づけます。Infinera買収、光学ネットワーク事業の拡大、データセンター需要の爆発的増加を踏まえ、株価は15~20倍のPERでも正当化できると主張。JPMorganはPEGレシオ1.0をベースに29倍PERで評価し、2026年・2027年・2028年のEBIT(利払い前税引き前利益)予想はそれぞれコンセンサスを1.8%、6.0%、40.1%上回る水準に設定しています
。
弱気派・慎重派——SEBやバークレイズ、コンセンサス予想自体が該当。彼らはノキア自身が掲げる2026年の調整後営業利益ガイダンス(€20~25億)が、現在の先行PER約36倍を正当化するには不十分だと指摘。2026年3月時点の実績PERは約64倍に達していました
。これらのアナリストは、株価が実際の収益軌道を大きく先取りした「モメンタム・トラップ(勢いの罠)」に陥っている懸念を示しています。
この対立は異例なほど二極化しており、中間的な立場はほとんど見られません。ノキアを「AI時代の変革企業」と見るか、「割高な銘柄」と見るか——この評価をめぐる議論の決着は、今後の業績発表とAIインフラ投資のペースにかかっています。
ハンデルスバンクの格下げは、ノキア株をめぐる議論に決着をつけるものではありません。しかし、長年強気だった金融機関でさえ、現在の株価水準では限定的な upside しか見込めないと判断したことは、重要なシグナルです。
目標株価のレンジが€5.00から€21.00と極端に広がっていることは、市場がまだコンセンサスに達していない証拠です。ノキアの次の決算と、AIインフラ投資の今後のペースが、どちらの陣営が正しいかを決めるカギとなるでしょう。