ADUOシステムは、2026年から2030年までのパワーユニットレギュレーションにおいて、後れを取ったメーカーが追いつくための仕組みだ。FIAはシーズン序盤のデータに基づき「ICEパフォーマンス指数」を作成。この指数でベンチマークとされるエンジンから2%以上遅れているメーカーは、アップグレードの資格を得る。
この結果は極めて皮肉だ。2026年シーズン前半、メルセデスは全グランプリを制している。一方レッドブルはペースに苦しんでいる。しかしFIAのデータは、内燃エンジン単体の性能に限定した評価で、レッドブルのフォードV6エンジンを優れていると判断したのだ。
レッドブルのチーム代表、ローラン・メキースは冷静ながらも断固とした態度で公の場に臨んでいる。彼はADUOルールの原則自体は支持しつつ、FIAの結論に真っ向から異議を唱えている。
原則には異議なし:メキースはスカイスポーツに対し、「我々はルールがICEの序列のみを推定すべきとしている点に完全に同意している…それに対して何の問題もない」と語っている。
方法論を疑問視:メキースは、レッドブルが独自に収集したデータではメルセデスに対するICEの優位性は確認できないと主張。モータースポーツ誌に対し、「これほど重要な譲歩を正しく与えるためには、データが他の多くの要因から本当に性能を切り離せているという確信が必要だ」と述べている。
証拠の提示を要求:レッドブルは、自社のパワーユニットがメルセデスをリードしているという「データサンプルを一つも見つけられない」としている。メキースはFIAを公然と挑戦し、「我々が他社に対して優位性を持っていることを示すデータサンプルは一つも見当たらないため、より深い議論が必要だ」と語った。
裁定の最終性に慎重な姿勢:当初は「おめでとうを言うにはまだ早い」と述べ、受け取った情報は「FIAから変更される可能性がある」と指摘していた。
マックス・フェルスタッペンもこの裁定に「混乱している」とコメント。メルセデスの圧倒的なパフォーマンスを前に、FIAの判断に疑問を呈した。
レッドブルはモナコでの発表直後、正式に見直しを要求した。現在の状況は以下の通り。
2026年6月下旬時点:『The Race』によれば、FIAはベンチマークの計算方法について詳細な説明をレッドブルに提供する用意があるが、分析結果が変わる兆候は全くないという。
スカイスポーツは、レッドブルが懸念を表明した後、FIAが「エンジンの調査結果を見直している」ことを確認したが、統括団体の立場に変化はない。
複数の情報筋は、非公開の協議が緊迫したものになっていると報じているが、進展の見込みはないとしている。
短く答えるならば、見直しは継続中だが、裁定が覆る可能性は極めて低い。
ADUOの裁定が維持された場合、レッドブルは複数シーズンにわたる競争上のハンディキャップを負うことになる。
レッドブルは、次回の評価期間までADUOの下でICEに一切のパフォーマンスアップグレードを導入できない。一方、ライバルは全員導入できる。
メルセデスは今シーズンと来シーズンに1回ずつ、フェラーリ、アウディ、ホンダは各2回のアップグレード権を得る。これらのアップグレードが効果的であれば、レッドブルのICEアドバンテージは消滅するだろう。
レッドブルのシャシーはメルセデスに劣っていると広く信じられている。唯一の明らかなアドバンテージであるエンジン性能を失えば、追いつくための明確な道筋はなくなる。
ADUOの対象となるメーカーは、アップグレード作業のためのコストキャップの増額や追加のテストベンチ時間も認められる。レッドブルはこれらを受けられない。
ADUOシステムは2030年まで継続する。第一期でベンチマークとされたことで、レッドブルはキャッチアップのための支援を一切受けられず、少なくとも2年間はライバル全員が開発トークンを受け取る状況となる。
結果はパラドックスだ。FIAのデータはレッドブルのエンジンが最高と示すが、その実質的な効果はレッドブルの競争力をより脆弱なものにする。もしチームがICEを改良できず、ライバルが改良できるなら、レッドブルはシャシーや信頼性の面でアドバンテージを探すか、あるいはFIAのデータがいつか自陣に有利に傾くことを願うしかないだろう。