ロイターが2026年11月3日に報じたのは、OpenAIの社内セキュリティをめぐる懸念が、ChatGPTの公開より前から社員の間にあったということです。記事は事情を知る5人の証言に基づき、社員が経営陣や取締役会に問題を伝えていたと説明しました。一部の社員は、経営陣が安全よりGoogleやAnthropicとの競争を優先していると受け止めていたとされています。これは取材先の見方であり、経営陣の意図が独立に確認されたという意味ではありません。
2
7
何が問題視されたのか
報道で焦点となったのは、複数のプロジェクトのコードを一か所に集めた「モノレポ」へのアクセス範囲です。アクセス権を持つ社員が、自分の担当外のプロジェクトについても技術的な情報を見られる可能性があるとして、懸念が出ていました。
14
また、関係者は、研究者が新しいモデルを試すサンドボックスなど、社内ツールのセキュリティ確認が定期的に行われていなかったと指摘しています。
8 こうした指摘は、社内の情報管理と、研究開発の現場で使うツールの点検が十分だったのかという問いにつながります。
OpenAIが説明した対策
OpenAI側は、特に機密性の高い業務は別のコード保管庫に置き、より厳しいアクセス制限を設けていると説明しています。また、主要な保管庫にはモデルの重み(学習済みモデルを構成する数値データ)は含まれておらず、現在は社内ツールを定期的に確認しているとしています。
ロイター報道によると、製品開発を統括する幹部のThibault Sottiaux氏が社内システムを守る取り組みを率い、8月には本番環境を担当するエンジニアの約4分の1がセキュリティ強化に振り向けられました。
2
7
広報担当のElana Widmann氏は、OpenAIは世界で特に攻撃を受けやすい組織の一つだと説明し、技術やデータ、人々を守ることは重大な責任であり、国家的にも重要な課題だと述べました。
2
14
さらにOpenAIは11月2日、次の社内セキュリティ強化の取り組みを計画していると発表。Cathedralの研究者がOpenAIのチームとともに同社のモデルを使い、防御の弱点を探すとしています。
会議室の録音機器をめぐる事件
別の事件では、米司法省がOpenAIのエンジニアだったAbdulrahman Alfozan氏を、幹部用会議室に隠し録音機器を設置し、会話を傍受しようとした疑いで訴追したと発表しました。機器はテレビ背面のUSB端子に差し込まれていたとされています。逮捕は10月9日、連邦裁判所への初出廷は10月13日でした。いずれも起訴内容に関するもので、有罪が確定したことを示すものではありません。
1
5
ロイターのポルトガル語版記事は、捜査書類に基づき、Alfozan氏が社内のAIツールを使って幹部のサウジアラビア訪問に関する資料や、誰が現地の閣僚との会合に参加しそうかを調べたとの疑いも伝えています。 また、米国の裁判官が保釈を認めなかったとの報道もあります。
競争の速さと安全対策、IPOへの影響
元OpenAI研究者のWill DePue氏は、競争が激しい状況でAI企業は「安全のために開発速度を犠牲にはできない」とする趣旨の投稿をしたと、ロイターは伝えています。
3 これは、対策を強めれば開発が遅れるという懸念と、対策が不十分なら情報流出やシステム侵害につながりかねないという懸念がぶつかる構図を示しています。
ロイターは、セキュリティ強化がAI開発の進行を遅らせ、OpenAIやAnthropicが計画する大型IPOにも影響する可能性を指摘しました。ただし、今回の一連の事件がどちらかのIPOを遅らせたと報じたわけではありません。 一方、Anthropicについては、IPO関連書類で、安全対策を理由に次世代モデルの訓練を1カ月以上中断したことが明らかになったと、ロイターが別途報じています。
なお、Hacktron AIによる7月の侵入や、Cathedral Systemsが10月にAnthropicのシステムへ侵入したとされる件について、ここで参照できる資料だけでは、使われた脆弱性や閲覧された情報の詳細を十分に確認できません。OpenAIがCathedralと防御強化で協力すると発表したこと自体も、過去の侵入の詳細を裏付けるものではありません。
10