原油は急落、通貨の反応はまちまち
2026年11月2日、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、最高指導者モジタバ・ハメネイ師が政府に和平協議を進める権限を与えたと説明した。これを受けて市場では、外交によって中東の供給不安が和らぐとの期待が広がり、原油価格が大きく下落した。
1
5
ブレント原油は7.6%安の1バレル=104.77ドルで終了。米国産WTIは7.36%下落して96.46ドルとなり、7月27日以来の大きな日次下落を記録した。
5
8 これは供給の混乱がすでに解消したことを示すのではなく、協議が前進すれば混乱が和らぐかもしれない、という期待を反映した値動きだ。
9
通貨市場は一方向には動かなかった。チリとメキシコの通貨が新興国市場の上昇をけん引したと報じられた一方、アジア時間には新興国通貨の指標が0.2%下がり、韓国ウォンや台湾ドルも域内の他通貨に比べて弱かった。
3 これは取引時間帯の違いも踏まえて読む必要がある。インド・ルピーも、原油安やドル安があったにもかかわらず、米中間選挙を前にした慎重姿勢から、ほぼ横ばいで取引を終えた。
確認できた資料では、チリ・メキシコ以外の通貨について、ハンガリーや南アフリカの上昇幅を裏付ける情報は得られなかった。したがって、これらを含む新興国通貨全体が一斉に上昇したとは言い切れない。
韓国株は反発、ただし市場全体の回復とは別
韓国のKOSPIは2.24%高で取引を終えた。現地報道によると、機関投資家の買いとSKハイニックスの自社株買いが、外国人投資家の売りや米半導体株への懸念を上回った。 ただし、この日の上昇をAI関連輸出の需要や米国企業の決算だけで説明できることは、今回確認できた資料からは判断できない。
シンガポール株の銀行株主導の下落や、MSCI新興国株指数全体の反発についても、今回の資料では十分に確認できなかった。インドの外国人投資家向け長期キャピタルゲイン課税の撤廃案や、トルコ株の動きについても同様だ。確認できない情報を、11月2日の市場全体の結論として扱うのは避けたい。
協議を進める権限は、合意そのものではない
ペゼシュキアン大統領は、最高指導者が政府に協議を進める一定の権限を認めたと述べ、ドナルド・トランプ米大統領も交渉の進展を示唆した。
1
2 しかし、権限の付与は合意の成立を意味しない。カタールが仲介したドーハでの協議は、提案内容の修正にとどまり、突破口には至らなかったと報じられている。
報道された提案には、米国によるイラン港湾の封鎖解除や、イランによるホルムズ海峡の再開、イラン産原油の販売に関する措置などが含まれていた。 これらをどう実施するかで合意できるかは、協議の継続を見極めるうえで重要になる。
安心感が続く条件は、発言より実際の進展
原油の急落は、外交が供給不安を和らげる可能性に市場が賭けた結果だ。一方、11月2日遅くには、米国とイランの隔たりが大きいとの懸念から原油が反発したとの市場報道もあった。
17 協議への期待だけで相場が動きやすいことは、安心感がまだ脆いことを示している。
相場の落ち着きが続くには、協議の進展に加え、実行可能な合意と安全な海上輸送の回復が確認される必要がある。今回参照できた資料から、原油価格に残る地政学リスク分を具体的な数値で見積もることはできない。少なくとも、協議の容認を和平成立や供給正常化と同じものとして受け取るのは早計だ。