エド・ジトロン氏は、米Yahoo Financeのインタビューで、Nvidiaのジェンスン・フアンCEOが「チャネル・スタッフィング」を行っていると主張した。顧客にGPUを数カ月前倒しで買うよう促し、品薄になるとの警戒感を強めて、需要や価格を押し上げているという見立てだ。ジトロン氏はこの行為を「道義的に許しがたい」と評した。
9
15
ただし、これはジトロン氏の主張であり、報道によって確定した事実ではない。関連する報道で具体的に確認できるのは、AWSが一部のデータセンターで電力を使えるようになる前に、Nvidia製サーバーラックを受け取る計画を立てていたことだ。それだけでは、Nvidiaが早期納入を求めた、あるいはGPU不足を意図的に作り出したとはいえない。
「チャネル・スタッフィング」とは何を指すのか
「チャネル・スタッフィング」は、販売先に通常の需要を超える商品を押し込むことを指す表現だ。ジトロン氏は、Nvidiaが顧客に「今買わなければ後で手に入りにくくなる」といった不安を与えて注文を前倒しさせ、売上を先に計上するとともに、品薄感を強めていると主張した。
9
15
同氏は需要への疑問を示す材料として、Nvidiaの売掛金の約70%を上半期に5社が占めたという数字も挙げた。
1 これは取引先が限られた企業に集中していることを示すが、それだけで需要が人為的に作られたことや、Nvidiaが顧客に購入を強制したことが分かるわけではない。
一方、インタビューでは、半導体の製造には長いリードタイムがかかるため、顧客が供給を見越して早めに注文する可能性も指摘された。
2 提供された情報からは、前倒し注文がNvidiaからの圧力によるものなのか、調達計画上の判断なのかは判別できない。
AWSの先行受領計画が示すこと
Business Insiderは、AWSがNvidiaのGB300サーバーラックを通常より早い段階で受け取る「Early Rack Receipt」の仕組みを導入していたと報じた。同社が確認した社内メールでは、8月に約50億ドル分を受領し、その後も「当面の間」毎月およそ30億ドル分を受け取る見通しが示されていた。
報道によると、AWSの一部拠点には機器を置くスペースがあっても、稼働に必要な電力が足りなかった。そのため、完成したシステムは中間倉庫に置かれていたという。 これは、ハードウェアの受け取りと、データセンターで実際に使い始められる時期にずれが生じていたことを示している。
このずれは、購入が導入に先行しているというジトロン氏の懸念に関係する。しかし、報道が説明しているのはAWS側の受領プロセスであり、Nvidiaが早期納入を要求したことではない。また、メールにあった金額は受領見込みであって、計画どおりにすべての納入が実現したことを示す実績値でもない。
機器が電力の整っていない拠点向けに待機していたとしても、それだけで「押し込み販売」の証拠とはならない。データセンターの電力や建設の準備が追いつかないという事情でも、受領と稼働の時期はずれうる。
現時点で言えること、言えないこと
ここでは、二つの話を分けて考える必要がある。ひとつは、Nvidiaが顧客に購入を急がせて人工的な品薄を作っているというジトロン氏の告発。もうひとつは、AWSが一部の拠点で稼働準備が整う前にラックを受け取る計画だったという報道だ。後者は機器調達のタイミングを考える材料にはなるが、前者を証明するものではない。
現時点で確認できるのは、顧客の前倒し調達をめぐる主張があり、AWSでは受領後すぐに稼働させられない機器が生じる可能性が報じられたことまでだ。早期購入をNvidiaが促したのか、またそれが人為的なGPU不足に当たるのかは、なお立証されていない。