「中国を去る」より、既存拠点を保ちながら投資先を分散
サムスン電子とSK hynixの動きは、中国事業を一気に畳むというより、既存の生産基盤を維持しつつ、新たな投資先を米国などへ広げる流れと捉えられる。米国の輸出規制は中国工場に入れる製造装置を制限し、投資や設備更新の見通しを不透明にしている。一方、AI向け需要を背景にメモリー不足が続き、現在の生産能力を簡単に手放しにくい状況だ。
中国の既存工場を保てば、そこで築いた供給網や人材、設備を活用し続けられる、という経営上の利点は考えられる。ただし、今回の報道資料だけでは、中国の人件費の安さが両社の判断を左右しているとは確認できない。両社がそれを明示的な理由として挙げた、とまでは言えない。
装置の搬入は年ごとの許可制に
米国は従来の包括的な例外措置を終え、サムスンとSK hynixの中国工場向け装置輸出を、年ごとの承認に切り替えた。2026年分の許可は出ているものの、従来のように先々まで見通せる仕組みではない。 SK hynixの大連工場については、2026年分の許可で搬入できる装置の数量が限られ、2027年分の許可は報道時点でまだ出ていないと報じられた。
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この仕組みのもとでは、既存設備の維持と、生産能力や技術を引き上げるための投資との線引きが重要になる。韓国の半導体メーカーが米国、ベトナム、日本などを次の生産候補地として探っているのも、中国での投資に制約があることが背景にある。
大連の「Mod B」をめぐる説明の食い違い
SK hynix傘下のSolidigmは、大連工場の未使用区画「Mod B」にNAND型フラッシュメモリー製造装置を導入するため、米国の許可を求めている。ロイターは、追加の装置輸出許可と米国内の新工場計画が結び付いていると報じた。
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一方、SK hynixは、Mod Bは2023年に完成しており、能力増強を求めているわけではないと説明。設備の設置は米政府と協議し、その許可のもとで進めているとしている。
12 つまり、既存の区画に装置を設置することへの許可と、追加装置の輸出や将来の許可が認められるかは、別の論点として残る。
AI向け需要で、既存の生産能力がより貴重に
AIインフラの拡大で、メモリーチップの需給は厳しさを増している。サムスンとSK hynixはDRAM市場の約3分の2を占めるとされ、両社の供給が滞れば、パソコンやスマートフォンなどの供給網にも影響が及びかねない。 サムスンは2026年にメモリー不足が悪化するとの見通しを示し、SK hynixのクァク・ノジョンCEOは、2027年が業界史上最悪の供給不足になる可能性に言及した。
こうした環境では、既存工場の生産を維持することと、新しい工場を建てることは同じ時間軸で考えられない。SK hynixが米インディアナ州ウェストラファイエットで進める約40億ドルの計画は、AI向け半導体のパッケージング施設で、次世代HBM4Eの量産開始は2029年第3四半期を予定している。大連のNAND生産をすぐ置き換える施設ではない。
結論は「中国を維持し、次の投資は分散」
米政府は外国の半導体メーカーに米国内での工場建設を促している。
16 韓国国内でも、サムスンとSK hynixが南西部の半導体クラスターを含む大規模な投資を約束したと報じられており、両社には複数の投資先をめぐる圧力がかかる。
現時点で見えるのは、中国の既存拠点をすぐに置き換えるのではなく、許可の範囲内で生産を続けながら、将来の設備投資を他地域にも振り分けようとする姿勢だ。大連のMod Bへの装置設置が既存操業の維持なのか、実質的な増産なのか——その線引きが、米国の許可をめぐる争点として残っている。
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