アリゾナ大学のブリタニー・マイルズ氏が率いる研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使い、褐色矮星WISE 0855を11時間にわたって観測しました。15分ごとに光のスペクトルを記録した結果、水雲の厚さが時間とともに変化することを示す、太陽系外で初の直接的な証拠が得られたと大学は発表しています。
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ここでいうスペクトルとは、天体の光を波長ごとに分けたものです。明るさをひとまとめに測るだけでなく、波長ごとの変化を時間に沿って追うことで、雲や温度、気体が大気に与える影響を詳しく調べられます。研究では、近赤外線分光器NIRSpecによる中分解能の時系列スペクトルが使われました。
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雲の変化をどう捉えたのか
観測のポイントは、異なる時刻のスペクトルを並べ、大気の状態がどう移り変わるかを見ることです。大学の発表は、水雲が厚くなったり薄くなったりする変化を今回の成果として挙げています。
2 これは、WISE 0855に水雲があるという初期の証拠とは異なる成果です。2016年には、ジェミニ・ノース望遠鏡による観測から、水蒸気や雲を示す特徴が報告され、そのスペクトルは木星に似た吸収の形を示しました。
ただし、天体が自転すれば、雲の多い領域と少ない領域が観測者の視線に順番に現れます。そのため、スペクトルの変化には、雲が実際に変化することだけでなく、雲の分布が見え隠れする効果や、わずかな温度差も関わり得ます。公開資料の抜粋からは、チームがそれらをどのように定量的に切り分けたのかまでは確認できません。「直接的な証拠」は雲の厚さの時間変化を指し、雲を一つずつ撮影したという意味ではありません。
一酸化炭素など、大気中の気体の変動
時系列スペクトルは、雲だけでなく大気中の気体の変化を調べる手がかりにもなります。観測の概要を紹介した資料では、一酸化炭素(CO)の吸収の変動が報告されています。
5 また、低温の褐色矮星では、深い大気から気体が運ばれる「化学的な非平衡」が研究されており、WISE 0855を含む天体で一酸化炭素がその手がかりとなっています。
ただし、今回の観測で一酸化炭素やホスフィン(PH₃)が繰り返し変化し、その原因が対流だったと断定するには、ここで確認できる資料だけでは不十分です。2016年のスペクトルを扱ったレビューは、木星に見られる強いホスフィン吸収がWISE 0855では確認されなかったと説明しています。 そのため、ホスフィンの変動や対流との因果関係を確定した事実として扱うのは避けるべきです。
系外惑星の大気を考える手がかりに
WISE 0855は地球から約7.5光年の距離にあり、既知の褐色矮星のなかで最も低温の天体とされています。研究資料では有効温度は約265ケルビン、摂氏ではおよそマイナス8度とされています。
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2 木星に似た水雲の特徴も、この天体が低温の惑星状大気を調べる比較対象になる理由の一つです。
雲は、天体の大気から届く光を変え、観測から温度や化学組成を読み取る際にも影響します。WISE 0855のような低温天体で雲と気体の変化を調べることは、巨大ガス惑星や系外惑星の大気スペクトルを解釈するうえでも役立つ可能性があります。 今回の観測は、遠くの天体の「天気」を一枚の画像として見たというより、光の変化を時間と波長の両面から追い、大気が静的ではないことを調べたものです。
研究論文「Water Cloud and Chemical Modulations in the Coldest Brown Dwarf」は2026年9月17日にarXivで公開されました。
1 確認できる資料には掲載誌について異なる情報があるため、ここでは特定の学術誌への掲載を断定しません。