AI企業Anthropicは、2021年にシリーズAで1億2,400万ドルを調達したスタートアップから、米国でのIPO申請が報じられる企業へと成長しました。Claude製品の拡大や大規模な資金調達が成長を支える一方、著作権訴訟や米政府との対立も注目を集めています。なお、報道されたIPO申請は上場の完了を意味しません。また、売上ランレートや将来予測は、実際に計上済みの年間売上とは別の数字です。
まず押さえたいポイント
- 資金調達は、2021年の1億2,400万ドルのシリーズA、2022年の5億8,000万ドルのシリーズBから始まり、その後、企業価値も大きく上昇したと報じられています。
- 主力製品はAIアシスタントのClaudeです。2026年には、一般向けの安全対策を施したClaude Fable 5と、招待制のClaude Mythos 5という形で提供範囲を分けました。
11
- IPOはまだ見通しの段階です。2026年5月時点で報じられた年間換算の売上ランレート470億ドル超と、2028年の売上予測1,900億〜2,000億ドルは、性質の異なる数字です。
初期の資金調達から大手企業の支援へ
Anthropicは、兄妹のダリオ・アモデイ氏とダニエラ・アモデイ氏が率いるAI企業です。2021年5月にシリーズAで1億2,400万ドルを調達し、2022年4月にはシリーズBで5億8,000万ドルを調達しました。
AIアシスタント「Claude」が登場したのは2023年です。同年、Amazonは最大40億ドルを投資する計画を発表し、Googleも最大20億ドルの投資に合意しました。いずれも大きな戦略的支援ですが、Anthropicが発表した資金調達ラウンドとは区別して考える必要があります。
2025年3月には35億ドルを調達し、調達後の企業価値は615億ドルと報じられました。同年9月の130億ドルの調達では、調達後の企業価値が1,830億ドルと伝えられています。また、2025年2月には、Claudeの開発支援向け製品「Claude Code」を単独製品として投入しました。
2026年5月には、Anthropicの企業価値が9,650億ドルに達したとの報道もありました。ただし、これは非公開企業として報じられた評価額であり、IPOの公開価格でも、上場後の市場評価を保証するものでもありません。
ClaudeとMythos――広く提供するモデル、限定提供のモデル
AnthropicはClaudeの機能や製品を広げる一方、2026年のMythos関連発表では、モデルによって提供対象を分ける方針も示しました。4月には「Claude Mythos Preview」を限定的な取り組みとして発表。6月には、安全対策を施して一般向けに提供する「Claude Fable 5」と、サイバー防衛関係者やインフラ事業者の一部にProject Glasswingを通じて提供する「Claude Mythos 5」を発表しました。
11
Anthropicは、Mythosをサイバーセキュリティや生物学研究に特に高い能力を持つモデルと説明しています。9月に発表されたMythos 5.1も、審査を通過した組織の一部に提供を限定しています。こうした能力についての記述はAnthropicによる説明であり、あらゆる利用環境で安全かつ確実に機能することを独立に証明するものではありません。
2
著作権をめぐる訴訟――書籍訴訟の和解と音楽出版社の別訴訟
2026年7月、Claudeの学習に使われた書籍をめぐり、著者らが起こした集団訴訟について、連邦判事が15億ドルの和解を承認しました。この和解で解決したのは当該訴訟の請求であり、著作物をAIの学習に使うこと全般の適法性を一律に判断したものではありません。先行する手続きでは、適法に入手した書籍と海賊版の書籍が区別されていました。
20
これとは別に、SonyとWarner Musicに関係する音楽出版事業者が8月、著作権のある楽曲をClaudeの学習に不正利用したとしてAnthropicを提訴しました。ここで確認できるのは訴訟が提起されたという報道であり、最終的な判断や結論ではありません。
17
米政府との対立と軍事契約
Anthropicと米政府の対立は、自社技術に設ける安全上の制限と、国防総省が同社を軍事契約から排除したことをめぐるものでした。2026年9月25日、連邦控訴裁判所は2対1で、排除を差し止めることを認めませんでした。Anthropicによる異議申し立てにとって後退となる判断ですが、軍事分野でAIをどう使うべきかという論点すべてに決着をつけたわけではありません。
18
IPOの状況と売上見通し
Anthropicは2026年6月、米国でのIPOに向けて非公開で申請したと報じられました。非公開の申請は上場手続きの一段階であり、IPOの実施や株式の取引開始時期が確定したことを意味しません。
Reutersは、Anthropicの年間換算の売上ランレートが2026年5月までに470億ドルを超えたと報じました。また、同社は2028年の売上をおよそ1,900億〜2,000億ドルと予測していると伝えられています。前者は直近の事業ペースを年間に引き延ばした目安で、後者は将来予測であり、どちらも確定済みの通期売上ではありません。
さらに9月には、2026年中に年間換算の売上ランレートが1,000億ドルを超える可能性があるとの報道もありました。これも通年の実績ではなく、先行きに関する推計です。
数字を見るときは、資金調達額や企業価値、売上ランレート、将来予測を混同しないことが大切です。それぞれが表すのは、投資家の資金拠出や期待、直近の事業ペース、そして将来の見込みです。IPOが実現し、より詳しい財務情報が開示されるまでは、上場の時期や評価額、今後の成長には不確実性が残ります。