米国債の利回りが上がる一方で、企業や家計には負担の強まりをうかがわせる動きもあります。矛盾しているように見えますが、債券市場が注目しているのは景気の強弱だけではありません。インフレが続くか、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利をどこまで引き上げるか、そして市場がどれだけの国債や社債を吸収する必要があるかも、利回りを左右します。
米10年国債利回りは2月下旬の安値から9月第1週までに約0.8ポイント(80ベーシスポイント)上昇しました。 9月24日には5.196%に達し、2007年以来の高水準となりました。
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インフレ懸念とFRBの金利見通し
物価上昇が続くと予想する投資家は、債券を保有する見返りとして、より高い利回りを求めることがあります。また、FRBが短期金利を高い水準に保つ、あるいはさらに引き上げるとの見方が強まれば、債券利回りにも上昇圧力がかかります。
FRBは9月、政策金利を3.75~4.00%の範囲に引き上げ、追加利上げの可能性も示しました。
17 原油価格の上昇がインフレへの警戒感を強め、9月24日には10年債利回りが5.196%に上昇。30年債利回りも2004年以来の水準に達しました。
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市場の金利見通しを押し上げたのは、インフレだけではありません。9月の利回り上昇局面では、予想を上回る経済指標も材料になりました。 景気が弱いときだけでなく、経済活動が堅調で物価上昇も続きそうだと受け止められると、FRBが金融引き締めを続けるとの見方から利回りが上がることがあります。
企業の警告は「景気全体の結論」ではない
企業の業績や経営者の発言には、雇用や消費、コストをめぐる厳しさが表れています。ただし、個別企業の報告だけで、米経済全体が弱っていると判断することはできません。
給与計算サービス会社ペイチェックスの経営陣は、雇用市場を「採用も解雇も少ない」状態と表現しました。一方、食品大手ゼネラル・ミルズは、底堅い家庭内需要があるものの、投入コストの上昇が業績の重荷になっていると説明しました。
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外食企業の数字も一様ではありません。クラッカー・バレルでは既存店のレストラン売上高が2.1%減り、来店客数は6.1%落ち込みました。
2 対照的に、ダーデン・レストランツ傘下のオリーブ・ガーデンは、会計年度第1四半期の既存店売上高が1.1%増加。ダーデン全体の売上高は5.1%増でした。 こうした数字は個々の企業やブランドの状況を示すもので、景気全体を測る指標ではなく、米国債利回りの上昇を直接説明するものでもありません。
需要の弱まりが続けば、将来の利下げ観測につながり、利回りを押し下げることもあります。しかし、インフレ懸念が残り、FRBが高金利を維持すると見込まれる場合には、反対向きの力が働きます。
国債の供給や債券需給も無視できない
利回り上昇を「インフレと金利見通しの問題で、政府債務は関係ない」と片づけるのも正確ではありません。政府の借り入れが大きく、企業による社債発行も増えると、市場が吸収する債券の量が増えます。投資家が長期債を保有するために、より高い上乗せ利回りを求めることも、長期金利を押し上げる要因になり得ます。
どの要因がどれだけ効くかは、時期によって変わります。9月初めまでの上昇についてTDエコノミクスは、FRBの金利見通しの上方修正と、長期債を保有するために投資家が求める上乗せ分の拡大を主な要因として挙げました。政府・企業の大規模な借り入れや、従来の主要な買い手からの需要の弱まりも圧力となっています。 ロイターも、9月の上昇にはインフレ懸念や借り入れ需要、投資資金をめぐる競争など、複数の要素が絡んでいると報じています。
利回り上昇が暮らしや企業に及ぼす影響
米国債利回りは市場で決まる借入コストの基準の一つで、経済全体の金利に影響します。利回りが上昇すると、家計や企業、政府にとって資金調達の負担が重くなることがあります。
したがって、今回の上昇を「景気が弱いのか、国の借金が問題なのか」という二択で捉えるのは適切ではありません。一部の企業が客足の鈍化やコスト増を報告する一方で、インフレとFRBの金利見通しは利回りを押し上げ得ます。さらに、国債の供給や長期債を持つために投資家が求める上乗せ分も、その圧力に加わります。