初期の銀河は、星が生み出した重元素をどこまで広げていたのか。一方、重元素が少ない環境で生まれた大質量星は、周囲のガスにどれほど影響を与えたのか。二つの観測は、この問いを異なる尺度から照らしている。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のSPURSは遠方の銀河を調べ、ハッブル宇宙望遠鏡のTEMPOSは近傍の星を詳しく観測した。TEMPOSの星は初期宇宙を考えるための比較対象であり、初期の星そのものを直接見たわけではない。
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初期銀河から重元素は流れ出ていたのか
SPURSが調べた赤方偏移7.2~9.3の3銀河では、複数の電離状態にある重元素の紫外線吸収が見つかった。吸収線は銀河を基準にすると青方偏移しており、重元素を含むガスが、私たちの視線方向に銀河から遠ざかるように動いているという解釈と整合する。
これは早い時期にガスが流出していた証拠だ。ただし、吸収線だけでは、そのガスがどこまで進んだのか、銀河間空間にまで達したのかは分からない。
この行き先は、種族III星と呼ばれる初代の星を探すうえで重要になる。種族III星は、ほぼ重元素を含まないガスから生まれると考えられている。流出したガスが近くの星形成領域に届けば、そこで新たに生まれる星の材料は重元素で汚染されうる。一方、今回の3銀河の観測は、宇宙のどこにも重元素を含まないガスが残っていなかったことを意味しない。
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近傍の大質量星では、風が弱かった
TEMPOSはハッブルの紫外線観測を用い、近傍の低金属量矮小銀河6個にある大質量星29個を調べた。報告された恒星風は予想外に弱く、とくに重元素量が太陽のおよそ10分の1を下回る星では、重元素量が多い星での傾向をそのまま延長した予測から外れる可能性がある。ただし、これはまだ暫定的な結果であり、新たな法則が確立したわけではない。
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恒星風の強さに重元素量が関わるのには理由がある。大質量星の大気中にある重元素のイオンは、星の放射から運動量を受け取り、ガスが外へ流れ出るのを助ける。風が弱ければ、星が生涯に失う質量も少なくなる。
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ただし、先行研究との比較には注意が必要だ。低金属量のO型星11個を調べた別の研究でも非常に弱い風が見つかったが、その結果は従来の風の運動量に関する傾向を延長した予測と整合的だった。標本や解析手法の違いを確かめる必要がある。
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銀河進化のモデルに何を問いかけるか
TEMPOSの結果が、より多くの星でも確かめられれば、大質量星は従来の予測より多くの質量を保ったまま最期を迎えるかもしれない。その場合、最期の爆発や残される高密度の天体に加え、次の星形成に使われるガスへ星がエネルギーや物質をどう戻すかについても、モデルの見直しが必要になる。
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ただし、TEMPOSは星の最期を観測したわけではなく、SPURSも銀河からの流出を何が引き起こしたかを特定していない。銀河規模のガス流出と、個々の星から吹く恒星風は、関連しうるが同じ観測量ではない。
今後は追加の分光観測とモデル解析によって、弱い恒星風の傾向が再現されるか、星の重元素量とどう関係するかを検証する必要がある。また、極めて低金属量の天体候補をJWSTでさらに深く観測することは、種族III星という解釈を試す手段になる。初期銀河のガスを追う観測も、見つかった重元素が最終的にどこへ向かったのかを明らかにする鍵となる。
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