バンク・オブ・アメリカ(BofA)がブレント原油の見通しを引き上げたのは、中東の供給リスク上乗せ分が一時的ではなく、より長く残るとの判断によるものです。同行はホルムズ海峡周辺の混乱が続き、湾岸からの石油フローが短期間で正常化する確度が低下したとして、2026年後半の予想を1バレル83ドルから95ドルへ引き上げました。
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ただし、これは原油が恒常的に150ドルになるとの予測とは異なります。150ドル超は、戦闘が広域化し、石油関連インフラに重大な損害が及ぶ場合の条件付きシナリオです。
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ホルムズ海峡の混乱が原油価格を押し上げる仕組み
ホルムズ海峡は、湾岸産の原油・石油製品が世界市場へ向かう重要な海上ルートです。この経路が不安定になると、足元で失われた供給量だけでなく、「次の障害が起きた際に代替できるのか」という不確実性も価格に織り込まれます。
ゴールドマン・サックスは、追跡されにくい「ダーク」な航行分を含む湾岸の総石油輸出を日量約1,500万〜1,600万バレルと推計しました。これは戦前水準のおよそ3分の2です。Vortexaも、8月の湾岸輸出は日量約1,500万バレルで、戦前より約1,000万バレル少ないと見積もっています。
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この規模の供給制約が続けば、市場は在庫の取り崩しと需給逼迫が長引く可能性を織り込まざるを得ません。リスクはホルムズ海峡だけに限りません。紅海ルートの不安定化やサウジアラビアのエネルギー設備への攻撃も、輸出の信頼性を揺るがします。なかでもサウジの東西パイプラインは、ホルムズ海峡を通らずに紅海側へ原油を運ぶ代替経路であり、その機能低下は重要です。
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ブレントが100ドルを大きく上回り続けなかった理由
原油先物価格は、現在の供給不足だけではなく、供給が今後どの程度回復するかという予想でも動きます。9月後半には、価格上昇を和らげる材料が二つありました。
第一に、サウジの輸出に一部回復の兆しが出たことです。ロイターが引用したTankerTrackers.comのデータによると、サウジアラムコは9月21日、超大型原油タンカー(VLCC)7隻に計約1,400万バレルを積み込みました。Vortexaは、9月12日以降のサウジの湾岸側原油積み出しが平均で日量約370万バレルだったと推計しています。
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他の推計でも、完全な正常化ではないものの改善は示されました。Kplerのデータでは、サウジの輸出は9月に入ってから日量400万バレル超まで回復し、8月の日量240万バレルから増加しました。JPモルガンの衛星データに基づく推計では、ホルムズ海峡を通るサウジ産原油は直近6日間で日量290万バレルとなり、8月の約70万バレルから増えています。
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第二に、国連会合に合わせた米国・イラン間の外交進展への期待です。ブレント11月限は9月21日に1バレル100.34ドルで取引を終え、前日比3.4%下落しました。市場がサウジからの出荷回復と外交の可能性を評価したためです。
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もっとも、回復は「安全宣言」を意味しません。その週末にホルムズ海峡を通過した商品船は12隻で、前週末の35隻を下回りました。
10 市場が下げたのは最悪の事態がすぐに起こる確率が低下したためであり、湾岸供給リスクが解消されたからではありません。
BofAの「おおむね100ドル」シナリオ
BofAの95ドル見通しは、石油フローの障害は残る一方、紛争が輸出インフラを広範囲かつ長期に破壊する段階には進まないケースと整合的です。外交協議の進展や緊張緩和により、ホルムズ海峡の通航が徐々に改善し、サウジの輸出能力もおおむね利用できる状態が想定されます。
同行は、石油フローを制約する小規模な戦闘が年末まで続くなら、ブレントは1バレル95〜120ドルの範囲で推移し得るとしています。
2 これは供給ショックの継続を織り込みつつも、主要設備の恒久的な喪失までは想定しない価格帯です。
消費者や企業にとっては、100ドル近辺でも燃料コストの上昇と価格変動の拡大を意味します。ただし、それだけで150ドル時に想定されるような極端な供給不足に直結するわけではありません。
150ドル超へ急騰する条件
BofAが示す150ドル超のケースは明確に条件付きです。紛争が拡大し、エネルギーインフラに大きな損害が生じれば、ブレントはこの水準に達し得るとしています。
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長期化する戦争、湾岸と紅海の両ルートでの混乱深刻化、あるいは戦略設備への恒久的な損傷が重なれば、供給ショックは一段と深刻になります。特にサウジの東西パイプラインはホルムズ海峡を迂回する輸出手段であるため、その機能が損なわれれば市場の緩衝材が減ります。ロイターによると、このパイプラインへの攻撃は同ルートの出荷を妨げ、その後サウジは湾岸ターミナルからの積み出しを増やしました。
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期近のブレントが150ドルを超える局面は、BofAの長期的な均衡価格の見方を示すものではありません。需要を抑え込むほどの急性の供給不足を示す価格です。燃料高は消費を減らし、経済活動を弱め、原油需要を押し下げます。この「需要破壊」が起きるため、超高値は安定して続く価格水準ではなく、需給を強制的に調整する局面となりやすいのです。
注目すべき4つの指標
今後の焦点は、日々の終値よりも、現物供給と紛争の広がりを示す次の材料です。
- ホルムズ海峡の通航隻数と輸送量:持続的に回復すれば供給リスク上乗せ分は縮小し、再び落ち込めば拡大します。
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- サウジの輸出能力と積み出し量:湾岸側の出荷増は供給減の一部を補えますが、代替ルートへの被害拡大は大きなリスクです。
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- 外交の進展:信頼できる米・イラン間の緊張緩和は、長期混乱の確率を下げる要因です。
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- インフラ被害の範囲と持続性:攻撃の対象が広がる、または重要設備の復旧が長引くほど、150ドル超シナリオの現実味は増します。
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要するにBofAの見通し修正は、単一の価格目標というより確率の変化です。供給障害の長期化により、2026年後半にブレントが95ドル近辺となる可能性は高まっています。一方、150ドル超には、供給損失を深め、需要を破壊するほどの大規模な紛争・インフラ被害という、より深刻な展開が必要です。
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