「供給がある」と「安く買える」は違う
Acerのジェイソン・チェン会長が示した、2026年第4四半期にPC価格が5〜20%上がるとの見通しは、「全メーカーが部品を入手できなくなる」という予測ではない。焦点は部品の入手可否ではなく、完成品1台を作るために必要な調達コストだ。
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チェン氏によれば、DDR4と標準的なDDR5は比較的潤沢にあり、CPU供給もおおむね正常化している。DDR4のスポット価格は下落傾向にある一方、DDR5は緩やかな上昇を続けているという。
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しかし、PCメーカーがRAMやSSDの原料となるDRAM・NANDフラッシュを調達する際の契約価格は、それ以前の水準を大きく上回っている。生産に必要なチップを確保できたとしても、1台当たりの部材費(BOM)は上がり得る。
とりわけ、メモリ容量やSSD容量が大きい構成ほど影響を受けやすい。使うDRAMとNANDフラッシュが多いためで、Acerが示した5〜20%という幅も、こうした構成差を反映したものとみられる。
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圧力の中心はDRAMとNANDの契約価格
市場調査会社TrendForceは2026年第1四半期について、従来型DRAMの契約価格が前期比90〜95%上昇、NANDフラッシュが同55〜60%上昇すると予測した。PC向けDRAM価格については、売り手優位の市場環境を背景に、前期比で少なくとも倍増する見通しも示している。
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値上がりの速度は年後半に鈍る見込みでも、反転する予測ではない。TrendForceは2026年第3四半期について、従来型DRAMの契約価格を前期比13〜18%上昇、NANDフラッシュを10〜15%上昇と予測した。
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価格転嫁へ至る流れは比較的明快だ。
- DRAMの契約価格上昇がメモリモジュールのコストを押し上げる。
- NANDフラッシュの契約価格上昇がクライアントSSDのコストを押し上げる。
- RAMとSSDが高くなれば、ノートPC・デスクトップPCの部材費も増える。
- PCメーカーは利幅で吸収するか、仕様を抑えるか、販売価格に一部を転嫁する必要がある。
Acerの見通しは、価格転嫁の可能性が高まっていることを示す。一方、提示された情報には、CPU、PCB(プリント基板)、マザーボード材料がそれぞれ何%分の値上げ要因になるかという定量的な内訳はない。明確に裏付けられている主因は、メモリとSSDのコストだ。
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AIサーバー需要が一般向けPCにも及ぶ仕組み
AIサーバーと一般向けPCがまったく同じ部品を使うという意味ではない。重要なのは、メモリメーカーが設備投資、ウェハー生産能力、製品構成、販売面で、より付加価値の高いサーバー用途を優先し得る点だ。
TrendForceは、サプライヤーがサーバー用途を優先していること、旺盛なサーバー需要がDRAM・NANDの他用途向け能力を圧迫していることを、メモリ価格上昇の背景に挙げた。
11 ロイターも、AIサーバーの強い需要が世界的なメモリ不足を生み、業界幹部は少なくとも2027年まで続くと見ていると報じている。
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このため、PC向けの一般的なメモリやフラッシュも供給・価格面で影響を受け、PCのRAMやSSDの調達費が下がりにくくなる。
購入者とPC市場への影響
今回のAcerの発言は、PC出荷台数が業界全体で急減することを証明するものではない。提供された情報だけでは、2026年後半にPC総出荷が20%超減少するという主張は裏付けられない。
ただし、価格上昇の負担が重くなりやすいのはエントリークラスだ。販売価格に対して部品コストが占める比率が高く、買い替えを先延ばしにする選択も取りやすいためである。メーカー側は、店頭価格の引き上げ、低採算構成の縮小、コストを吸収しやすい上位モデルへの製品構成の移行で対応する可能性がある。
2027年後半に緩和する可能性はあるのか
チェン氏は、PCの平均販売価格が2027年半ばごろにピークを迎え、その後に和らぐと予想している。
3 その実現には、新たな供給能力が実際に立ち上がり、PCメーカーが使える品質・数量で市場へ出てくることが前提となる。
中国のCXMTは2026年のIPOで579億2,000万元(約86億ドル)を調達した。同社の目論見書では、DRAM技術の更新、次世代DRAMの研究、メモリーウェハー製造ラインの更新に資金を充てる計画が示されており、立ち上げと認定に必要な期間を経た後、従来型DRAMの供給拡大につながる可能性がある。
さらにロイターは、CXMTが北京の新工場でNANDフラッシュの研究開発用生産ライン設置を検討していると報じた。NAND分野ではYMTCも拡大を進めており、ロイターはTrendForceを引用して、同社の親会社が2026年第1四半期の売上高・出荷量で世界3位、中国1位のNANDサプライヤーだったと伝えている。
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こうした増産が意味のある量で認定を通過すれば、PCメーカーの交渉力が改善し、メモリやSSD価格に含まれる希少性プレミアムを抑える可能性がある。ただし、部品の調達価格が下がっても、製造・流通・小売の段階を経て完成品PCの価格に反映されるまでには時間がかかる。
値下がりが確約されるわけではない
2027年半ばが価格の山になるというのは、あくまでAcerのシナリオであり、市場の確定予測ではない。新工場や新ラインは、設備導入だけで直ちに供給力になるわけではない。量産立ち上げ、歩留まり、製品認定、技術的な制約、そしてAIサーバー需要の継続が左右する。
ロイターの報道はこの点で慎重な見方を示す。業界幹部はメモリ不足が少なくとも2027年まで続くと予想し、TrendForceもNANDの需給逼迫が緩むのは同年後半との見通しだ。
17 中国勢の供給拡大は、直ちに広範な値下がりを生むより先に、価格上昇ペースを鈍らせる効果にとどまる可能性がある。
購入する側にとっての要点は単純だ。部品供給が改善しても、近い将来にPCが安くなるとは限らない。Acerの見立てでは、問題は「部品を手に入れられるか」から、「手に入れた部品がいくらするか」へ移っている。