エムバペのOn入りは、単なるスパイクの広告契約ではない。報道によれば、彼は株式を伴う長期パートナーとして、Onのサッカー事業立ち上げの顔であると同時に、製品づくりにも関与する。ランニングを起点に成長してきたOnにとっては、世界最大級のスポーツ用品カテゴリーへ一気に踏み込むための勝負手だ。
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契約の中身:広告塔ではなく、開発にも加わる
レアル・マドリードとフランス代表のキリアン・エムバペは、ナイキとの契約満了後、約20年にわたる関係を終えた。報道では、Onとの契約期間は10年で、報酬には現金だけでなく同社の株式が含まれる。持ち分の規模や金額は公表されていない。
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役割はグローバルアンバサダーにとどまらない。エムバペはチューリヒに置かれるOnの製品チームとともに、フットボール用シューズやアパレルの開発・テストに携わる予定だ。本人は、ロゴを着用するだけでなく、競技のための「新しいアイデア」を一緒につくれる点に魅力を感じたとされる。
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2027年の初ブーツへ、LightSprayを武器に
Onは2027年、初のエリート向けフットボールブーツを発売する計画だ。そこには、同社のLightSpray製造技術を取り入れる構想がある。エムバペは発売キャンペーンの中心であるだけでなく、新製品がトップレベルの競技に耐えうるという信頼をつくる重要な存在になる。
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ただし、サッカースパイク市場は参入障壁が高い。ナイキ、アディダス、プーマ、ニューバランスには、長年の選手・クラブ・小売との関係に加え、フィット感、耐久性、グリップ、サイズ展開といった実戦で積み上げたノウハウがある。スター選手による注目獲得は出発点であり、製品の評価を得ることは別の課題だ。
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アンリの役割:サッカー事業の設計者
元フランス代表でアーセナルでも活躍したティエリ・アンリは、Onの「ディレクター・オブ・フットボール」に就任した。報道によれば、アンリは2025年から水面下で同社のサッカー戦略に関わってきたとされる。エムバペの移籍にも、アンリの人脈と競技面での説得力が重要な役割を果たしたという。
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これは、Onが単にランニングブランドの延長としてスパイクを出すのではなく、長期的なフットボール事業を構築しようとしているというメッセージでもある。
Onにとっての意味:フェデラー型の成長戦略
Onは2019年、ロジャー・フェデラーを商業パートナーかつ株主として迎えた。今回のエムバペとの枠組みも、世界的な影響力を持つアスリートを、広告の起用人物ではなく事業と製品のパートナーとして迎える手法の延長線上にある。
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Onの2025年通期の純売上高は、同社発表で30億1,400万スイスフランだった。ランニングの新興ブランドから、より幅広いプレミアム・スポーツウェア企業へ転換を進めるなか、サッカーは次の成長領域として位置づけられる。
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発表は9月22日の投資家向け説明会を目前に控えた時期で、レアル・マドリード対アトレティコ・マドリードのダービーにも近かった。市場では発表直後、On株が時間外取引でおよそ5〜6%上昇し、ナイキ株は下落した。これはサッカー進出への期待を反映した初期反応であり、事業の成功を保証するものではない。
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ナイキへの影響:業績よりも象徴性
ナイキにとってエムバペを失うことは、単独で業績を決定づける出来事ではない。一方で、世界的なサッカーのスター選手が、従来の大手から新興ブランドへ移る象徴的な出来事ではある。若いスターとブランドの結び付きが固定的ではなくなっているという印象を強める材料にもなる。
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なお、ナイキの「2027年度第1四半期の売上高が1.1%減少」とする見方には注意が必要だ。9月19日時点では同社は同四半期の決算発表を10月1日に予定しており、この数値は発表済みの実績ではなかった。
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市場全体では「知名度」から「定着」へ
27歳でワールドカップ歴代最多得点者となったエムバペの起用は、Onに世界規模の認知をもたらす。だが、サッカー用品市場で地位を築くには、トップ選手の継続的な着用、クラブとの接点、販売網、そして何より実戦で選ばれる製品を揃えなければならない。
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要するにOnが目指しているのは、話題性のあるキャンペーンではなく、エムバペを核にしたフットボール事業そのものだ。成功すれば大きな成長分野を手にできるが、著名選手と新技術だけで、何十年も市場を築いてきた既存勢を崩せるとは限らない。