BYDの欧州生産戦略は、単なる工場増設ではない。中国からの輸出に依存するのではなく、販売地に近い場所で車両と、将来的には電池も生産する体制へ移行する構想だ。BYDは長期的に、欧州で車両組立工場3カ所と電池工場1カ所が必要になるとの認識を示している。背景には販売拡大に加え、EUの貿易措置や、導入が見込まれる域内調達(ローカルコンテンツ)ルールがある。
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まずハンガリー、次は既存工場の買収・改修
BYDにとって欧州初の乗用車工場は、ハンガリー南部のセゲドにある。工場は生産立ち上げ段階にあり、BYDの幹部ステラ・リー氏は従来、2026年第4四半期に車両組立を始める見通しを示していた。9月時点の報道では、生産開始または増産の初期局面に入っているとされる。
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年間生産能力は最終的に約30万台と報じられている。ただし、これは設備・部品供給・人員体制が整った後の到達目標であり、直ちにこの水準で稼働することを意味しない。生産量は段階的に引き上げられる見込みだ。
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セゲド工場は、EU域内で乗用車を生産するBYDの現地化戦略の出発点となる。BYDはハンガリーですでに電気バスや電池関連の事業を手がけてきたが、同工場は乗用車生産の中核となる。
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第2工場はフランスとスペインが有力
BYDは、欧州での第2の生産拠点を2026年末までに決める見通しだ。現時点で実行に移しやすい候補は、フランスとスペインとされる。
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注目点は、BYDが新しい土地に工場を建設する「グリーンフィールド」方式よりも、既存の自動車工場を取得して改修する「ブラウンフィールド」方式を望んでいることだ。他社の余剰生産能力を共同利用するのではなく、工場を買収して完全所有する方針である。既存設備を転用できれば、ゼロから建設するよりも早く生産を始められる可能性がある。
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イタリアが「プランB」とされる理由
イタリアも候補から外れたわけではないが、BYDは第2工場に関して「プランB」と位置付けている。報道で示された判断材料は、国としての競争力と、工場をBYDの生産向けに改修するために必要な投資額だ。
重要なのは、イタリアの順位が低い理由を、人件費や補助金といった単一の要因で説明できる証拠は示されていないことだ。「プランB」は最終的な見送りではなく、現段階ではフランスとスペインの方が、取得・改修可能な資産として条件が整っているという意味合いだ。
電池工場と第3組立工場は、まだ長期構想
欧州の電池工場と第3の乗用車組立工場について、BYDは場所、建設開始時期、投資額を公表していない。現時点では、地域での生産拡大とEU規制への対応に必要となる、長期的な能力要件として示されている。
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電池も域内で生産できるようになれば、完成車の組立だけにとどまらず、サプライチェーンの現地化を深められる。ただし、これは確定済みの建設案件ではなく、方向性を示す段階にある。
現地生産が重要になる3つの事情
BYDが欧州での製造基盤を急ぐ理由は、販売と政策の両面にある。
第一に、海外販売の伸びが中国国内市場の弱さを補っている。ロイターによると、BYDの2026年1〜7月の中国国内販売は前年同期比35%減だった一方、海外販売は79%増加した。8月の海外出荷は前年同月比134.5%増の18万9,466台に達した。
第二に、中国製のバッテリー式電気自動車(BEV)を輸入し続けるコストと不確実性が高まっている。欧州委員会は反補助金調査を経て、中国原産BEVの輸入に対する相殺関税を5年間課している。BYDに適用される企業別の確定税率は**17.0%**で、EUの通常の自動車輸入関税に上乗せされる。
第三に、EUでは域内調達ルールの導入が検討されている。2026年9月時点では制度設計中だったが、早ければ2027年にも導入される可能性があると報じられた。
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つまり欧州の工場網は、顧客に近い場所で供給するための販売戦略であると同時に、海上輸送、関税、政策変更への依存度を下げるための防衛策でもある。
トルコ工場は撤回ではなく「保留」
BYDは、トルコ・マニサで計画していた工場の作業を保留し、欧州での生産に重点を移している。
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これは製造拡大そのものをやめたということではない。短期的には、EU域内の第2拠点に優先的に取り組む判断だ。トルコはBYDの地域戦略にとって依然として意味を持つが、EU域内の工場は、同社の立地判断に影響しているEUの域内調達ルールや輸入関税に、より直接的に対応できる。
次に注目すべきこと
直近の焦点は、第2工場の決定だ。フランスまたはスペインで既存工場を取得することになれば、BYDはハンガリーの単独拠点から、複数工場による欧州生産網へ具体的に踏み出すことになる。
現段階での全体像は明快だ。セゲド工場が現地化の起点となり、フランスかスペインの既存工場の買収・改修がその拡大を早める。そして第3組立工場と電池工場は、将来の欧州産業基盤を完成させる長期のピースとして残っている。
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