AIは、ワシントンで予定されるドナルド・トランプ米大統領と習近平・中国国家主席の会談で中心議題の一つになる見通しだ。両国はAIを経済力と軍事力を左右する技術とみなす一方、先端半導体へのアクセス、米国モデルの不正コピー疑惑、規制のあり方を巡って激しく対立している。
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重要なのは、どちらがより高性能なモデルを開発するかだけではない。AIが誤った攻撃兆候を示したり、軍事サイバー作戦を急速に進行させたりして、指導部に極めて短い判断時間しか与えない事態をどう避けるかだ。
最も重いリスクは「AIによる誤認」の加速
ロイターが伝えた専門家の懸念は、AIが核の指揮・統制ネットワークに干渉するケースや、AI主導の軍事サイバー作戦が進むケースにある。ワシントンや北京の首脳が、実際に攻撃を受けているのかを数分で判断せざるを得なくなる恐れがある。
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そのため、検討され得るのはAI開発を一律に止める合意ではなく、危機管理に絞った措置だ。
- 核の指揮・統制システムからAIを遠ざける明確なレッドライン
- 重大なサイバー作戦では人間が実質的に統制する原則。自律システムに開始やエスカレーションを委ねない。
- 重大な自律AI事案のための専用連絡回線(ホットライン)。事故を攻撃と誤認する前に、政府間で状況を確認する。
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こうした仕組みは米中の技術競争を終わらせるものではない。狙いは、AI、サイバー作戦、誤情報が重なって意図しない軍事的エスカレーションへ転じる確率を下げることにある。
「モデル蒸留」が外交問題に
米国は、中国企業6社が「モデル蒸留」を通じて米国のAI製品を不適切にコピーしたと非難している。モデル蒸留とは、より高性能なモデルの出力を利用し、小型モデルを学習させる技術を指す。米当局者は、この活動が中国政府の認識の下で行われた可能性が高いとしている。
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これに対し中国商務省は、米国の主張には事実上・法的な根拠がないと反論し、蒸留は広く使われる学習手法だと位置付けている。
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技術的な手法を巡るこの対立は、調査や制裁、追加の貿易制限につながり得る。安全対策で情報交換を求める一方、市場での相手の行為を疑っているため、協力の土台は弱い。
半導体と計算資源が最大のレバレッジ
米国は2022年以降、中国による高度なAI半導体と半導体製造装置へのアクセスを制限してきた。米当局は、一部の先端チップが密輸によって中国へ流入している可能性をみているが、規模は明らかではない。また、先端NVIDIA製チップを備えた海外データセンターを中国企業が遠隔利用することへの追加制限も検討されている。
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政策の複雑さを示すのがNVIDIAのH200だ。トランプ氏は昨年後半、H200の中国向け販売を認めた。H200はNVIDIAの最先端製品ではないものの、中国のAI開発を後押ししかねないとして米国内には批判がある。ロイターによると、米当局はその後、およそ10社の中国企業による購入を承認したが、報道時点で出荷実績はなかった。
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ここには米国の難題がある。輸出規制は優位性を維持するための手段だが、限定的な販売許可は商取引を維持し、どの中国企業が高度な計算資源を得られるかにも影響する。
AI統治の考え方も異なる
トランプ氏は、米国にはAI企業を規制・訴追するための手段が既にあるとして、新たな連邦レベルの安全規制を求める声を抑制している。
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中国はより国家主導の枠組みを採り、AIアルゴリズムや学習データに関する規則、AI生成コンテンツの表示義務などを設けている。
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この違いがあっても、軍事・サイバー領域の限定的なガードレールを協議することは可能だ。ただし、民間のAI開発にどこまで国家が介入すべきかという前提が違う以上、包括的な共通ルールの構築は難しい。
縮小する能力差が交渉を急がせる
中国のAIは、米国の先端モデルから大きく離れてはいないとの評価が強まっている。ロイターが引用した米国側の見立てでは、差は年単位ではなく月単位だ。ホワイトハウスのAI顧問デービッド・サックス氏は2025年、中国モデルは3〜6カ月遅れと述べ、米商務省の今年の評価はDeepSeek V4 Proが最先端システムからおよそ8カ月遅れとしていた。
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中国は、構成要素をダウンロードし、検証・改変できる「オープンウェイト」モデルでも強いとみられる。現在の進展が続けば中国が近く最先端モデルで主導権を得る可能性があるとの見方もあるが、これは確立した事実ではなく予測にとどまる。
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現実的な成果は「競争の停止」ではなく事故防止
深い不信と大きな商業的利害を考えれば、広範なAI合意がまとまる可能性は低い。
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それでも、重大なAI事案での連絡を維持すること、核・サイバー領域での境界線を探ること、半導体規制やモデル蒸留を巡る対立が続いても実務者協議を継続することには意味がある。米中AI競争の勝敗は決まらないとしても、AIが外交より速く誤解を増幅させるという最悪の失敗を防ぐ、最低限のルールにはなり得る。