HBM(High Bandwidth Memory、広帯域メモリー)の不足は、中国のAIアクセラレータ導入を左右する実務上の制約になっている。供給が細り、非正規ルートで調達されるメモリーのコストも高まるなか、ベンダーは参考価格を引き上げ、大口顧客を優先し始めている。購入側にとっては、必要な台数と構成をそろえたクラスタを、いつ組めるかの見通しが立ちにくくなった。
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価格上昇が表面化した製品
Huaweiは、AIプロセッサ、メモリーなどを統合するAscend 950DTアクセラレータカードの参考価格を25万元超(約3万7,255ドル)へ引き上げたと報じられた。Reutersによると、契約条件により、顧客への2カ月前の提示価格から**20〜50%の上昇に当たる。Bloombergも、3カ月間でおよそ60%**上昇したと伝えた。比較期間が異なるため、両報道は必ずしも矛盾しない。
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Cambriconも、暫定的に**「690」と呼ばれる次世代プロセッサの提示価格を、2カ月前の水準より20〜30%**高く見直したとされる。具体的な価格は報じられていない。
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小規模な競合であるMetaXとIluvatar CoreXも、同程度の値上げを実施したとReutersは報じた。ただし、製品別の価格表や、各社についての正確な上昇率を裏付ける情報は示されていない。
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既存のHuawei製品にも上昇が及んでいる。Reutersの報道をまとめたTrendForceによれば、Ascend 950PRは2026年初めの約6万元から8万元超へ、旧世代の910Cは約9万元から11万元超へ上昇した。これらは市場で報じられた目安であり、すべての取引に適用される一律の実売価格ではない。
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「1枚当たりの価格」だけでは比較できない
950DTの25万元超という数字はコスト圧力を示す重要な目安だが、世界共通の固定リスト価格ではない。HuaweiとNvidiaはいずれもAIプロセッサを8基以上の単位で販売しており、注文規模やネットワーク機器など付帯設備の購入量によって価格は変動するという。
調達時には、少なくとも次を分けて見積もる必要がある。
- アクセラレータの台数とメモリー構成
- サーバー、ネットワーク、ストレージ、導入・統合機器
- 出荷ロットの確約内容と納入時期
- 部材の供給状況に連動する価格改定条項
- ハードウェア受け入れ基準、予備品、保守・サポート
見かけ上は近い「カード単価」でも、実際に導入可能なクラスタとしての総コストや納期リスクは大きく異なり得る。
950DTは2026年第4四半期予定、ただし数量供給は別問題
HuaweiはAscend 950DTを2026年第4四半期に提供すると公表している。HBMを背景とする価格改定が、この公表時期を変更したとの情報はない。だが、これは製品提供の目標時期であって、その四半期にすべての購入希望者へ量産品を必要数量供給する約束とは同じではない。
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Huaweiのロードマップでは、製品差別化の中心にもメモリーがある。Reutersによれば、950PRには独自HBMのHiBL 1.0を統合し、Huawei公表仕様ではメモリー容量128GB、帯域幅1.6TB/秒。より高性能な950DTにはHiZQ 2.0を採用し、144GB、4TB/秒としている。
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一方、これらのメモリー技術をどこで、どのように製造しているかはHuaweiが明らかにしていないと報じられている。仕様が公表済みでも、生産能力、認定、量産立ち上げの時期には不確実性が残る。
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950PRは単なるロードマップ段階からは前進している。Reutersは3月、顧客テストが良好で、サンプル提供後にByteDanceとAlibabaが注文を計画していると伝えた。当時、DDRメモリー版は約5万元、高速なHBM搭載の上位版は約7万元とされた。
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Nvidia B200との価格比較は、性能同等を意味しない
Bloombergは、950DTの提示価格がNvidiaのB200に合わせて設定されたと報じた。これは価格上の位置付けを示す比較として読むべきであり、両製品の演算性能、ソフトウェアの成熟度、供給可能性、電力効率、ネットワーク、あるいは大規模導入時の総コストが同等であることを示すものではない。
購入判断では、実際に稼働するシステムで比較する必要がある。具体的には、モデル実行時の実用性能、ソフトウェア互換性、インターコネクトの挙動、電力・冷却要件、そして必要期間内に同一仕様のカードを十分に納入できるかが重要になる。
価格以上に重要になる「割り当て」
HBM不足は、誰がハードウェアを受け取れるかという配分にも影響している。ある報道によると、Iluvatar CoreXは、自社利用向けだった分も振り向けるなどして、ByteDance向けの2026年GPU出荷計画を倍増し、10万基にした。
こうした再配分は大口顧客の調達確度を高める半面、他の購入者に回る未契約在庫を減らす。同じ報道では、ByteDance向けの中国国内AIチップ供給企業として、Huaweiが最大で、Cambricon、Iluvatar CoreXが続くとされる。これはByteDance向けの供給順位であり、中国市場全体のシェア順位ではない。
供給制約はHBMの高コストによってさらに強まる。先端HBMの対中輸出規制後、中国企業は備蓄品やブラックマーケット経由の供給に依存してきたと報じられており、こうしたルートには大幅な上乗せコストが伴う。
2026年のクラスタ調達で確認すべきこと
実務上は、アクセラレータを汎用品のカードとして買うのではなく、供給制約下にあるシステム一式として調達計画を立てる必要がある。
部材・構成を特定した拘束力ある契約条件を置く。 契約にはアクセラレータの型番、メモリー構成、数量、出荷トランシェ、受け入れ試験、保守義務を明記し、メモリー搭載カードの納入遅延時の救済措置も定めたい。
導入は段階的に進める。 950DTやCambricon 690では、データセンターの容量や予算を先行して確保しつつ、最終的な拡張判断は、認定済みハードウェアの入手と、複数ノードでのソフトウェア性能実証に連動させる。
割り当てリスクを前提に設計する。 クラスタは、互換性のあるアクセラレータ、メモリー搭載ボード、サーバー、ネットワークが同じ導入期間に十分そろって初めて計画通り機能する。名目上のカード価格が低くても、納入が数カ月に分散したり、構成がばらついたりすれば価値は限定的だ。
可能な範囲で代替策を維持する。 マルチベンダー構成はソフトウェア運用の複雑さをなくせないが、特定ベンダーのHBM配分や納期に全面的に依存するリスクは抑えられる。
中国のAIアクセラレータメーカーにとって、HBM不足による足元の影響は明確だ。価格は上がり、供給配分はより選別的になっている。特定の2026年クラスタ向けに、発表済み製品を必要な数量で確保できるかどうかは、拘束力のある調達契約と、実際に納入・検証されたシステムによってのみ判断できる。
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