フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長がEU一般教書演説で示したメッセージは、AI全般を減速させるというものではない。最も能力の高いAIモデルには慎重なペース配分を求める一方、子どものオンライン保護と、戦略産業で役立つAIの導入は加速させる――という二本立ての方針だ。
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最先端AIには「ペースを調整」
同委員長は、主要なフロンティアAI研究所・企業を招き、公的機関が業界による「フロンティアのペース調整」をどう後押しできるか協議すると表明した。ここでいうフロンティアAIは、現時点で最も高度な能力を持つモデル群を指す。直ちにEU域内で開発停止を命じる、あるいは包括的にAIを禁止する発表ではなく、対話と安全協力に軸足を置く構想である。
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焦点となるのは、自己改善や自己再帰的な能力を備えうるモデルだ。フォン・デア・ライエン氏は、こうしたモデルが「これまで想像できなかった規模」のハッキングを可能にし、近く敵対勢力の手に渡るおそれがあると警告した。
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この減速論の背景には、AI業界内の意見対立がある。ロイターによると、Anthropicのダリオ・アモデイCEOが高度AIの開発ペースを落とすべきだと訴え、OpenAIのサム・アルトマンCEOやイーロン・マスク氏が支持した。一方で、こうした警鐘は妥当な予防措置なのか、それとも過度な「AI終末論」なのかという議論も起きている。
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EUはカナダ、英国など価値観を共有するパートナーとの協力も深める方針だ。対象には、フロンティアモデルの評価や関連する安全保障対策が含まれる。
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子どものネット利用は年齢に応じて段階的に
欧州委員会が提案する「EU Kids Act」は、従来型のSNSだけを対象にするものではない。SNSや動画共有サービス、オンラインゲーム、AIチャットボットを含め、年齢ごとに異なる保護策を設ける構想だ。ただし、これは提案段階であり、この発表だけで新たな規則が直ちに適用されるわけではない。
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示された年齢別の考え方は、次の通りである。
- 13歳未満はSNSを利用できない。
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- 13~14歳は、保護者が設定し、保護者の監督下で使うアカウントに限定する。 利用できる機能と利用時間にも制限を設ける。
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- 15~18歳の利用者については、プラットフォーム側に「安全設計」の義務を課す。
重要なのは、子どもや保護者だけに負担を負わせない設計を目指している点だ。サービス側に年齢確認を求め、無限スクロールのような依存性を高めかねない機能への対応も期待されている。
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産業AIは5分野で実装を急ぐ
最先端モデルのリスクには慎重な姿勢を示す一方、フォン・デア・ライエン氏はAIを欧州経済と安全保障の基盤技術と位置付けた。自動運転や防衛を例に挙げ、欧州がAIから実用的な価値を引き出すべきだと訴えている。
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欧州委員会は、データと活用能力を持ち、産業AIの価値が特に大きい分野として、次の5つを挙げた。
- 医療
- 輸送
- 農業・食品
- 先端製造
- 防衛・宇宙
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これらの分野で「ゲームチェンジャーとなる施策」を11月に発表する予定だとしている。
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「AIを遅らせる」政策ではなく、用途ごとの使い分け
今回の方針は、AIを一律に抑制する呼びかけと受け取るべきではない。最先端では、能力向上がもたらす安全保障上のリスクに備え、評価、国際協力、慎重な進展を重視する。他方、公共サービス、産業競争力、安全保障に関わる幅広い分野では、AIの実装を急ぐ考えだ。
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つまりEUが目指すのは、フロンティアAIにはより強い安全策を求めながら、社会的・産業的な便益が見込めるAI利用は加速するという政策上の切り分けである。
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