ビットコイン(BTC)の長期保有者による売りは、2026年8月中旬から9月前半にかけて約26万BTCが純分配されたと報じられた後、減速したようだ。これは市場への供給圧力が一つ弱まったことを示すが、それだけで価格が底を打ったとはいえない。需要が売りに回ったコインを継続して吸収できるか、そして長期保有者が再び蓄積へ転じるかが焦点となる。
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長期保有者の動きで何が変わったのか
Glassnodeの分類では、長期保有者(LTH)はおおむね155日以上保有されたコインを持つ主体を指す。LTHネット・ポジション変化は、この層が保有する供給量の30日間の純変化を測る指標だ。プラスなら新たにLTHとなるコインが支出されるコインを上回り、マイナスならLTH層が純分配していることを意味する。
報道によれば、この指標は8月中旬に急速にマイナスへ転じ、9月上旬までの累計流出は約26万BTCに達した。これは2025年1月以来の大幅なマイナスで、3月から6月にかけてのLTHによる蓄積局面の後に起きた。9月中旬までには売却ペースがほぼ止まったとも伝えられている。
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ただし、オンチェーン上でコインが移動したことは、そのまま市場で売却されたことを意味しない。カストディ(保管)先の変更、組織内の再編など、売買を伴わない移動もあり得る。それでもLTHネット・ポジション変化が持続的にマイナスであれば、成熟した供給が長期保有者層から流出していることを示す有用なシグナルとなる。
誰が売り、誰が吸収したのか
今回の約26万BTCについて、どの年齢帯やウォレット規模の層が全量を分配したのかを示す完全な内訳は、与えられたデータにはない。したがって、クジラや特定の保有期間の層、あるいは単一の機関が全体を売ったと断定することはできない。
一方で、部分的な手掛かりはある。Glassnodeによると、6月30日の安値以降、1,000~1万BTCを保有する主体は5万500BTCを減らした。他方、10万BTC超を保有する主体は5万9,100BTCを増やした。この最大区分は、取引所、カストディアン、ETFの受け皿と関連するアドレスが多いとされる。これは一部の供給が大口保有者から大規模な保管・取引の受け皿へ移った可能性を示すが、26万BTCのLTH分配を直接集計した数字ではない。
また、アドレス残高の規模は投資家の実体を表すものではない。大口アドレスは取引所、ETFのカストディアン、企業、あるいは多数の顧客資産をまとめている可能性がある。
蓄積から分配へ転じたLTH供給
8月の反転前、長期保有者は蓄積を続けていた。7月にはGlassnodeに基づく報道で、LTHネット・ポジション変化はプラスへ戻り、純ベースで約5万~10万BTCの蓄積が示されていた。
10 また7月のLTH供給量は、推計手法と計測時点による差はあるものの、約1,634万~1,664万BTCという過去最高圏に達したと報じられた。
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8月中旬には、VanEckが「1年以上保有されたコイン」が30日間で35万6,000BTC減少し、1,184万BTCになったと報告した。この指標は155日基準のLTH定義と同一ではないため、約26万BTCという数値と機械的に合算すべきではない。ただし、経験豊富な保有者がこの時期に蓄積より分配へ傾いていた、という大きな流れは補強する。
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持続的な改善といえるのは、LTHネット・ポジション変化が下げ止まり、最終的に再びプラスへ戻る局面だ。マイナス幅の縮小は好材料だが、再蓄積と同義ではない。
CDDは「売却の証明」ではない
Coin Days Destroyed(CDD、コインデイズ破壊)は、ビットコインの移動にコインの「眠っていた期間」を加味する指標である。使われたBTCの数量に、前回移動からの日数を掛けて算出する。CDDが高いほど、長く動いていなかった古いコインが動いたことを示し、低いほど新しいコインの活動と整合的だ。
分配局面を読む際、CDDは重要な補助指標になる。ただし、古参保有者が新しいウォレットやカストディアンへ資産を移すだけでもCDDは上がり得るため、CDD単独で売却や換金を証明することはできない。今回のCDDを過去のサイクル高値と比較できる数値は、提供された根拠には含まれていない。そのため、この局面が歴史的なCDDの極値を上回ったかどうかは断定できない。
売り圧力を相殺し得る需要の材料
最も明確な需要データは、米国の現物ビットコインETFに関するものだ。Glassnodeは、7日間のショートスクイーズ局面で22億3,000万ドルの純流入があり、その間に日次の流出は一度もなかったと報告した。同社の分析では年内で最も強い7日間の資金流入だった。BTC価格はこの過程で短期保有者(STH)のコストベースも回復した。
この組み合わせが前向きに受け止められる理由は二つある。
- ETFの設定に伴う買いは、現物市場に大きな需要をもたらし得る。
- STHコストベースの回復により、直近の買い手が含み益または損益分岐に近い状態となり、損失回避の売りを急ぐ動機が弱まる可能性がある。
もっとも、ETFがLTHによって分配された全てのコインを吸収したことは示されていない。ETFフロー、オンチェーン上の保有者層の変化、取引所残高は、市場の異なる部分を異なる時間軸で測っているためだ。
Glassnodeは、上昇局面で取引所からコインが流出し、幅広い層で蓄積がみられたとも述べた。取引所残高の低下は即座に売買できる供給を減らし得るが、自己管理ウォレットへの移管やカストディ間の移動を反映する場合もある。蓄積の補助的な証拠として扱うべきで、決定的な証明ではない。
FOMCはマクロ面の試金石
米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月28~29日の会合で、フェデラルファンド金利の誘導目標を3.50~3.75%に据え置くことを9対3で決定した。米連邦準備制度理事会(FRB)の予定では、次回会合は9月15~16日に設定されていた。
据え置き、または金融引き締め姿勢を弱める内容となれば、リスク資産への選好やETF需要を支え、LTHの売り減速が供給面の下支えへ発展する可能性を高める。一方、3.75~4.00%への25ベーシスポイント(0.25%)の利上げ、あるいは予想以上にタカ派的な発信があれば、市場が供給吸収を試す局面で、リスク選好やレバレッジ需要を圧迫し得る。
これは市場感応度の整理であり、値動きの予想ではない。BTCの反応は、インフレ、流動性、ETFフロー、投資家のポジションにも左右される。
売りの停止は価格の底を意味するのか
現時点では、まだ結論づけられない。最も妥当な解釈は、大きな分配の勢いが弱まったというものだ。これがより強い底値シグナルになるには、次の要素が同時に改善する必要がある。
- LTHネット・ポジション変化の悪化が止まり、プラス圏へ近づくこと。
- 古いコインの支出とCDDが抑えられ、成熟した供給の市場流入が加速していないこと。
- ETFの純流入が短期的な急増に終わらず継続すること。
- BTCが再テスト局面でもSTHコストベースを維持し、直近の買い手が急速に投げ売りへ転じないこと。
- 取引所残高の減少が、単なるカストディ再編ではなく、信頼できる蓄積を背景として続くこと。
特定の価格水準を再テストすれば必ず90%暴落する、といった主張は投機的だ。約26万BTCの分配や、一時的な取引所保有量の減少だけでは、その結論を支えられない。注目すべきなのは、供給減速の後に長期保有者の再蓄積と持続的な需要が続くかどうかである。