Strategyの「Bitcoin Investor Guide」は、単なるビットコイン購入の推奨資料ではない。マイケル・セイラー会長が2026年9月12日に共有したこのガイドは、投資家が大幅な下落に耐えられること、そして選んだ投資手段には、長期のビットコイン見通しが正しくても損失を招く固有のリスクがあることを理解すべきだと説く。
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最大93.1%下落という歴史は、予想ではなくストレステスト
ガイドは、ビットコインの過去最大の下落率として2011年の93.1%、最悪の1年リターンとして**マイナス83.6%**を挙げている。さらに、ビットコインは50%〜90%の下落を何度も経験し、過去最高値を何年も下回ることがあり得るとしている。
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もちろん、これらの数字は将来も同じ下落が起きるという予測ではない。投資期間、必要資金、投資額が極端な値動きに耐えられるかを問うためのストレステストだ。大幅下落中に資金が必要となって売却すれば、その後に価格が回復しても、回復局面に参加できない可能性がある。
BTCの方向を当てても、投資の成否は別問題
このガイドで重要なのは、ビットコイン価格の上昇と、投資家が実際に得る損益を分けて考えている点だ。ビットコインが長期的に上昇すると正しく見通しても、投資の仕組み自体がリスクとなり、損失を被ることがある。
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レバレッジは底値圏での売却を強いる
借入を使うレバレッジ取引は、利益だけでなく損失も拡大する。BTCが一定水準まで下がると、追加担保を求められたり、取引所や貸し手によってポジションを清算されたりする。そこで損失が確定すれば、後にBTCが反発しても、その投資家は恩恵を受けられない。
オプションには期限と時間価値の減少がある
オプションはビットコインそのものではない。価値は行使価格、満期日、インプライド・ボラティリティ、残存期間に左右される。強気のコールでも、満期までに十分な幅で、または十分な速さでBTCが上昇しなければ、無価値で満了し得る。ガイドは、長期見通しが有利でもオプションの時間価値減少によって損失が生じる点を明示している。
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手数料、優先請求権、取引相手のリスクもある
商品にかかる手数料はリターンを削る。また、企業の資本構成では、債権者や優先株主が普通株主より先に請求権を持つ場合がある。加えて、カストディアン(保管事業者)、発行体、貸し手、取引所などが破綻したり、資産へのアクセスを制限したりするリスクもある。
つまり、ビットコイン連動商品が現物BTCの価格と同じように動くとは限らない。
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実務的には、資産そのもの、投資ビークル、資金調達の仕組みを分けて確認することが重要だ。現物BTC、ファンド、オプション、ビットコインを財務資産として保有する企業の株式は、同じ「ビットコイン投資」ではない。
MicroStrategy時代の経緯が示す、企業固有の論点
発行体や資本構成のリスクを重視するガイドの姿勢は、MicroStrategy時代の会計問題を踏まえると、より注意を引く。米証券取引委員会(SEC)は2000年、MicroStrategyが1998年のIPOから2000年3月まで、ソフトウエアおよび情報サービスの販売に関する売上高と利益を重要な程度で過大計上していたと申し立てた。SECはセイラー氏ら幹部に対する民事訴訟を和解で終結させた。
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SECによると、セイラー氏は申し立てを認めも否認もせず、828万ドルの不当利得返還に同意した。和解には幹部3人それぞれ35万ドルの民事制裁金も含まれた。
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この過去の案件は、現在のStrategyのビットコイン事業における不正を示すものではない。ただし、投資成果は原資産の魅力だけで決まるわけではなく、企業開示、ガバナンス、債務・優先証券などの負債、資金調達の判断にも左右される――というガイドの一般原則を裏づける事例ではある。
ビットコイン保有企業であるStrategyに当てはめると
Strategyの事業モデルでは、この区別は特に重要になる。同社は4,603 BTCを約3億6,970万ドル、1 BTC当たり平均8万318ドルで取得した後、合計845,050 BTCを保有すると報告した。取得総額は手数料・費用込みで約637億3,000万ドル、1 BTC当たり平均取得価格は7万5,412ドルだという。
9月7日までの週には、Strategyはビットコインを購入も売却もせず、約1億7,630万ドル分のSTRC優先株を買い戻した。取締役会はデジタル・クレジット証券の買い戻しプログラムの上限も20億ドルへ引き上げた。
これらは資本配分の判断であり、ガイドと矛盾する証拠ではない。しかし、普通株や優先証券への投資家がBTC価格だけを見れば足りないことを端的に示している。株式の希薄化、優先株の請求権、配当、流動性、借り換え需要、経営陣の意思決定は、いずれも投資リターンに影響し得る。
結論:問うべきは「BTCは上がるか」だけではない
Strategyの警告の主眼は、価格予想よりも「市場から退場させられずに持ち続けられるか」にある。ビットコインの過去の急落は、極端な変動に耐えられる投資額が必要な理由を示す。レバレッジ、オプション、手数料、取引相手、企業の資本構成は、BTCが上昇しても利益が保証されない理由を説明する。
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投資家が確認すべき問いは、「ビットコインは上がるのか」だけではない。自分が保有するのは何か、何が強制売却を引き起こし得るか、資本構成で自分より優先されるのは誰か、そして大幅下落を乗り切れるのか。――この4点まで見極める必要がある。