欧州が米国との宇宙協力をめぐる不確実性に対して進めているのは、NASAやSpaceXを単独で置き換える計画ではない。焦点は戦略的自律性、すなわち外部パートナーの方針が変わった場合でも、優先度の高い衛星を打ち上げ、安全な通信を運用し、不可欠な宇宙能力を維持できる状態をつくることにある。
この課題の緊急性を高めたのが、米国の圧力が報じられるなかで、SpaceXを含む米宇宙企業がパリの国際宇宙サミットへの参加を取りやめた出来事だ。フランスは9月の会合を予定通り開催し、競争が激化する宇宙分野で欧州の役割を強めようとした。
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「宇宙の自律性」とは何か
欧州にとって自律性は、大西洋をまたぐ協力を終わらせることではない。政府や重要インフラが依存する能力について、特定の外部供給者だけに頼るという弱点を減らすことを意味する。
実務上の優先課題は明確だ。
- 確実な宇宙輸送手段:民生・安全保障・防衛の衛星を、域外の事業者だけに全面依存せず打ち上げられる選択肢を持つこと。
- 安全な通信:行政サービス、安全保障、危機対応に使う衛星通信を、強靱で管理可能な形で確保すること。
- 産業基盤:研究計画やサミット宣言だけでなく、企業、射場、製造能力、継続的な公的需要を育てること。
- 一貫した安全保障態勢:宇宙政策を国家安全保障、監視、基幹サービスの保護とより強く結び付けること。
パリのサミットは、欧州がすでに能力格差を埋めたことを示す場というより、政治的な意思表示だった。ロイターは、大きな新決定は見込まれない一方、宣言や契約の発表が予想されると報じていた。
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英国が加える「国家レベルの柱」
英国の新たな宇宙戦略は、欧州全体の方向性が具体的な支出計画へ移りつつあることを示す例だ。英国政府によると、この戦略には2029/30年度までに78億ポンド超の資金が裏付けられ、安全保障、防衛、経済成長にまたがる宇宙投資を単一の枠組みにまとめる。
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とりわけ、打ち上げ関連の措置は自律性の議論に直結する。戦略には欧州のロケット計画に1億4800万ポンド、シェトランド諸島のサクサヴォード宇宙港に3000万ポンドを投じる方針が含まれる。政府は、英国とそのパートナーが遠方の国に頼らず衛星を打ち上げられるようにする投資だと位置付けている。
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サクサヴォードへの資金は、追加の発射台2基の整備を支える予定だ。同宇宙港はすでに完全な認可を取得しており、運営会社は公的投資がさらに3000万ポンドの民間資金を呼び込む見込みだとしている。
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これだけで大型ロケット打ち上げの代替手段が完成するわけではない。それでも小型商業ロケット向けのインフラを増やし、欧州の打ち上げ選択肢を広げる効果はある。
なぜ国内からの打ち上げが重要なのか
打ち上げは、もはや単なる商業輸送サービスではない。通信、地球観測、衛星測位、情報収集、科学ミッションのすべてに入る入口である。地政学、輸出規制、打ち上げ枠の逼迫、あるいは供給者の優先順位変更によってアクセスが制約されれば、政府はミッションの実施時期やリスク管理を自らコントロールしにくくなる。
このため欧州の政策は、継続的な打ち上げ能力と域内需要の確保へと重心を移しつつある。打ち上げ産業は、時折の実証飛行だけでは維持できない。複数年にわたる調達、予測可能な衛星の打ち上げ需要、そして定常運用を支えられる宇宙港が必要になる。
英国の戦略でも「確実な宇宙へのアクセス」は、衛星通信、宇宙状況監視、軌道上サービス、製造と並ぶ優先分野に位置付けられている。
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主権のもう半分は「安全な接続性」
自律性は、政府や基幹サービスの通信を運ぶネットワークを誰が管理するかにも左右される。英国の戦略は民生と防衛の宇宙活動を一つの計画に統合し、衛星を使った接続性を中核的な優先事項に据えた。
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ここには、欧州に広がる問題意識が表れている。衛星通信は消費者向けブロードバンド市場にとどまらず、レジリエンス、国家安全保障、政府機能の継続を支えるインフラでもある。海外の商用サービスが技術的に優れていたり安価だったりしても、自ら管理できる通信能力を整備・維持する意義は大きい。
課題は、構想を実際の能力へ変えること
欧州の戦略的自律性には明確な理由がある一方、実装は容易ではない。サミット、国家戦略、新たな宇宙港のいずれも、それ単独で自立的に回る宇宙エコシステムを生むものではない。
決め手となるのは、欧州各国の政府が次の4点を実現できるかだ。
- 打ち上げ・衛星サービスについて、信頼できる複数年調達を約束すること。
- 整備計画を定常運用へ移し、継続的な打ち上げを実現すること。
- 投資の分散を避けられる程度に、各国と欧州全体の優先順位を調整すること。
- 協力の扉を閉ざさず、孤立ではなく依存低減として自律性を追求すること。
パリでの米企業の不参加は、外部事業者への依存が大きすぎる場合の政治的リスクを印象付けた。
17 欧州の対応は、打ち上げインフラ、安全な通信、産業能力、公的需要を積み上げる能力構築として捉えるのが適切だ。これは米国の宇宙エコシステムをすぐに複製しようとする試みではなく、長期的にバランスを取り直す取り組みである。