ウクライナ当局が2026年9月のヤルタ欧州戦略(YES)会議で発した警告は、単に「冬に電力事情が厳しくなる」というものではない。戦争の維持費が急増する一方、ロシアによるインフラ、産業、輸出ルートへの攻撃が、戦費を賄う国内の収入源まで縮小させる――そうした悪循環が進んでいる、という訴えだった。
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戦争の「1日約1億9000万ドル」という負担
ウクライナ議会の予算委員長、ロクソラナ・ピドラス氏によると、2026年における戦争の1日当たりの国家負担は約1億9000万ドル。2024年の約1億4000万ドルから増えた。この数字には、海外パートナーが現物で供与する兵器などの軍事支援は含まれない。
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増加の背景には、インフレ、軍の規模拡大、弾薬消費の増大、戦没軍人の遺族への給付の増加がある。
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2026年最初の8カ月で、ウクライナは安全保障・防衛に約420億ドルを支出した。一方、国内歳入と国内での借り入れで調達できたのは約390億ドルにとどまった。いずれも現物の海外軍事支援を除く数字だ。
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ピドラス氏は、戦費が高騰した結果、従来のように国内資源だけで基礎的な軍事費を全額賄うことが難しくなったと説明した。軍人給与を含む資金需要の穴を埋めるためにも、国際的な資金支援が必要になっている。
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冬を前に深まる二重の圧力
ロシアの攻撃は、物理的なインフラを破壊するだけでなく、ウクライナの税収力も圧迫している。2026年最初の8カ月の国内歳入は計画を13億5000万ドル下回り、その不足額の約4分の1は8月だけで生じたとピドラス氏は述べた。
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オレクサンドル・クラフチェンコ経済相は、ロシアの攻撃による2026年のインフラ・固定資産への直接被害を約100億ドルと推計した。さらに、攻撃と黒海港の事実上の封鎖がもたらす経済全体への影響は、GDPを約1.5ポイント押し下げる規模だと見積もった。
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ロイターによれば、首都キーウでは2週間を超えてほぼ連続的なドローン攻撃が続き、市民生活に加え、政府と企業の活動も妨げられた。
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問題は、エネルギー、物流、生産設備への攻撃が「修復費用の増加」と「将来の税収減」を同時に引き起こす点にある。防衛、行政サービス、越冬対策を並行して維持するための財政余地が、その分だけ狭まる。
黒海輸出の停滞、約400億ドルの収入が危機に
ウクライナの黒海経由の主要輸出品は、農産物と鉄鋼製品だ。当局者は、南部で攻撃が激化したことで港湾が事実上機能不全に陥り、約400億ドルの輸出収入が危険にさらされていると警告した。
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戦時経済にとって輸出の停滞は、貿易収入の損失だけにとどまらない。雇用と納税を担う企業の体力を削り、外貨流入を細らせ、輸入や復旧に必要な資金の確保も難しくする。予算の未達は、軍事面の圧力と経済面の圧力が密接に結び付いていることを示している。
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対応策は修復、分散化、海外資金の確保
当面の優先課題は、冬の間も重要インフラを稼働させることと、追加資金を確保することだ。ロイターが報じた対策には、非軍事支出の延期・削減、西側からの追加支援の要請、エネルギー・物流網の分散化、国境を越える輸送の改善、企業向けの政府保証付き戦争リスク保険の検討が含まれる。
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復旧では、防空能力の強化、電力システムの修理と分散化、物流の強靱化、農産物の保管・資金繰り支援、損壊した工業施設と港湾の将来的な復旧が重視されている。
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国際社会もエネルギー支援を進めている。北欧・バルト8カ国(NB8)は冬を前に、ウクライナのエネルギー部門向けに追加の資金、資材、技術支援を確保するため取り組む方針を示した。
凍結ロシア資産は重要な選択肢、ただし未解決
ウクライナは、防衛と復興を支える資金として、欧州に凍結されているロシア国家資産の活用を求め続けている。EUにはロシア中央銀行の資産が2000億ユーロ超凍結されているが、元本そのものを使うことには異論があり、ベルギーは懸念と反対姿勢を示している。
EUは凍結されたロシア中央銀行資産から生じる棚ぼた利益をウクライナ防衛に用いる措置を進めている。ただし、利益の活用と、元本を没収・支出することは別の問題であり、後者については合意に至っていない。
YES会議の警告が意味すること
当局者の中心的なメッセージは明確だ。軍事支出、破壊されたエネルギー設備、滞る輸出、弱まる財政収入が互いを悪化させる冬が近づいている。1日約1億9000万ドルという戦費は、防衛予算の大きさを表すだけでなく、戦争と経済混乱の複合コストが国内の資金調達能力を上回り始めていることの指標でもある。
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提供された報道は、YES会議で新たな世界銀行パッケージが発表されたという具体的な内容を裏付けてはいない。一方、ロイターは、パートナー国がモスクワによるウクライナのエネルギー施設、インフラ、食料供給ルートへの攻撃停止を確実にできるなら、ウクライナはロシアへの攻撃を停止する用意があると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が述べたと報じた。
この立場は、YES会議で示された冬への懸念と重なる。エネルギーと重要インフラを守れるかどうかは、市民生活だけでなく、経済活動と戦争継続を支える国家財政にも直結する。