Threadsはイーロン・マスク氏のXに対する有力な対抗サービスへ成長した。ただし、マーク・ザッカーバーグ氏が「すでにXより大きいかもしれない」と語ったことは、総合的な利用規模や影響力での完全勝利を意味するわけではない。比較する指標によって結論が変わるからだ。
Metaは6月、Threadsの月間アクティブユーザー数(MAU)が5億人に達したと発表した。Xの競合として開始してから約3年での到達となる。
1 その後のインタビューでザッカーバーグ氏は、Threadsは「現時点でXより大きいか、まもなくそうなる」との認識を示した。
4
「Xより大きい」は何を意味するのか
発言の土台となるのは、ThreadsのMAU5億人だ。SpaceXの目論見書に基づく推計では、XのMAUは約5億5,000万人とされる。
12 この数字だけを比べれば、ThreadsがXと肩を並べる規模に達したという見方には一定の根拠がある。
もっとも、「大きい」の定義は一つではない。MAU、日間アクティブユーザー数(DAU)、ウェブ訪問数、滞在時間、投稿者やクリエイターの活動度は、それぞれ異なる利用実態を示す。同じ指標で僅差でも、サービス全体としてどちらが優位かまでは決められない。
Instagram連携と非開示データが比較を難しくする
Threadsの急成長を考えるうえで、Instagramとの結び付きは欠かせない。Metaの既存SNSの利用者基盤を起点に拡大できるため、単独サービスであるXとは異なるスタート地点にある。この深い連携がThreadsの伸長を支えた重要な要因だと報じられている。
3
一方、XはMAUについて、Threadsと直接比べられる数値を定期的に公表していない。そのため外部推計や、関連企業の資料で示された数字が比較に使われる。約5億5,000万人という数字も、Xの定例的な利用者開示ではなく、SpaceXの目論見書に関連したものだ。
12
利用データを見ても、状況は一様ではない。Similarwebによる第三者推計では、2026年1月時点の世界のiOS・AndroidにおけるモバイルDAUは、Threadsが1億4,150万人、Xが1億2,500万人だった。 しかしウェブではXが大きく上回り、1日当たりのウェブ訪問数は約1億4,540万回に対し、Threadsは約850万回とされた。
つまりThreadsはモバイルの一部指標で先行し、月間リーチでもXに迫っている可能性がある。その一方で、ブラウザ中心の利用や、特定の熱量が高いコミュニティでは、Xの存在感がなお強いとみられる。
それでもザッカーバーグ氏がXに投稿する理由
ザッカーバーグ氏は、ThreadsとXの双方に同じ内容を投稿する理由について、優劣を付けるためではなく、それぞれ異なる利用者層に届けるためだと説明している。
4
8
特にMetaがAI事業を拡大する局面では、Xの価値は残る。XにはAI、最新技術、開発者向けツール、モデル公開を追う人々が集まる目立つ議論の場があり、MetaがAI関連の発表を届けるチャネルとして機能する。
7
配信戦略として見れば、両サービスを使うのは合理的だ。ThreadsはMetaが主流のリアルタイムSNS市場で直接勝負するためのサービスであり、Xは独自色の強い、影響力ある利用者層に届く追加の発信先でもある。
AIエージェント「Muse」が示すMetaの次の狙い
ThreadsとXの競争は、Metaとマスク氏の事業がぶつかる領域の一部に過ぎない。AIでもMetaは、マスク氏のxAIを含む主要AI企業と競合している。
Metaが発表した個人向けAIエージェント「Muse」は、その戦略をSNSのフィード競争から広げるものだ。Museは、チャットボットのように質問に答えるだけでなく、現実のタスクを実行することを想定したエージェントとして紹介された。
6 Metaは大規模なSNS・メッセージングサービスの利用基盤を通じ、既存サービスの利用者へAI製品を届けられる。
この戦略では、リーチと信頼の両方が問われる。SNSで利用者の注意を集めれば、新たなAI製品を広く届けやすくなる。しかし、利用者に代わって行動するAIエージェントでは、信頼性やプライバシーがプロダクト体験の中核になる。
結論:ThreadsはXと同じ土俵に立ったが、勝敗はまだ一言で言えない
ザッカーバーグ氏の発言は、強気ではあるものの条件付きの評価として受け取るのが妥当だ。ThreadsのMAU5億人はXと同じ規模帯に入ったことを示し、指標によってはThreadsが上回る可能性もある。
1
4
ただし、ThreadsがXをあらゆる意味で超えたと証明するものではない。Instagramを背景とする配信力、Xの公開データの限界、モバイルとウェブで大きく異なる利用行動により、単一の数字での比較はできない。
ザッカーバーグ氏自身がXでの発信を続けていることも、その現実を物語る。競合するサービスであっても、届く相手は同じではない。MetaのAI戦略を考えるうえでは、ThreadsとXのどちらも依然として意味を持つ。