市場が9月17~18日の金融政策決定会合で、政策金利を1%から1.25%へ0.25%引き上げるシナリオを本線とみているのは、物価・賃金の動き、日銀の発信、円相場への警戒、そして海外からの異例の圧力が同時に強まったためです。
ただし、97%は市場価格から読まれる確率であり、日銀の約束ではありません。景気の下振れ、国債市場の機能低下、金融市場の不安定化が生じれば、据え置きという判断はなおあり得ます。
政策顧問の見通し変更が「政治的な壁」を低くみせた
高市早苗首相の経済顧問で、急速な金融引き締めには慎重と受け止められてきた会田卓司氏は、次の利上げ予想を2027年1月から9月へ前倒しした。さらに、9月後は2027年1月まで四半期ごとの利上げを見込む姿勢を示している。
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この変化は、利上げへの政治的な抵抗が従来考えられていたほど強くない、との市場の受け止めを促した。単発の利上げではなく、金融政策の正常化が続く可能性を織り込む材料になったといえる。
日銀内の発信は明確にタカ派寄りへ
日銀の高田創審議委員は、強まるインフレ圧力に対応するため、利上げは「機動的」に行うべきだと発言した。市場が想定してきた「半年に1回程度」という固定的なペースに縛られるべきではないとの趣旨で、利上げ幅の拡大や連続利上げの可能性も否定していない。
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植田和男総裁も、9月会合では物価の上振れリスクを特に注視しながら利上げの是非を議論する考えを示した。
3 日銀が「次の利上げはまだ先」と市場をけん制する局面ではなくなったことが、織り込みを押し上げた。
物価と賃金が、1%据え置きの説明を難しくしている
日銀は7月、基調的なインフレ率が2%の物価安定目標を上振れる可能性に初めて言及した。
4 物価上昇の粘着性に加え、賃上げの広がりも続くなか、政策金利1%を「十分に抑制的」と説明し続けるハードルは上がっている。
とりわけ円安は、エネルギーや輸入品の価格を通じて家計・企業のコストを押し上げる。円安由来の物価圧力を抑える観点でも、利上げを急ぐ論拠が強まっている。
介入ではなく利上げ観測で進んだ円高
円は2日間で対ドル2%超上昇し、一時は1ドル=155.28円前後まで上昇した。日銀の当座預金データからは、焦点となった日に当局による円買い介入があったとは確認されていない。したがって、この円高は介入だけではなく、日銀の利上げ観測を市場が再評価した影響が大きいとみられる。
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急速な円高は、円キャリー取引の脆弱性も浮き彫りにする。低金利の円で資金を調達し、より高い利回りの資産に投資する取引では、円高局面で円売りポジションの買い戻しが起こりやすい。これが円高を増幅し、株式や海外債券など他の資産にも変動を広げる可能性がある。
10年国債利回り3%は、利上げを後押ししつつ難題も突き付ける
新発10年物国債利回りは3%に達し、1996年以来の高水準となった。
6 長期金利の上昇は、投資家がインフレ、国債の供給増、日銀による市場支援の後退に対して、より大きな上乗せ利回りを求めていることを示す。
一方で、長期金利の急上昇は国の利払い負担や債券市場の流動性にとってリスクでもある。日銀には政策金利を引き上げることと、流動性供給を急激に引き揚げないことを両立させる難しさがある。
米財務長官の発言が、見送るコストを高めた
米国のスコット・ベッセント財務長官は植田総裁との会談で、円安への対応に向けた「断固とした」金融政策措置を支持し、インフレ期待を安定させる政策を促した。
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これは日銀への正式な指示ではなく、日銀の独立性を変えるものでもない。ただ、弱い円や輸入インフレを放置しているように映る場合、対外的・外交的な負担が増すという意味で、市場は無視しにくい要因と受け止めている。
注目は10月14日――次の論点は政策金利より国債買い入れか
日銀は6月の計画で、長期国債の月間買い入れ額を2026年4~6月期以降、原則として四半期ごとに約2000億円ずつ減らし、2027年4~6月期には月間約2兆円とする方針を示した。また、長期金利は原則として市場で形成されるべきだとの考えも掲げている。
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10月14日の市場操作に関する会合では、この減額方針を維持するのか、金利の無秩序な変動を抑えるために買い入れ額や年限別の配分を調整するのか、あるいは流動性供給をより機動的に使うのかが焦点になり得る。
この会合は、それ自体がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を復活させるための予定された決定の場ではない。それでも、日銀が国債保有を縮小する過程で、どの程度の金利変動を許容するのかを示す重要な機会となる可能性がある。
市場にとっての整理は明快だ。9月の利上げは政策金利の正常化路線を確認するイベントであり、10月は日銀が国債買い入れを減らすなかで、債券市場の変動をどこまで受け入れるのかを測るイベントになる。