金価格の下落を受けても、機関投資家のすべてが金から離れたわけではない。アムンディ、ピクテ・アセット・マネジメント、ロベコ・インスティテューショナル・アセット・マネジメント、フィデリティ・インターナショナルは、年初に減らしていた金の保有を再び積み増している。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制を重視するタカ派姿勢を続けるなかでも、金を持つ長期的な理由は残るとみているためだ。
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高値追いではなく、調整局面での買い戻し
金は1月に1トロイオンス当たり約5,600ドルの最高値をつけた後、下落した。欧州最大の資産運用会社であるアムンディは金地金を買い、年末までに1オンス5,000ドルへ戻ると見込む。
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この水準は1月の高値をなお下回る。それでも同社の見方は、今回の下落が金の保有意義の崩壊ではなく、戦略的な配分を再構築する機会だということを示している。
運用会社が重視するのは、金を利息や配当を生む資産としてではなく、ポートフォリオの分散・保険として使う発想だ。材料として挙げられているのは、インフレの長期化懸念、中央銀行による需要、財政赤字、地政学的な不確実性、そしてドルへの依存が低下する可能性である。
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ロベコのポートフォリオマネジャー、アーノウト・ファン・レイン氏は、金はもはや専門的な投資対象ではなく、より広く受け入れられたポートフォリオの保有資産になったとの趣旨を述べている。
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タカ派FRBでも強気論が消えない理由
一般に、FRBのタカ派姿勢と高い実質金利は金にとって逆風だ。金地金には利息がないため、実質金利が上がるほど保有の機会費用が増す。追加利上げ観測やドル高が強まれば、金価格には改めて下押し圧力がかかり得る。
それでも買い戻しを進める運用会社は、この逆風の相当部分が最高値からの調整にすでに織り込まれたと考えているようだ。金利が重要でなくなったという話ではない。むしろ、より長い投資期間で見れば、金を保有する構造的な理由が金利という循環的な逆風を上回り得る、という判断である。
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フィデリティの動きは、その違いをよく表している。フィデリティ・インターナショナルのあるポートフォリオマネジャーは、FRB政策を巡る不確実性を理由に、3週間でファンドの金配分を倍増させ、自己設定した上限の5%まで引き上げた。ドルの安全資産としての地位がさらに弱まるなら、上限の引き上げも検討する考えを示した。
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アムンディの「年末5,000ドル」は何を意味するのか
アムンディによる年末1オンス5,000ドルという見通しは、同社固有の予想であり、市場全体のコンセンサスや価格上昇の保証ではない。
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ただし、金融政策が引き締め的なままでも、金の戦略的保有を支える要因は持続し得るという判断を反映している。一方で、金利見通し、実質金利、ドル相場、投資家のポジションの変化が短期価格を動かすリスクは残る。
投資家にとって重要なのは、長期の資産配分として金を保有する根拠と、短期の価格予想を区別することだ。両者が同じ方向を示す場合でも、動くタイミングまで一致するとは限らない。
金鉱株には何が起こり得るか
金鉱株には、金価格に対する事業上のレバレッジがある。販売する金の実現価格が上昇し、採掘・維持コストが比較的安定すれば、1オンス当たりの増収が利益率やキャッシュフローの大幅な拡大につながる可能性がある。金価格が下がる場合は逆方向に働く。
ただし、この関係は完全な連動ではない。生産量、鉱石品位、回収率、エネルギー費・人件費、設備投資、ヘッジ、資金調達、操業地域の政治・規制環境なども、各社の業績を大きく左右する。
エルドラド・ゴールド:価格上昇だけでなくコストと計画の遂行が鍵
エルドラド・ゴールドは2026年第2四半期に、10万2,691オンスの金を平均実現価格1オンス4,379ドルで販売した。SkouriesおよびMcIlvenna Bayの両案件を除く生産量、現金コスト、総維持コスト(AISC)の見通しは維持している。
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金価格の持続的な上昇は1オンス当たりの収益を支えるが、投資成果はコストの管理と、生産・開発計画を確実に実行できるかにも左右される。
パン・アメリカン・シルバー:金と銀、両方への感応度
パン・アメリカン・シルバーの収益性は、金だけでなく銀の価格にも影響を受ける。同社は2026年通年の金生産量が、70万~75万オンスのガイダンスの下限寄りになる見通しを示した。また、生産への影響を理由に、金部門のAISCはガイダンスの上限寄りになるとした。
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したがって同社株は金相場に加え、銀価格、生産目標の達成度、コスト見通しにも左右される。
オーラ・ミネラルズ:成長余地と企業固有リスク
オーラ・ミネラルズは、生産量と売上高の伸びを報告しており、金価格への感応度も大きい。ただし、金鉱株を金地金の代替物とだけ捉えるべきではない。同社の事例が示すように、生産計画の実行と金ヘッジの影響は、報告業績を大きく変え得る。
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金を買う側のリスク
金をヘッジ資産たらしめる要因は、同時に価格変動の大きさにもつながる。ドル高、実質金利の上昇、あるいはFRBの見通しがさらにタカ派に傾くことは、利息を生まない金の短期的な魅力を損なう可能性がある。
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市場コメントで示されるテクニカルな価格水準は、経済予測ではなくリスク管理上の目安として扱うべきだ。市場参加者がどの水準に注目しているかを示す助けにはなるが、金の本源的な価値を決めるものでも、支持線・抵抗線が必ず機能することを保証するものでもない。
まとめ
大手運用会社が金の保有を再び増やしているのは、FRBのタカ派姿勢を無視しているからではない。インフレ、財政不安、地政学的ショック、ドルを巡る不確実性に備えるための「ポートフォリオ保険」を、価格下落を機に戻そうとしているからだ。アムンディの年末5,000ドルという見通しは、その建設的な見方を象徴している。
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金鉱株を検討する場合、機関投資家の金需要の再燃は追い風になり得る。しかし判断材料はそれだけではない。金価格に加え、コスト、生産量、ヘッジ、資本規律、操業国のリスクが、金価格の変動のうちどれだけが企業利益に届くかを決める。