Qualcommは、モバイルゲームにおけるAI活用の置き場所を変えようとしている。新しいAdreno Neural Fusionでは、AIによる画像処理をGPUの外で別途こなすのではなく、描画処理が行われるGPUそのものに組み込む。中核となるのが、3スライス構成のGPUに1基ずつ配置される専用AI演算ブロック、Adreno Matrix Coresだ。
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狙いは、AI超解像(低い内部解像度で描画した映像をAIで高精細化する処理)とフレーム生成を、より低い遅延と電力で実行することにある。
3つのGPUスライスに、Matrix Coreを1基ずつ
次世代Adreno GPUは3つのGPUスライスで構成され、各スライスに専用のMatrix Coreが割り当てられる。Matrix Coreは、高度なAIモデルをグラフィックス・パイプライン内で直接実行するための演算ユニットだ。
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超解像やフレーム生成では、描画済みフレーム、動きの情報、タイル、レンダリング途中のデータなどを扱う。こうした描画に隣接したデータをGPU内で処理できれば、別の処理ブロックとの間でデータを移動・同期させる回数を減らせる。Qualcommは、この構成により遅延と電力面のオーバーヘッドを抑えられるとしている。
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Neural Fusionで何が変わるのか
Adreno Neural Fusionは、次の要素を単一のグラフィックス・ワークフローに統合するQualcommの名称だ。
- ニューラル処理
- AI超解像
- フレーム生成
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実際のゲームでは、内部解像度を抑えて描画した後、AIモデルで最終映像を再構成する使い方や、レンダリング済みフレームのデータを基に中間フレームを生成する使い方が考えられる。すべてのピクセルやフレームを従来どおりに描画する負担を減らしつつ、見かけ上の精細感や滑らかさを高めるための技術である。
Qualcommは、よりシャープで安定した映像とともに、ちらつき、シマーリング(細かな部分のきらつき)、ゴーストといったアーティファクトの低減をうたう。
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13 ただし、画質や操作遅延はゲーム側の実装、AIモデル、端末の放熱設計などに左右される。タイトル別・端末別の独立した検証は、まだこれからだ。
18MBのAdreno HPMが担う役割
GPUには、**18MBのAdreno High Performance Memory(HPM)**も搭載される。これはGPUの近くに配置された低遅延メモリーで、タイルベースのレンダリング用データ、フレームバッファー、コンピュート処理のデータなどをローカルに保持するためのものと説明されている。
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システムメモリーへ何度もアクセスする必要が減れば、メモリー帯域の消費、待ち時間、エネルギー消費を抑えやすい。特に中間画像データを繰り返し利用するAI描画では重要になる。報道によると、この3スライスGPUのピーククロックは1.45GHzで、先代設計の1.2GHzから引き上げられた。電力効率は約12%改善とされる。
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「最大40%低消費電力」はどう読むべきか
Qualcommは、該当するAIレンダリングの利用シーンで、従来ソリューション比でGPU消費電力を最大40%削減できるとしている。
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ただし、これはすべてのゲーム、スマートフォン、解像度設定、リフレッシュレート、温度条件で同じだけ電池持ちが伸びることを意味しない。実際の効果は、ゲームの対応状況、利用するAIモデル、冷却性能、ボトルネックがGPU・CPU・メモリーのどこにあるかによって変わる。製品版の端末と対応ゲームでの第三者検証が出るまでは、ベンダーが示した設計上の目標・測定値として受け止めるのが妥当だ。
UnityとUnreal Engineをサポート
Qualcommによれば、Adreno Neural FusionはUnityとUnreal Engineでサポートされる。
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ゲームエンジン側での対応は、開発スタジオが個別のグラフィックス統合を行う負担を下げる可能性がある。ただし、エンジンが対応していることと、すべてのゲームがこの機能を採用すること、あるいは同程度の画質・性能向上を得られることは別の話だ。
次世代Snapdragon全体ではどう位置付くか
今回のGPU発表は、Qualcommが予告した次世代Oryon CPUとFlexCacheの発表と並ぶものだ。Oryon CPUは最大5GHzに到達するとされ、FlexCacheは異種CPUコアが動的に割り当てられる共有キャッシュプールへアクセスできるキャッシュ設計である。大きなワーキングセットをメモリーへ退避させず、キャッシュ内にとどめることを狙う。
全体としては、描画に密接なAIはGPUとMatrix Coresで処理し、CPUとキャッシュ機構はアプリの応答性や変動する処理負荷を支える、というヘテロジニアス・コンピューティングの構想が見える。Qualcommは9月22日から24日に米ハワイ州マウイでSnapdragon Summitを予定しており、Hexagon NPUを含むプラットフォームの詳細が示される見込みだ。
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まだ分からないこと
アーキテクチャの方向性は示された一方、現時点では次の点が未確定だ。
- このAdreno設計を採用する最終的なSnapdragon製品
- Neural Fusionを有効にして出荷されるゲーム
- タイトルごとのAI超解像・フレーム生成の画質、遅延、性能
- スマートフォンの熱制約下で長時間動作させた際に、省電力効果がどこまで維持されるか
- GPU内のMatrix Coreによる処理と、SoC内の他のAI処理ブロックとの役割分担
要点は明快だ。QualcommはAIレンダリングを外付けの追加機能ではなく、GPU本来の機能へ近づけようとしている。本当の評価は、対応ゲームがこの設計を継続的な画質向上、滑らかなプレイ、そして測定可能な電力削減へ結び付けられるかどうかで決まる。