8月のビットコイン(BTC)反発では、高額のBTCを保有するウォレットが大きく増えた。もっとも、この上昇は新たに個人の資産家が大量に生まれたという単純な話ではない。米国の金融・財政政策をめぐる不安、ドル安を背景にした「デベースメント取引」、先物市場でのショートスクイーズ、そして現物ビットコインETFへの機関投資家マネーが重なった結果だ。
100万ドル超のウォレットはどれだけ増えたのか
BitInfoChartsのデータをもとにした集計では、100万ドル相当を超えるBTCを保有するウォレットは、7月末の111,846から8月31日には123,482へ増加した。増加数は11,636、増加率は10.4%に達する。
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1000万ドル超のウォレットも、14,009から15,584へ11.2%増えた。
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この背景には、BTC価格そのものの上昇がある。ビットコインはラリーの過程で約23%値上がりし、8万ドルを上回る3カ月超ぶりの高値を付けた。
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7 同じ数量のBTCを保有していても、ドル建て評価額が上昇すれば、100万ドルや1000万ドルの区分に入るウォレットは増える。
上昇を動かした「3つのエンジン」
1. 米国債の買い戻しとデベースメント取引
8月19日、米財務長官スコット・ベッセント氏は、長期国債の買い戻し規模を拡大する方針を示した。長期金利を抑える狙いの措置だったが、市場では米国の財政赤字や債務、政策運営への懸念がむしろ意識された。
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その結果、ドルが弱含み、金やビットコインなど、供給が限られる、あるいは通貨価値の下落に対するヘッジとみなされる資産へ資金が向かう「デベースメント取引」が再燃した。
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ここでいうデベースメント取引とは、政府債務の膨張や財政支出への懸念から、将来的な通貨価値の目減りに備えて金やビットコインなどの資産を買う投資行動を指す。
2. ショートポジションの強制清算
政策をめぐる材料は、デリバティブ市場で積み上がっていた弱気ポジションとぶつかった。8月19日には、1日で16億ドル超のポジションが清算され、特にビットコインの上昇で損失が膨らんだショートポジションの買い戻しが相場をさらに押し上げた。
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こうしたショートスクイーズでは、価格上昇によって売り方が損失確定を迫られ、その買い戻しがさらなる上昇を生む。したがって、初動の一部は現物の新規需要だけでなく、レバレッジ取引の巻き戻しによって増幅された可能性がある。
3. 米国の現物ビットコインETFへの資金流入
上昇が単なる短期的な清算相場で終わらなかった理由として、米国上場の現物ビットコインETFへの資金流入も挙げられる。13本のファンドは、8月24日までの1週間に合計19億2,000万ドルの純流入を記録し、10カ月ぶりの大きさとなった。
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ETFは、暗号資産取引所を直接利用せずに機関投資家や伝統的な運用資金がBTCへアクセスする経路だ。この規模の流入は、今回の値動きがレバレッジの巻き戻しだけでなく、現物に近い継続需要にも支えられていた可能性を示す。
Bernstein、BlackRock、VanEckの材料は?
Bernsteinは、ビットコインが2027年半ばまでに15万ドル、次のサイクルのピークとなる2029年には約30万ドルに達するとの見通しを示した。デベースメント取引の拡大が、ビットコインにとってマクロ環境上の追い風になり得るという見方だ。
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BlackRockについて、提供された情報から確認できる強気材料は、同社を含む機関投資家が現物ETFを通じてビットコインへアクセスできることと、業界全体で19億2,000万ドルの週間純流入が確認された点だ。
4 これは、相場が単なる先物主導の反発から、より幅広い機関投資家需要へ広がっている可能性を示す。ただし、提供資料にはBlackRock独自の価格目標や特定のテクニカル指標は示されていない。
VanEckについては、ビットコインを希少性のある資産、また通貨価値の下落に対する潜在的なヘッジとみなす、より広い機関投資家の投資仮説が強気材料となる。ただし、今回の資料で確認できるVanEckの中旬時点の分析は、価格の安定、低下した実現ボラティリティ、先物市場の状況を扱ったものであり、このラリーに関する具体的な価格目標や決定的な指標を裏付ける十分な証拠はない。
「ビットコイン長者」の人数とは限らない
ウォレット数の急増を、そのまま個人のビットコイン長者の増加と解釈することには注意が必要だ。
1つの個人や企業が複数のウォレットアドレスを管理することは珍しくない。一方、暗号資産取引所、ETFのカストディアン、企業などが管理する大口のオムニバス型ウォレットは、多数の実質的な保有者の資産をまとめて保管している場合がある。
つまり、100万ドル超のウォレットが123,482に増えたという数字は、アドレス単位の集計であって、個人投資家の人数を表すものではない。価格上昇によって評価額の区分を超えたウォレットが含まれる点にも留意したい。
上昇を阻む可能性がある要因
8万1,000~8万6,000ドルの売り圧力
ビットコインは、8万1,000~8万6,000ドル付近に厚い供給・抵抗帯を抱えている。過去にこの水準より高い価格で購入した保有者が、含み損を解消するために戻り局面で売却する可能性があるためだ。
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ETF資金の流出
ETF需要は強力だが、安定しているとは限らない。13本の米国上場ETFは、8月10日の週に3億8,970万ドルの純流出を記録しており、これは6週間ぶりの大きな週間流出だった。
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そのため、流入が再び流出へ転じれば、相場を支える重要な限界買い手が弱まる可能性がある。強い流入が続くかどうかは、ラリーの持続性を判断する重要な材料になる。
先物ポジションと利益確定
先物の未決済建玉(オープン・インタレスト)の減少や、無期限先物の資金調達率がマイナスになることは、市場参加者の確信が弱く、弱気ポジションが残っている可能性を示す。こうした状態は、価格が上がれば再びショートスクイーズを起こす余地になる一方、現物買いが鈍れば需要の脆さを示すシグナルにもなり得る。
また、短期間で約23%上昇し、高額ウォレットの数も急増したことで、短期保有者や大口投資家、ETF投資家が利益を確定する動きが出やすくなる。特に8万1,000~8万6,000ドルの抵抗帯では、こうした売りが上値を抑える可能性がある。
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結論:本物の需要か、もう一段の踏み上げか
8月のビットコイン上昇には、財政・通貨への懸念を背景とするマクロ要因、ショートポジションの清算、現物ETFへの機関投資家資金という、複数の推進力があった。100万ドル超・1000万ドル超のウォレット数の増加も、相場の回復を映す指標の一つだ。
ただし、ウォレット数は個人の富裕層の人数ではなく、価格上昇の影響も受ける。今後の上昇を確認するには、ETFへの継続的な資金流入、現物市場の需要、そして8万1,000~8万6,000ドルの供給帯を明確に突破できるかが焦点になる。ショートスクイーズだけに依存した再上昇であれば、反落リスクはなお残る。