フィル・シラー氏がアップルのApp Storeと製品発表イベントの監督を退くことは、単なる担当変更ではない。スティーブ・ジョブズ氏とティム・クック氏の両時代を支えたベテラン幹部が、ジョン・ターナス新CEOの就任に合わせて、企業の顔ともいえる2つの役割を次世代へ引き継ぐ動きだ。アップルにとっては、経営陣の世代交代が目に見える形で進んでいることを示す節目といえる。
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シラー氏は退社するのか
シラー氏は1987年にアップルへ加わり、長年にわたって製品マーケティングを担ってきた。同社の製品発表やブランドメッセージを代表する存在として、ジョブズ時代からクック時代まで、アップルの対外的な発信を支えた幹部の一人だ。
2020年にはワールドワイドマーケティング担当上級副社長の職を離れ、Apple Fellowに就任した。Apple Fellowは、卓越した技術面またはリーダーシップ面の貢献を果たした人物に与えられる社内の特別なポジションで、通常の事業部門を運営する役職とは異なる。
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今回もシラー氏はアップルを離れるわけではなく、Apple Fellowの肩書きを維持し、具体的な内容が明らかにされていない取り組みに関わるとされている。したがって、現時点で確認できるのは「退社」ではなく、運営上の責任を大幅に絞り込むことだ。
一方、社内では今回の移行が、シラー氏の最終的な引退に向けた「大きな一歩」になる可能性があるとの見方も出ている。これはあくまで関係者の見方であり、アップルが引退予定を公表したわけではない点には注意が必要だ。
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App Storeはサービス部門へ移管
App Storeの責任は、マーケティング領域からエディ・キュー氏が率いるサービス部門へ移される。キュー氏はかつてApp Storeを担当していた人物でもあり、今回の変更によって、App Storeはアップルのサービス事業により直接組み込まれる形になる。
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日々の運営は、アップル在籍14年のカーソン・オリバー氏が担当する。アプリの配信、第三者マーケットプレイス、Apple Arcadeなどを含む実務をオリバー氏が管理する体制だと報じられている。
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App Storeは、アプリ配信の窓口であるだけでなく、アップルのサービス収入や規制対応にも関わる重要な事業だ。マーケティング責任者の個人的な監督下に置くのではなく、サービス部門の中核として扱う今回の変更は、事業の性格に合わせた組織上の整理と見ることができる。
製品発表イベントは広報部門の管轄に
アップルの製品発表イベントについては、ノラ・ワインスタイン氏が、広報責任者クリスティン・ヒュゲット・クエイル氏の下で指揮を執る。新体制で最初の大きな舞台となるのは、9月9日に予定されているイベントだ。
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これは、イベントの演出や実行をシラー氏個人の stewardship(統括)から切り離し、アップル全体のコミュニケーション機能に組み込む動きでもある。アップルの発表会は製品紹介にとどまらず、企業メッセージやブランドイメージを世界に伝える場でもあるため、広報部門との連携を強める意味は小さくない。
クック時代の幹部体制は大きく変化
シラー氏の役割変更は、単独で起きたものではない。元最高執行責任者(COO)のジェフ・ウィリアムズ氏、環境分野を率いたリサ・ジャクソン氏、元最高財務責任者(CFO)のルカ・マエストリ氏、デザイン部門のアラン・ダイ氏、AI部門のジョン・ジャンナンドレア氏、決済部門のジェニファー・ベイリー氏、リテール部門のポール・ミード氏らを巡っても、役職変更や退任が相次いでいる。
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その結果、ターナス氏が引き継ぐのは、クック氏が長年築いてきた比較的安定した幹部チームではない。複数の主要ポストが入れ替わった、再編後の経営陣だ。シラー氏の移管は、この大きな組織転換を象徴する最後の動きの一つと受け止められる。
ターナス新CEOに求められること
9月1日、ターナス氏がCEOに就任し、アップルの取締役会にも加わる。クック氏はエグゼクティブチェアマンに移行する。
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ターナス氏は、長年ハードウェアエンジニアリング部門を率いてきた社内出身者だ。Macの立て直しを含む製品開発への貢献で評価されており、アップルのハードウェアを深く理解していることが強みとなる。
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ただし、次のCEOにとって最大の課題は、ハードウェアの強みだけではない。人工知能(AI)を製品やサービスにどう組み込み、競争が激化するAI市場でアップルらしい体験を打ち出すかが問われる。ターナス氏は、製品開発の専門性をAI時代の事業戦略へと広げなければならない。
まとめ:退場ではなく、アップルの再設計
シラー氏の役割縮小は、アップルから長年の功労者が突然姿を消すという話ではない。Apple Fellowとして知見を残しながら、App Storeはサービス部門へ、製品発表イベントは広報部門へと、それぞれの機能に合った組織へ移される。
同時に、この動きはジョブズ/クック時代を支えた運営上の役割が、新しい幹部へ引き継がれていることを示す。アップルは今、サービス事業、企業コミュニケーション、そしてAI時代のハードウェア戦略をより明確に分けて再構成しようとしているように見える。
ただし、シラー氏の引退は現時点で未確認だ。アップルが公に示しているのは、同氏がApple Fellowとして残り、具体的な取り組みに携わるという点までである。
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