グレーマーケットでIPO価格を大きく下回る
SHEIN(香港証券取引所コード:00625)は、9月1日の正式上場を前に香港のグレーマーケット(上場前に証券会社などが提示する非公式の参考取引市場)で売り込まれた。
8月31日時点の複数の証券会社の気配値は、IPO価格48.56香港ドルに対しておおむね13〜14%安い水準だった。Bright Smartでは41.80香港ドル、Phillipでは42.12香港ドル、Futuでは42.20香港ドルが示された。
15 別の取引プラットフォームでは一時40.04香港ドルまで下落し、IPO価格を約17%下回った。
グレーマーケットの値動きは正式上場後の株価を保証するものではない。しかし、上場前からこれほどディスカウントされたことは、投資家がSHEINの成長余地や利益率に慎重になっていることを示すシグナルと受け止められた。
IPO価格、調達額、評価額は?
SHEINは約2億8000万株を1株48.56香港ドルで売り出し、約136億香港ドル(約17億ドル)を調達した。これに基づく企業評価額は約265億ドルとなる。
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当初の想定価格帯は47.60〜49.50香港ドルで、上限の場合の調達額は最大138.6億香港ドル、評価額は約270億ドルだった。
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9 それでも、2022年の資金調達時に付けた982億ドルの未公開市場評価額と比べると、今回の評価額は約73%低い。
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つまり今回の上場は、SHEINが資本市場への道を開いた一方で、かつての急成長企業としての評価を大幅に切り下げたIPOでもある。
AI・ロボット株との人気差が示すもの
SHEINの上場前の弱い値動きは、中国の株式市場で投資家の関心がどこに向かっているのかを映している可能性がある。現在は、低い利益率の成熟したファッション企業よりも、AI、半導体、ロボットといった将来の成長テーマに資金が集まりやすい。
象徴的なのが、メモリーチップ大手CXMTのIPOと、人型ロボットメーカーUnitreeのIPOだ。Unitreeの個人投資家向け部分は5526倍の応募超過となり、約980万人が申し込んだ。応募金額は約8.1兆元に達し、前月に実施されたCXMTのIPOで記録された個人投資家の注文額7.1兆元も上回った。
Unitreeは約61億元(約9億ドル)を調達し、評価額は約610億元(約90億ドル)となる条件で上場した。 SHEINのグレーマーケットでの低調な反応と比べると、投資家が「今後の技術革新」をどれほど重視しているかが際立つ。
もちろん、IPOの応募倍率と上場前の株価だけで企業の将来を判断することはできない。ただ、SHEINがかつて享受した急成長プレミアムが、AIやロボット関連銘柄ほど強くないことは明らかだ。
成長鈍化と第1四半期の赤字
投資家の慎重姿勢には、SHEIN自身の業績も影響している。売上高の伸び率は2023年の41.1%から2024年には20.7%に低下し、2025年は8%、売上高418億ドルとなった。
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さらに2026年第1四半期の売上高の伸びは約1%にとどまった。SHEINは同四半期に9900万ドルの純損失を計上し、前年同期の3億9500万ドルの純利益から赤字に転じた。
赤字には、米国の通商制度変更による販売減速に加え、転換社債などに関連する3億2800万ドルの一時的な公正価値調整も影響した。 したがって、四半期赤字のすべてが通常の事業運営によるものとは限らない。それでも、売上の伸び鈍化とコスト上昇が同時に進んでいる点は、投資家にとって大きな懸念材料だ。
「小口配送」が関税で揺らぐ
SHEINの競争力は、オンラインで商品を販売し、比較的安価な小口貨物を消費者へ直接届けるビジネスモデルに支えられてきた。ところが米国では、低額の小口貨物を関税なしで扱う「デミニミス」免除の終了により、米国向け配送コストが上昇した。
SHEINは関税負担を吸収するだけでなく、一部を価格に転嫁する必要があり、その結果、米国での販売が鈍化したと説明している。 価格を上げれば需要を失う可能性があり、価格を据え置けば利益率が低下するという板挟みだ。
欧州でも、SHEINにとって最大の市場の一つである地域で、電子商取引の小口貨物に対する負担が強まっている。欧州連合(EU)は7月、オンライン購入品に関わる追加的な費用を導入した。 米国で表面化した問題が欧州にも広がれば、SHEINの低価格モデルそのものが試されることになる。
さらに、中国発のECプラットフォームTemuとの価格競争も続いている。関税や物流費が上がる中で、SHEINが価格を引き上げて利益率を回復する余地は限られる。
香港IPOは「成長資金」だけではない
今回の上場は、2026年の香港市場で最大規模の新規株式発行となった。また、ニューヨークやロンドンでの上場を目指したものの進展しなかった取り組みを経て、香港で実現した市場デビューでもある。
IPOで得た資金は、世界展開、サプライチェーンと物流、技術投資、在庫管理、運転資金などに充てる計画だ。約80%を技術強化とグローバル展開に使う方針も示されており、AIやデータ分析、在庫管理システムなどが投資対象に含まれる。
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これは、単純に高成長をさらに加速させるための資金というより、関税、物流費、規制、競争激化によって揺らぐ既存モデルを立て直すための資金とみるべきだろう。公開企業となることで資金調達と株式取引の基盤を得る一方、SHEINは今後、成長率だけでなく、価格転嫁力、利益率、規制対応、サプライチェーンの持続性を市場から厳しく問われることになる。
香港上場はSHEINにとって長年のIPO計画の到達点だ。しかし、グレーマーケットの下落が示したのは、上場できたかどうか以上に、「次の成長ストーリーを投資家に提示できるか」という課題の重さである。