ブラックロックの最新レポート「Re-Underwriting Bitcoin: Still a Portfolio Diversifier After the Pullback?」は、暗号資産への大規模な投資を勧めているわけではありません。示された提案は明確で、伝統的な60/40ポートフォリオの1〜2%をビットコインに配分し、資金は株式部分から移すというものです。
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ここでのビットコインは、株式や債券に取って代わる資産でも、必ず機能するヘッジでもありません。長期のポートフォリオ構築における「戦略的な分散先」として、限定的に組み入れる可能性が論じられています。
1〜2%は株式部分から捻出
一般的な60/40ポートフォリオは、株式60%、債券40%で構成されます。ブラックロックの例では、ビットコインを1%組み入れる場合、株式59%、債券40%、ビットコイン1%となります。2%配分なら、株式58%、債券40%、ビットコイン2%です。
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債券ではなく株式から配分を移すのは、ビットコインの性質を踏まえた設計です。ビットコインは株式や債券よりも価格変動が大きいため、比率を小さく抑えてポートフォリオ全体への影響を限定しつつ、長期的な上昇余地へのエクスポージャーを確保する考え方です。
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バックテストで見えたリターンとリスク
ブラックロックが更新した過去10年間の分析では、米国の60/40ポートフォリオに少量のビットコインを加えると、リスク調整後リターンが改善したとされています。2%配分の結果は次の通りです。
- シャープレシオ:0.96(基準となる60/40ポートフォリオは0.81)
- 最大ドローダウン:約マイナス20.9%(基準ポートフォリオはマイナス20.3%)
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つまり、過去のデータ上では、リターンの効率を高めながら最大下落率は大きく変わりませんでした。ただし、これはあくまで過去データによる検証であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
配分比率とリスク寄与は同じではない
ビットコインの保有比率が1〜2%だからといって、リスクへの寄与も1〜2%に収まるとは限りません。値動きが株式や債券より大きいため、小さな資本配分でもポートフォリオのボラティリティに占める割合が相対的に大きくなる可能性があります。
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一方、伝統的資産との相関が低ければ、分散効果が期待できます。ブラックロックの研究をまとめた資料では、過去10年間のビットコインとS&P500種指数の平均相関は約0.18とされています。
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ブラックロックが重視するのは、この非対称性です。投資元本に占める比率は小さいため、価格下落時のポートフォリオ全体への影響を抑えやすい一方、ビットコインの普及や「法定通貨に代わる価値保存手段」という見方が長期的に広がれば、大きな上昇余地が生まれる可能性があります。ただし、その上昇は不確実です。市場のレバレッジ解消や強制売却が起きた局面では、ビットコインが株式などのリスク資産と同時に下落することもあります。
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長期的な投資論拠はなぜ維持されているのか
ブラックロックはビットコインを、新たに台頭する世界的な通貨代替手段であり、法定通貨の価値希薄化に対する潜在的なヘッジと位置づけています。根拠として挙げられているのは、供給量に上限がある設計、機関投資家のアクセス拡大、規制された投資商品の成長です。
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これは、ビットコインが短期的なインフレ率に安定して連動するという主張ではありません。最近の下落についても、ブラックロックは投資論拠そのものが崩れた証拠というより、ポジション調整や市場構造を見直す契機と捉えています。結論はあくまで慎重で、長期投資家が検討できるとしても、配分は抑制的であるべきだというものです。
IBITとBITAは役割が異なる
ブラックロックのビットコイン関連商品を見ると、エクスポージャーの取り方には大きく2つの方向性があります。
IBIT:価格連動を重視するシンプルな選択肢
**iShares Bitcoin Trust(ティッカー:IBIT)**は、取引所で売買できる商品を通じて、ビットコイン価格へのエクスポージャーを提供することを目指します。証券口座を使いながら、暗号資産を直接保有する際のカストディ(保管)や運用上の手続きを自分で管理する負担を軽減できる点が特徴です。
そのためIBITは、手数料や費用を除き、ビットコインの価格パフォーマンスを反映することを主な目的とする、より直接的なエクスポージャー手段といえます。
BITA:オプション収入を組み合わせる商品
一方、iShares Bitcoin Premium Income ETF(ティッカー:BITA)は、ビットコインへのエクスポージャーに加え、アクティブ運用のカバードコール戦略によってオプションプレミアム収入を得ることを目指します。ブラックロックの商品資料によれば、ポートフォリオ資産のおよそ25〜35%を対象にカバードコールを売却し、収入を毎月分配します。
この仕組みには明確なトレードオフがあります。オプション収入は定期的なインカムの源泉になり得ますが、ビットコインが急騰した場合、売却したコールによって上昇益の一部が制限される可能性があります。BITAは、単純な現物ビットコイン連動商品と同じではなく、上昇余地の一部と引き換えに収入を重視する商品です。
CLARITY ActがビットコインよりDeFiに重要な理由
ブラックロックのデジタル資産部門責任者、ロバート・ミッチニック氏は、米国で審議されているCLARITY Actについて、ビットコインにとってはDeFi(分散型金融)やその他の複雑なデジタル資産ほど重要ではないとの見方を示しています。
背景には、ビットコインにはすでに、規制された上場商品を通じた比較的確立した機関投資家向けのルートがあることがあります。一方、DeFiや複雑なデジタル資産では、トークンの分類、仲介業者の責任、事業運営のルールがなお不透明です。
法案は米下院を通過し、米議会上院では2026年8月8日に手続き上の動きが記録されています。
17 その後、ロイターは法案が上院で停滞し、規制当局が枠組みの一部を形作る状況になっていると報じました。
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ミッチニック氏の主張を要約すれば、追加の法整備はビットコインの機関投資家向け投資論拠に不可欠な前提というより、実現すれば追い風になる要因です。対照的に、DeFiなどでは、より明確なルールが市場の土台そのものになり得ます。
米国の債務と国債買い戻しが「代替資産」需要を刺激
最近のビットコイン上昇は、ブラックロックが示すマクロ経済の見方とも重なります。米国の政府債務や財政赤字への懸念が強まると、一部の投資家は法定通貨や政府債務とは異なる価値保存手段として、ビットコインや金に目を向けます。
米財務省が長期国債の買い戻しを拡大した後、この見方はさらに意識されました。ロイターによると、財務省の発表後、金は3%超、ビットコインは2日間で13%上昇しました。長期金利を抑える政策がドルへの圧力や通貨価値の希薄化懸念につながる可能性を、投資家が意識したためです。
CNBCは、ビットコインが週間で約22%上昇し、価格が約7万7,000ドルに達したと報じています。上昇の背景として、財務省の動き、規制をめぐるセンチメントの改善、投資家心理の回復などが挙げられました。
ただし、上昇を単一の要因で説明することはできません。ETF需要、ショートポジションの買い戻し、流動性、市場の政策期待なども値動きを増幅した可能性があります。財政懸念を背景とした「通貨価値希薄化トレード」が注目されても、ビットコインが次の急落を免れるわけではありません。
60/40運用者にとっての実務的な結論
ブラックロックのメッセージは、次のように整理できます。
- 伝統的な60/40ポートフォリオにおけるビットコインの目安は1〜2%。
- 資金は株式部分から移し、大きな新規リスク枠として追加しない。
- 過去の分析では、2%配分によってリスク調整後リターンが改善し、最大ドローダウンはおおむね同水準だった。
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- 分散効果や上昇余地が期待できても、ビットコインの高いボラティリティと投機性は消えない。
- IBITは価格エクスポージャーを重視する商品、BITAはカバードコールで収入を得る代わりに上昇余地の一部を制限し得る商品である。
要するに、ブラックロックが提示しているのは「ビットコインを買うべきだ」という一律の指示ではなく、小さな配分、長期目線、値動きへの高い耐性という考え方です。同社自身も、資料を特定の投資家、ファンド、証券に対する調査や投資助言として扱うべきではないと注意しています。
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