トヨタが次世代のレクサス電気SUVを、日本ではなく中国で先に生産する計画を進めています。報道によると、上海の新工場で2027年秋から生産を始め、初年度は月約1,000台、2028年からは年数万台規模へ引き上げる見込みです。
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これは単なる中国生産モデルの追加ではありません。電気自動車(EV)、電池、車載ソフトウエアをめぐる競争が最も速く進む中国に、トヨタが次世代EVの開発・生産・市場検証の重心を移そうとする動きです。
「日本優先」を見直すトヨタ
トヨタはこれまで、プリウスや水素燃料電池車「ミライ」のような技術の象徴となるモデルを、日本で先に開発・生産する形を取ってきました。今回のレクサスSUVは、その順序を逆転させます。次世代バッテリーEVの最初の生産地を中国にすることは、同社にとって異例の判断です。
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中国を先行拠点にすることで、トヨタは現地の顧客ニーズを製品に反映しやすくなります。中国のサプライヤーや電池メーカーとの連携を深め、競合車の動向を見ながら仕様や生産工程を調整することも可能になります。
つまり中国は、これまでのように日本で作った車を販売するだけの市場ではなく、レクサスの次世代EVを鍛える開発・製造拠点になろうとしています。
上海工場は「独資」で運営される異例の拠点
トヨタは2025年2月、上海市金山区に、レクサスのバッテリーEVと電池を開発・生産する完全子会社を設立すると発表しました。初期の計画生産能力は年間約10万台です。
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この工場の特徴は、従来の外資系自動車メーカーと中国企業による合弁方式ではなく、トヨタが単独で運営する点にあります。報道では、上海のテスラ工場に続く、中国で2番目の外資系自動車メーカーによる独資工場と位置づけられています。
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レクサスにとって、この施設は単なる組立工場ではありません。現地調達、現地エンジニアリング、電池技術、ソフトウエア対応を含む中国のEVエコシステムに、より直接的に接続するための拠点です。工場は2027年の稼働開始が予定され、年間最大10万台のEV生産能力を持つとされています。
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ギガキャストで中国勢とのコスト・速度差を縮める
新型SUVには、複数のアルミ製車体部品を大型の一体部品として成形する「ギガキャスト」と呼ばれる一体ダイカスト技術が採用される見通しです。
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この方式では部品点数や溶接・組立工程を減らせます。報道によると、一部の車体構造を最大20%軽量化できる可能性があり、航続距離の伸長、車体剛性の向上、生産時間の短縮につながるとされています。
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軽量化はEVの電費や航続距離に影響し、生産工程の簡素化はコストと製造スピードに関わります。いずれも、中国メーカーが強みとしてきた競争軸です。
もっとも、ギガキャストを導入するだけでレクサスが競争力を得られるわけではありません。価格、充電性能、車載ソフトウエア、デザイン、装備の充実度まで含めて、中国の購入者が納得できる商品に仕上げる必要があります。中国を最初の生産地に選び、最新の製造技術も先行投入する判断は、トヨタが競争のルールそのものに適応しようとしていることを示します。
中国は世界最大のEV市場であり、最大の製造拠点
中国では2025年、新車販売に占める電気自動車の割合が約55%に達しました。2026年4月の速報値では、月次の販売比率が60%を超えています。
中国は販売市場として大きいだけではありません。国際エネルギー機関(IEA)によると、同国は2025年に約1,600万台の電気自動車を生産し、世界生産の約70%を占めました。電池セルの生産でも世界の80%超を占めています。
こうした規模は、部品・電池の供給網、製造ノウハウ、EVに慣れた消費者層を同時に利用できる利点をもたらします。一方で、競争が激しい分、プレミアムブランドが高い価格を維持するのは容易ではありません。
中国国内では値下げ競争が続き、需要の弱さや生産能力の過剰も指摘されています。
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18 中国はEVを開発するには最適な場所である一方、遅く、高価で、現地化が不十分な商品には厳しい市場でもあります。
月産1,000台は慎重な立ち上げのサイン
初期の月産1,000台を単純に年換算すると、年間約1万2,000台です。これは、上海工場が計画する年産約10万台の1割強にとどまります。
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この差からは、トヨタがいきなり大規模生産に移行するのではなく、まず製品、製造工程、品質、レクサスのブランド力を検証しようとしている可能性が読み取れます。
プレミアムEVは、トヨタが従来得意としてきた信頼性やハイブリッド技術だけでは売れません。中国メーカーの車と比べて、価格に見合うソフトウエアや装備、充電体験、デザインを提供できるかが問われます。小規模な初期生産は、需要を見極めながら改善するための余地を残すアプローチといえます。
2028年から年数万台へ増産する計画は、販売が軌道に乗れば規模を拡大する意思を示しています。ただし、2028年の具体的な生産目標は公表されておらず、最終的な台数はなお不確定です。
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中国での不振が背中を押す
トヨタが中国でEV戦略を急ぐ背景には、同市場での販売不振があります。トヨタとレクサスの中国販売は、2026年7月に前年同月比24.3%減少しました。
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中国市場では、BYDをはじめとする国内メーカーが、電池EVに大型ディスプレーや高度なコネクテッド機能を組み合わせ、短いサイクルで新型車を投入しています。
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19 一方、トヨタは中国で、ガソリン車やハイブリッド車を含む従来型商品の競争力が圧迫されています。
この状況では、中国を日本の補完的な生産拠点として扱うだけでは対応が遅れます。現地で開発し、現地の部品・電池網を使い、現地の競合車と同じ速度で改良する必要があります。上海のレクサス工場は、そのための組織的な転換です。
トヨタ全体がEV専業になるわけではない
ただし、この計画をトヨタがハイブリッドや他の動力方式を捨てる兆候と見るのは適切ではありません。今回の動きは、EV競争が最も激しい中国に新たな能力を集中させながら、世界全体では複数の動力方式を維持する、より限定的で現実的な戦略と考えられます。
トヨタは2027年の世界生産計画として、トヨタとレクサスを合わせて1,050万台を目指すと報じられています。 また、2026年4〜6月期のハイブリッド車販売は前年同期比6.7%増の123万8,000台でした。
これは一見すると、中国でEVに軸足を移す動きと、世界でハイブリッド車を増産する計画が矛盾しているようにも見えます。しかし実際には、ハイブリッド車の強い需要と収益力を活用して、中国でのEVの立て直しに投資する構図です。トヨタは世界全体で一つの動力方式に賭けるのではなく、市場ごとに異なる戦い方を選んでいます。
上海のレクサスSUVはトヨタの実験場になる
上海で先行生産される次世代レクサスSUVは、トヨタが中国市場向けに新型車を投入するだけのプロジェクトではありません。開発場所、生産技術、部品調達、ソフトウエア、製品改良のスピードを、中国の競争環境に合わせて組み替えられるかを試すプロジェクトです。
成功には、工場の稼働だけでなく、BYDなどの国内メーカーに対抗できる価格設定と装備、十分に現地化されたソフトウエア、素早いモデル更新が必要になります。
トヨタにとって上海工場は、レクサスEVの生産拠点であると同時に、中国で失った存在感を取り戻すための実証の場です。中国を「販売先」から「次世代EVを生み出す場所」へと位置づけ直せるかが、この戦略の成否を左右します。