ジョン・ラトクリフCIA長官の極秘モスクワ訪問は、プーチン大統領との首脳外交というより、ロシアが米国の仲介によるウクライナ和平協議に戻る可能性を探るための、情報機関ルートを使った接触だったとみられます。ラトクリフ氏は8月25日にモスクワを訪れ、訪問は翌26日に公になりました。クレムリンによれば、ロシアの情報機関幹部とは接触したものの、プーチン氏とは会談していません。
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確認されていること
公に確認された最も明確な会談は、ラトクリフ氏とロシア対外情報庁(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官との協議です。ナルイシキン氏は、両機関の管轄に関わる機微な問題を話し合う「実務レベルの会談」だったと説明し、情報機関トップ同士の接触は通常の業務形態だとも述べました。
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クレムリンは、プーチン氏が会談の結果について報告を受けた一方、ラトクリフ氏との会談は予定されていなかったと説明しています。ドナルド・トランプ大統領は訪問を「ある意味で半ば定例的」と表現しましたが、クレムリン報道官のドミトリー・ペスコフ氏は、具体的な協議内容を明らかにしませんでした。
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複数の報道は、ロシア連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官も協議に加わったと伝えています。ただし、ラトクリフ氏とボルトニコフ氏の会談の詳細や、公式の協議結果は、米露いずれの政府からも確認されていません。
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報じられた協議の目的
協議について説明を受けた関係者の話として、訪問の目的の一つは、ロシアの情報機関幹部がプーチン氏に働きかけ、米国の仲介によるロシア・ウクライナ協議の再開を促せるかを見極めることだったと報じられています。なかでもボルトニコフ氏は、クレムリンへのアクセスを持ち、ロシアの安全保障機構で重要な役割を担う人物として、連絡ルートになり得るとみられていたとされます。
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また、ラトクリフ氏がモスクワに本格的な交渉開始を促し、ロシアの軍事・経済情勢について悲観的な評価を示したとの報道もあります。これらは匿名の関係者に基づく情報であり、政府が公表した公式記録ではありません。
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ロシアがNATOを試す行動に出ないよう、バルト諸国への攻撃などを念頭に警告したとの報道も出ました。しかし、この内容はCIA、ホワイトハウス、クレムリンのいずれからも公に裏付けられていません。トランプ氏は訪問の主目的が警告だったとの見方を否定する一方、米政府関係者の話として警告が目的だったとする報道もあり、説明は一致していません。
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トランプ・プーチン・ゼレンスキー3者会談の提案
今回の訪問をめぐる報道で最も踏み込んだ内容は、トランプ氏、プーチン氏、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による3者会談の構想です。Axiosは、ラトクリフ氏がモスクワでの協議中にこの案を示したと、説明を受けた2人の関係者の話として報じました。
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ただし、ここで重要なのは、この構想が情報機関を通じた打診として報じられたにすぎず、合意済みの首脳会談ではないという点です。訪問後も、開催日、開催地、議題、交渉の枠組みは公表されていません。
ウクライナの反応
ゼレンスキー氏は8月28日、米国からモスクワで行われた複数の会談について説明を受けたと明らかにしました。米国からの情報と、ロシアとの対話に必要な姿勢を評価したものの、会談の詳細や3者会談の提案を自ら確認したわけではありません。
ウクライナ側が注視しているのは、モスクワが接触を実質的な譲歩に向けた準備として利用しているのか、それとも時間稼ぎに使っているのかという点です。そのため、ロシアの意図や軍事計画をめぐる情報を読む際には、情報機関による評価や匿名当局者の主張と、公に検証された事実を区別する必要があります。
9月にロシア・ウクライナ協議は再開するのか
実務レベルの協議再開については、慎重ながらも可能性を示す材料があります。ゼレンスキー氏の首席補佐官を務めるキリロ・ブダノフ氏は、米国の代表も参加する形で、ウクライナとロシアのチームが9月に会談できる可能性があると述べました。米国主導の和平プロセスは、ロシアの領土要求をウクライナが拒んだことに加え、米国がイランとの紛争への対応に比重を移したことで停滞していました。
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もっとも、これは協議再開の可能性を示した発言であって、決定済みの外交日程ではありません。会談日、議題、停戦条件、首脳会談の開催合意はいずれも公表されていません。
結論:突破口ではなく、意図を探るための接触
ラトクリフ氏のモスクワ訪問は、米露間の機微な情報機関ルートを再び動かし、ロシアの安全保障関係者が和平協議再開を後押しできるかを探る試みだったとみられます。ナルイシキン氏の発言から、少なくとも同氏との上級情報機関会談が行われたことは確認できます。一方、ボルトニコフ氏との協議、NATOへの警告、3者首脳会談の提案は、情報源を伴う報道ではあるものの、公式には確認されていません。
したがって、今回の訪問を「和平の突破口」と断定するのは早計です。現時点で確認できるのは、米国が非公式な接触を通じてロシアの意思を探り、交渉再開の可能性を試したことです。次の焦点は、ワシントンとモスクワの秘密のメッセージ交換にとどまらず、ウクライナと米国を含む正式な協議につながるかどうかです。