CXMTが発表したこと
中国のメモリーメーカー、長鑫存储(ChangXin Memory Technologies、CXMT)は、次世代の低消費電力メモリー規格であるLPDDR6 DRAMの量産を開始したと発表しました。さらに、Xiaomi(シャオミ)の新型折りたたみスマートフォン「Xiaomi 18 Fold」にLPDDR6を供給する計画も明らかにしました。端末は2026年9月に発売される予定です。
1
計画どおりに製品化されれば、Xiaomi 18 FoldはLPDDR6を搭載する初の商用スマートフォンになる見込みです。中国メーカーが設計するスマートフォン向け次世代メモリーで、CXMTが大きな採用実績を得ることになります。
3nm「Xring O3」と組み合わせた性能
Xiaomiの独自スマートフォン向けSoC(システム・オン・チップ)「Xring O3」は、LPDDR6に対応する初のスマートフォン向けプロセッサーと報じられています。3nmプロセスで製造されるとされ、LPDDR6を10,667Mbps、4×24ビットのインターフェースで駆動します。
8
この構成で、メモリー帯域幅は最大113.8GB/sに達します。これは従来のXring O1プラットフォームと比べて約48%高い数値です。
8 帯域幅の向上は、アプリの同時処理や高解像度画像の扱い、端末上で実行するAI処理などで有利に働く可能性があります。ただし、実際の体感性能はSoC、ソフトウェア、冷却設計、ストレージなどにも左右されます。
LPDDR5からわずか数カ月で次世代品へ
CXMTは、LPDDR6のサンプルを3月から主要顧客に出荷していたと報じられています。Xiaomi向けの検証は8月時点で終盤に入り、その後、量産開始が発表されました。
4
LPDDR6の量産開始は、CXMTが前世代のLPDDR5およびLPDDR5Xの生産拡大を進めてから、1年未満で次の世代へ移行したことを示します。
1 開発、顧客評価、量産立ち上げを短期間で進めた点は、同社にとって重要な前進です。
ただし、「量産開始」という発表だけで、Samsung Electronics、SK hynix、Micronと同等の競争力が証明されたわけではありません。これまでの報道では、CXMTのLPDDR6は最大12.8Gbpsで開発が進められていた一方、SamsungやSK hynixはより高速な14.4Gbps級の製品を示していました。
3
6
今後比較すべきなのは、発表の早さだけではありません。スマートフォンメーカーが求める数量を安定して供給できるか、歩留まり、消費電力、発熱、容量、速度別製品の品ぞろえをどこまで高められるかが重要になります。Micronを含む大手3社との実力差も、継続的な出荷データが公表されるまで慎重に見る必要があります。
Xiaomi 18 Fold以外の用途は
LPDDR6は、まず高性能スマートフォンや折りたたみ端末への搭載が想定されます。しかし、低消費電力と高帯域幅を両立するメモリーであるため、用途はスマートフォンに限られません。
候補となるのは、次のような分野です。
- タブレット
- AI PC
- 車載コンピューティングシステム
- エッジAI機器
- 端末上でAIモデルを動かすオンデバイスAI機器
Xring O3は、Xiaomiの「Pad 9 Pro Max」にも搭載される見込みと報じられています。ただし、同タブレットの最終的なメモリー構成は、ここで確認できる情報からは独立して検証されていません。
7
また、LPDDR6が広く普及するには、メモリーだけでなく対応SoCの拡大が必要です。Qualcommが将来LPDDR6に対応すれば市場は大きく広がる可能性がありますが、現時点で、確定したQualcomm製品の名称や発売日、CXMTからの調達契約を裏付ける情報は確認されていません。これは業界の見方として扱うべきで、確定事項とは言えません。
IPO後の業績とサンプル出荷の意味
Xiaomiへの採用発表は、CXMTが新規株式公開(IPO)後に初めて公表した業績と、LPDDR6の顧客向けサンプル出荷が報じられた時期に重なりました。AI需要を背景にメモリー不足と価格上昇が起きるなか、追加のDRAM供給源を確保できるかは、スマートフォンメーカーにとっても重要な課題です。
4
1
量産開始の発表は、単なるサンプル出荷より強い進展を示します。一方、公開情報だけでは、CXMTのLPDDR6について実際の出荷数量、歩留まり、売上高への寄与は独立して確認できません。
4
1 したがって、今回の採用は大きな設計案件であるものの、直ちに大規模な収益貢献が確定したと判断するのは早いでしょう。
Appleの評価と米国防総省への提訴
AI向け半導体の需要拡大によってメモリーの供給が逼迫するなか、AppleがCXMT製メモリーをiPhoneやMacBookなど複数製品でテストし、初期段階の協議を進めたとReutersが報じています。また、AppleがCXMT製チップの購入に向け、米国側の承認を求めたとの別報道もあります。
3
5
ただし、これらは評価試験や交渉に関する報道であり、AppleとCXMTの正式な供給契約が確認されたわけではありません。
3
5
CXMTは、米国防総省が中国軍を支援しているとされる企業のリストに同社を加えたことを受け、同省を提訴しました。同社は訴状で、中国軍とは関係がなく、民生・商用向けDRAMを設計、製造、販売しているとして、指定は誤りだと主張しています。
3
この指定は、米商務省の輸出管理上の「エンティティー・リスト」と必ずしも同一ではありません。しかし、米政府機関との取引制限や、企業が調達先としてCXMTを選ぶ際の政治・規制リスクにつながります。指定企業に対する米国防総省の調達制限は、時間の経過とともに厳しくなる可能性もあります。
3
中国の自給化を示す一歩、なお残るリスク
Xiaomi 18 Foldへの採用は、中国のスマートフォン産業が海外メモリーへの依存を減らそうとする動きにおける、目に見える成果です。米中の半導体摩擦が続くなか、中国国内で設計されたSoCと、中国企業が量産する次世代モバイルメモリーを組み合わせられる点にも戦略的な意味があります。
1
一方で、CXMTには複数のリスクが残ります。米国の技術・貿易規制が強化される可能性、国防総省の指定を理由とした顧客の慎重姿勢、先端メモリーで高い歩留まりを維持する難しさがその例です。
3
さらに、DRAMは価格変動の大きい景気循環型の市場です。AI需要による供給不足で価格と収益が押し上げられても、各社が一斉に生産能力を増やせば、短期間で過剰供給と価格下落に転じることがあります。
3
8
今回の発表は、CXMTがLPDDR6の開発企業から、実際のスマートフォン製品に供給するメーカーへ進もうとしていることを示します。その成果が一時的な発表にとどまらず、Samsung、SK hynix、Micronと競争できる持続的な量産力につながるかは、今後の出荷数量、歩留まり、採用機種の広がりによって判断されることになります。