BYDの2026年4〜6月期決算は、明確な「全面回復」というより、利益の流れが変わり始めたことを示す結果だった。純利益は前年同期比30%増の82億元となり、5四半期続いた減益傾向に終止符を打った。海外販売の急増と高価格帯モデルの拡大が、中国国内での販売低迷と大幅値引きによる採算悪化を補ったためだ。
一方で、利益の伸びは市場予想の約48%増を下回った。今回の反転が、BYDの本拠地である中国のEV市場そのものの回復によるものではないことも浮き彫りになった。14
輸出が利益回復のエンジンに
BYDの4〜6月期の海外販売は47万1,091台。前年同期比82.5%増、前四半期比でも46.7%増となった。長期化する中国のEV販売減速に対し、海外需要が最も大きな下支え役になった格好だ。3
海外事業の効果は台数だけではない。BYDの車両は一般に、中国国内で販売される同等モデルより海外のほうが高い価格で売られる。国内ではメーカー間の競争と値引き合戦が激しく、利益率が圧迫されているため、価格面で余地のある海外販売の比重が高まるほど、製品構成も改善しやすい。
実際、2026年上期の売上総利益率は18.85%となり、前年同期の18.01%から上昇した。売上総利益そのものは2.81%減の649億9,000万元だったが、より採算の良い市場からの成長が利益率を押し上げた。36
つまり、BYDは中国国内で販売台数を大きく伸ばさなくても、海外での販売増によって利益を改善できた。今回の決算は、数量の回復よりも「どこで、どの価格帯の車を売るか」が重要になっていることを示している。
高価格帯ブランドがもう一つの収益源に
海外展開を後押ししたのが、Denza(騰勢)、Fang Cheng Bao(方程豹)、Yangwang(仰望)などの高価格帯ブランドだ。これら3ブランドの合計販売台数は、2026年上期に前年同期比61%増となった。3
BYDはこれまで、低価格帯の大衆モデルを成長の柱としてきた。だが、価格競争が激しい中国市場では、低価格車だけで利益を守るのは難しい。高価格帯モデルを増やせば、平均販売価格を引き上げ、値引きに頼らずに利益を確保しやすくなる。
その価格差を示す例が、Denza Z9 GTだ。中国での価格は約30万元で、Seagull(海鴎)のような人気のエントリーモデルの4倍を超える。19 高価格帯ブランドの拡大は、BYDのブランド構成と利益率を改善するための重要な手段になっている。
中国の値下げ競争はなお重荷
国内市場は依然として最大の弱点だ。BYDの4〜6月期の総販売台数は110万8,048台で、前年同期比3.24%減だった。第1四半期の30.01%減からは大きく改善したものの、前年を上回るまでには戻っていない。3
上期全体で見ると、厳しさはさらに明確になる。売上高は前年比7.13%減の約3,448億元、上場会社株主に帰属する純利益は20.5%減の約123億2,000万元となった。6
したがって、4〜6月期の最も正確な読み方は「業績の転換点」であって、「従来型の成長への完全復帰」ではない。海外販売と高価格帯車種が中国市場の弱さを埋め始めた一方、国内の値下げ競争は売上高の伸びを抑え、利益の回復も市場予想以下にとどめた。1
7月も輸出主導の勢いが続いた
7月の販売実績は、海外事業の加速が一時的ではない可能性を示した。BYDの新エネルギー車販売は41万9,211台となり、2026年時点でその月までの最高を更新した。2
このうち、乗用車とピックアップトラックの海外出荷は17万9,841台。前年同月比124.3%増で、月間販売全体の約43%を占めた。218
ただし、注目すべきなのは過去最高という見出しよりも、国内と海外の内訳だ。7月の記録的な伸びはほぼ輸出が生み出したもので、中国国内の販売が前年水準まで回復したことを示すものではない。5
7月実績は「輸出主導の反転」という見方を補強したが、中国の需要や価格環境が正常化した証拠とは言えない。
テスラ超えは戦略上の追い風。ただし注意点も
BYDは4〜6月期にバッテリー式電気自動車(BEV)を55万7,090台販売し、テスラの48万126台を上回った。これにより、四半期ベースの世界BEV販売首位をテスラから奪い返した。1011
この首位奪還は、BYDの国際的な信用を高める。販売規模が大きければ、海外ディーラーや販売代理店を引きつけやすくなり、ブランド認知の向上や新市場への展開にもつながる可能性がある。
ただし、無条件の勝利と見るべきではない。BYDの4〜6月期BEV販売台数は、前年同期比で約8%減少していた。1114 テスラを上回ったのはBYDの販売台数が増えたからではなく、当四半期の台数がテスラを上回ったからだ。
この違いは、BYDが世界首位を取り戻したことと、同社のBEV事業全体が成長軌道に戻ったことを混同しないために重要だ。
150万台の輸出目標はどこまで現実的か
BYDは2026年の海外販売について、少なくとも150万台に達するとの見方を示している。年初に示していた130万台の目標から引き上げられた水準だ。17
4〜6月期と7月の実績を見る限り、この目標は以前より現実味を増している。輸出は急速に増え、海外での価格設定は利益率を支え、高価格帯ブランドもBYDの市場を広げている。
しかし、目標達成のハードルも上がった。BYDは新たな市場を開拓し続けるだけでなく、各国での販売網を整備し、国内の競争が激しい状況でも高い利益率を維持できる製品構成を保たなければならない。
現時点でのBYDは、中国のEV市場を幅広く回復させた企業ではない。国内の値下げ競争が続くなか、海外成長と高付加価値モデルによって時間を稼ぎ、収益を立て直そうとしている企業だ。
この国際展開が利益を伴って続けば、2026年4〜6月期は持続的な再成長の始まりになる可能性がある。反対に、輸出の伸びが鈍化したり、高価格帯モデルの比重が低下したりすれば、上期の減益は底打ちではなく、より深刻な警告だったと評価されることになる。