百度の決算後の株価急落は、単なる予想未達への反応ではない。投資家が見たのは、検索広告を中心とする従来型ビジネスの縮小を、AI事業がまだ埋め切れていないという構図だった。
米国上場の百度株(NASDAQ: BIDU)は、2026年第2四半期の決算を受けて約13%下落し、90.39ドルとなった。四半期売上高は前年同期比4%減の313億元(約46億ドル)。非GAAPベースのADS利益は1株当たり7.22元で、市場予想の9.84元を大きく下回った。47
直接のきっかけは売上高と利益の「ダブル未達」
売上高は、LSEGが集計したアナリスト予想の約319.6億元に届かなかった。1 調整後利益も、実績の7.22元に対して予想は9.84元で、約27%の下振れとなった。4
市場が特に重く受け止めたのは、百度の中核事業が安定し始めたかを確認する決算だった点だ。投資家は、広告事業の底入れと新たな成長エンジンの進展を期待していた。しかし実際には、既存事業の縮小が続き、百度の収益基盤がどこまで持続するのかという懸念が強まった。69
広告収入の減少がAIの成長を上回った
最も明確な重しとなったのはオンラインマーケティング事業だ。売上高は前年同期比19%減の131億元となった。5
広告事業は、これまで百度のキャッシュ創出力と利益を支えてきた中核分野だ。そのため、比較的小規模な新規事業が高い成長率を示しても、広告収入の減少による影響をすぐに打ち消すことは難しい。
百度の中核AI事業は125億元で、前年同期比25%増。一般事業の売上高のおよそ半分に相当する。1014 AIが百度の事業構成で重要な位置を占めるようになったことは明らかだ。
ただし、ここで投資家が見ているのはAI事業の成長率だけではない。AI事業が伸びているにもかかわらず、会社全体の売上高は減少している。これが今回の市場反応を説明する核心だ。
AIクラウドは急成長しているが、まだ規模が小さい
百度のAIクラウドインフラ事業の売上高は、前年同期比50%増となった。その内訳では、AIシステムの開発・稼働に使われるGPUクラウドが283%増と急拡大している。
これらの数字は、AI向け計算能力への需要が強いことを示している。しかし、成長率が高いことと、広告事業を置き換えられるだけの売上高・利益を生むことは同じではない。実際、百度の全社売上高は313億元で、前年同期比4%減だった。2
投資家が問うているのは、「AIクラウドが成長しているか」ではない。より厳しい問いは、「AIクラウドが百度全体を支えられるほど大きく、収益性が高く、持続的な事業になれるか」だ。
AI転換は収益化と投資負担の試験段階
百度は、クラウド基盤、AIアプリケーション、AIネイティブサービスを組み合わせたAIプラットフォームの構築を進めている。大規模言語モデル「Ernie(文心)」の開発も続けており、ロビン・リー最高経営責任者(CEO)は決算発表後、ErnieをAIの最先端へ戻すと表明した。1
もっとも、基盤モデルやデータセンター、計算資源への投資は、売上高や利益率の改善に先行して発生しやすい。今回の決算ではAIインフラへの需要は確認できたが、投資が全社の売上成長を再加速させ、短期的な利益見通しを改善していることを示す証拠はまだ十分ではない。
株主にとっては、タイミングの問題が大きい。百度は将来価値のあるAI能力を築いている可能性がある一方、広告事業の弱さと新規事業の開発コストを、AI製品が十分に収益化するまで受け入れなければならない。
自動運転は長期的な成長オプション
百度のAI戦略には、自動運転やロボタクシーも含まれる。決算資料や説明会では、AIインフラや独自チップの開発と並んで、ロボタクシーの展開が成長分野として示された。12
ただし、第2四半期の数字からは、自動運転が広告収入に代わる近い将来の収益源になったとは判断できない。事業の拡大には、継続的な投資、運営面での実行力、商用利用の規模拡大が必要だ。現時点では、直近の業績を救う柱というより、長期的な成長オプションと見るのが適切だろう。
アリババの決算がより強く見えた理由
アリババもAIとクラウドに大規模な投資を進めているため、比較対象として分かりやすい。6月四半期の売上高は前年同期比9%増、AIクラウド・コンピューティングサービスの売上高は45%増の484.4億元だった。17
アリババには、EC(電子商取引)を中心とするより大きな既存の収益基盤がある。既存顧客にAIサービスを提供する経路も多く、AIクラウドの成長が確立された商業プラットフォームに支えられているように見えやすい。
もちろん、アリババもAI投資の負担を免れているわけではない。AIインフラへの支出を増やした結果、利益は大幅に減少した。17 違いは絶対的な優劣ではなく、成長の勢いにある。アリババは全社売上高を伸ばしているのに対し、百度は従来の広告事業が縮小するなかでAI事業を育てている。
下落は百度固有の問題だったのか
中国テクノロジー株全体の状況を確認するには、KraneShares CSI China Internet ETF(KWEB)が参考になる。KWEBも同時に下落していれば、中国株への投資家心理、景気、規制、リスク選好など、セクター全体に広がる要因が影響した可能性がある。
それでも、百度株が2026年に約35%下落していたことに加え、決算直後にも大きく売られたことを踏まえると、今回の下落には企業固有の要因が相当程度含まれていたと考えられる。7 投資家は中国テック株全体を一律に売ったのではなく、百度の従来事業の悪化と、AIクラウドが十分に大きく収益性のある代替事業になるかどうかを厳しく評価した。
次の決算で確認すべき3つのポイント
百度の次回決算では、次の3点が焦点になる。
- オンラインマーケティング事業は安定するか。 19%減が続けば、AIへの転換を支える資金力への懸念はさらに強まる。5
- AIクラウドは売上高と利益に占める割合を高められるか。 高い成長率を、会社全体の業績改善へ結び付ける必要がある。
- 新規事業は持続的に収益化できるか。 AIアプリ、AIネイティブサービス、自動運転は、技術的な進展や将来性だけでなく、実際の売上高と利益を示さなければならない。
結論として、百度のAI転換は確実に進んでいる。しかし、その財務的な成果はまだ完成していない。第2四半期は、百度が事業の成長部分をAIへ移しつつあることを示した一方で、かつて新規投資を支えた高収益の広告事業では後退が続いていることも浮き彫りにした。
新しい事業がこの差を埋めるまで、投資家は百度のAI成長を有望と評価しながらも、それだけでより高い株価評価を正当化するには不十分だと判断する可能性が高い。