系外惑星の大気を調べるとき、研究者が見ている光は惑星だけから来るわけではありません。惑星が orbit する恒星そのものが変動するため、観測された特徴が惑星の大気によるものなのか、恒星の活動によるものなのかを見分ける必要があります。
NASAの小型衛星「Pandora(パンドラ)」は、この問題に正面から取り組むミッションです。2026年1月11日に低地球軌道へ打ち上げられ、同年8月25日に主要な科学観測を開始しました。
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Pandoraは何を調べるのか
Pandoraの1年間の主要ミッションでは、少なくとも20個の既知の系外惑星を対象にします。各惑星をおよそ10回ずつ、1回約24時間にわたって観測し、惑星が恒星の前を通過する「トランジット」の前後を詳しく記録します。
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トランジットとは、地球から見て惑星が主星の前を横切る現象です。このとき、恒星の光の一部が惑星の大気を通過します。大気中の分子や原子は波長ごとに異なる光を吸収するため、光の変化を調べると、どのような成分が存在するかを推定できます。こうして得られるのが「透過スペクトル」です。
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Pandoraが特に探すのは、水、雲、ヘイズ(もや)の兆候です。
1 ただし、水が見つかっただけで、その惑星が居住可能、あるいは生命が存在すると証明されるわけではありません。惑星の気温、大気全体の構成、環境などを合わせて判断する必要があります。
なぜ恒星の光が問題になるのか
恒星は、実験室で使うような完全に安定したランプではありません。表面には、周囲より低温で暗い「恒星黒点」や、より明るい領域である「白斑(faculae)」があります。これらは恒星の明るさやスペクトルを変え、惑星大気の特徴に似た信号を作ったり、本来の信号を隠したりする可能性があります。
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Pandoraは、惑星だけでなく、その主星も同時に観測します。可視光と近赤外線のデータを長期間にわたって集めることで、恒星がどの程度活動していたかを推定し、その影響を考慮したうえで惑星の透過スペクトルを読み解けるようにする狙いです。
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つまりPandoraは、恒星の変動を単なる「ノイズ」として無視するのではなく、惑星の大気を測るための重要な情報として扱います。複数回の観測で、恒星の見え方が変わっても同じ大気特徴が確認できるかを調べられる点が、ミッションの大きな強みです。
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1年間でどのように観測するのか
Pandoraは、各ターゲットについておよそ10回の観測を予定しています。1回の観測時間は約24時間で、惑星のトランジットを中心に設定されます。
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一度きりの測定では、恒星の一時的な活動と惑星の大気信号を区別するのは困難です。繰り返し観測すれば、恒星の可視光・赤外線の変化と、惑星側で見られる特徴を比較できます。こうした長期的なデータの積み重ねにより、惑星由来の信号なのか、恒星活動による見かけの変化なのかを切り分けやすくなります。
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搭載望遠鏡は、口径約45センチメートル(17インチ)のアルミニウム製です。ローレンス・リバモア国立研究所とCorning Incorporatedが開発しました。
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また、PandoraにはNASAゴダード宇宙飛行センターが提供する近赤外線センサーも搭載されています。この検出器は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(Webb)の装置用に予備として開発されたものです。 可視光に加えて赤外線の情報も得ることで、恒星と惑星の組み合わせをより長い時間軸で分析できます。
水の検出が重要な理由
水は、惑星の大気組成や気候を理解するうえで重要な手がかりです。また、生命が存在できる条件、つまり居住可能性を検討する際にも重要な要素とされています。Pandoraのデータは、Webbによる系外惑星観測を解釈するための基盤となり、将来、居住可能な世界を探すミッションにも役立つとNASAは説明しています。
ここで重要なのは、Pandoraが「生命そのもの」を直接探すミッションではないという点です。水や雲、ヘイズをより信頼性高く測定し、惑星の環境を判断するための土台を整えることが、Pandoraの役割です。
NASAの小型ミッションとしての位置づけ
Pandoraは、NASAの「Astrophysics Pioneers」プログラムを通じて打ち上げられた最初の衛星です。同プログラムは、大型の旗艦級宇宙望遠鏡よりも小規模な宇宙機で、明確に絞り込んだ天文学・宇宙物理学の課題に挑むことを目指しています。
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Pandoraの研究計画は、系外惑星と主星を可視光・近赤外線で同時に、しかも長期間にわたって観測するデータセットを初めて提供するものとされています。
10 ただし、提供された資料だけから、「系外惑星の大気を通過する光を詳細な多色観測で調べる史上初の宇宙望遠鏡」といった、より広範で断定的な表現まで裏付けることはできません。
ミッションを率いる機関
科学ミッションはNASAゴダード宇宙飛行センターが主導し、Elisa Quintana氏が主任研究員を務めています。ローレンス・リバモア国立研究所は共同でミッションを率い、プロジェクト管理とエンジニアリングを担っています。
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ミッション運用はアリゾナ大学が主導し、科学プログラムにも参加しています。 望遠鏡「CODA」はローレンス・リバモア国立研究所がCorning Incorporatedと共同開発し、近赤外線検出器はNASAゴダードが提供しました。
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Webb時代の系外惑星研究に何をもたらすのか
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、系外惑星の大気を高感度で測定できます。しかし、その結果を正しく解釈するには、惑星の信号と主星の変動を分離しなければなりません。Pandoraが可視光と近赤外線で主星を繰り返し監視することで、恒星による「汚染」がどの程度データに含まれているかを見積もり、Webbのスペクトルを読むための精度向上につなげます。
その意味でPandoraは、系外惑星を数多く発見する調査衛星というより、観測結果の信頼性を高める「較正」の役割を担うミッションです。ある大気特徴が本当に惑星由来なのか、恒星活動の影響なのか、それともまだ不確実なのかを判断する材料を提供します。
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Pandoraの成果は、Webbの既存データの再解釈だけでなく、将来の宇宙望遠鏡でどの惑星を観測し、どのような測定を行うべきかを考える際にも役立つ可能性があります。居住可能な世界の大気を探る次世代観測に向けて、まず「見えている信号をどこまで信頼できるか」を確かめるミッションです。